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『問わず語り』に関する記事一覧

受験生がんばれ ‼ ~受験に後悔しないための戦略と心得

 毎年、1月から3月は学校の定期試験、入学試験、様々な資格にかかわる試験、昇格試験など人生を左右する大きなイベントが集中し、受験の季節となります。この時期は、冬から春にかけて気象の変動が著しく、インフルエンザなどの風邪や自己免疫性疾患や持病などの症状が出現しやすい季節でもあります。これらを乗り越えて、漸く春がやって来ます。
 ここでは、受験に失敗しないための戦略とその心得の一例を紹介します。

1.試験前
1)計画を立てる。PDCAサイクル(plan-do-check-act cycle)に従う。
  試験の日程が決まったら、それに合わせて自分に合った試験準備を計画、これを実行し、勉強の方法・準備が適切であるかを評価する。その際、ムリ、ムダ、ムラの「3ム」がないよう、何度も繰り返し、最適な方法を考える。自分に合った勉強法が確立したら、それを実行する。
2)過去問題を徹底的に調べる。
  試験に出題される内容の重要ポイント(キーワード)はいつの時代も同じです。したがって、過去に出題された問題を繰り返し実施し、これを理解すれば試験準備は十分です。
3)体調を万全にする。
  季節的にも風邪や持病などが発生しやすい時期なので、こころとからだの健康管理を怠らないよう、強い意志と自信をもって日常の生活と体のリズムを守り、自己管理を行って下さい。

2.試験前日
  試験前日には試験勉強を行わないで、翌日に備え受験票や筆記用具などの準備を完璧に行い、カバンにしまって、早めに寝る。その際、絶対合格するという自信を持つことが大切です。

3.試験期間中
1)試験会場に30分前には必ず到着する。
  前もって試験会場を下見し、余裕をもって試験会場に到着できるよう交通機関などを調べておく。また、交通機関のアクシデントに備え、迂回路も調べておき、少なくとも30分前には会場に到着し、トイレなども済ませておきたい。
2)試験を受けるためのPDCAサイクルを考える。
  試験用紙が配布されたら問題全体を速読し、簡単な問題から解答し、難解な問題は後回しにする。問題順に一つひとつ解答していくと、難解な問題に遭遇した時に、それに関わる時間があっという間に過ぎてしまい、時間が足りなくなり、これが致命傷となることがあります。まずは、問題全体を早めに把握しておくことが大切です。
3)試験が終了した後の心構え。
  試験が終了してからも、ケアレスミスがないかを確認することが大切です。必ず、何度も問題と解答を見直す。また、迷った時は、最初に解答した答えが正解のことが多い。

4.試験終了後
  試験がすべて終了したら、自宅などで問題を必ず見直し、間違っていないかを確認する。間違いが確認されたら直ちに修正する。この確認作業はその後の人生においても、同じ間違いは絶対に繰り返さないという「考え抜く力」「課題発見力」などが養われるますので、必ず行って下さい。
(近藤雅雄:平成28年12月1日掲載)
 

持久力をサポートする「アラプラス スポーツ ハイパフォーマンス」とは?

 健康寿命の延伸とQOL(生活の質)の向上には適切な食生活と運動習慣、休養が大切ですが、5-アミノレブリン酸(ALA)はこれら健康生活をサポートすることが分かってきました。
 そこで、最近、SBIアラプロモ株式会社から販売された「アラプラス スポーツ ハイパフォーマンス」の健康効果について最新の科学的根拠に基づき解説します。

1.ALAとは
 ミトコンドリアで生産されるALAは蛋白質を構成するアミノ酸ではなく、生命維持に不可欠な赤い色素ヘムを生産する生命の根幹物質です(図1)。最近、このアミノ酸が貧血予防、運動・代謝機能の亢進、抗酸化、免疫増強、美容などのヘルスケアー領域、脳腫瘍の診断・治療をはじめ多くのがん、疾病発症の予防および治療などのメディカルケアー領域で研究され、急速に注目され始めました(文献11.ポルフィリンーALA学会編:機能性アミノ酸「5‐アミノレブリン酸の科学と医学応用」-がんの診断・治療を中心にー、現代化学・増刊45、東京化学同人、2015.10)。
ALA
2. ALAから生産されるヘム蛋白の多様な機能
 図1に示した様に、各組織にて生産されたALAは最終的にミトコンドリアにて生体色素ヘムとなり、これがアポ蛋白と結合し、①骨髄では酸素を運搬するヘモグロビン、②骨格筋では有酸素運動に関与する赤筋中の酸素貯蔵物質であるミオグロビン、③全身の組織細胞では生命エネルギー物質(ATP)を生産するチトクローム類、④神経では化学伝達物質であり、血管拡張物質である一酸化窒素(NO)を合成する酵素、⑤肝臓では解毒・薬物代謝を司るチトクロームP-450類、⑥内分泌器官ではホルモンの情報連絡に関与する酵素グアニルシクラーゼ、⑦肝臓や腎臓、赤血球に多く含まれ、活性酸素を分解する酵素カタラーゼ、⑧甲状腺では代謝に関わるサイロキシンを生産する酵素サイロペルオキシダーゼ等々、ALAは生命維持に不可欠な各種ヘム蛋白質の生産を行っています(図1)。

3.中高年齢ではALAの生産が低下すると共にヘムの分解が促進し、生体機能の低下が高まる

 ALAは加齢に伴い生産量が減少すると共に様々なストレスによって発生した活性酸素を消去する強力な抗酸化物質ビリルビンを生産するためにヘムを酸化的に分解するので、ヘム量は加齢と共に急激に減少します。その結果、図1に示したヘム蛋白が減少し、特に中高年齢者に様々な体調不良や疾病など(例えば貧血、筋疲労、倦怠感、易感染性(免疫力低下)、基礎代謝の低下、肥満など)が急速に増えてくる原因となります。

4.ALAの生体機能向上、免疫力強化によるアンチエイジング効果
 高齢動物にALAを投与すると、造血、免疫、抗酸化および運動などの諸機能が亢進することを相次いで見出しました(文献2~52.近藤雅雄ほか:運動機能向上剤、整理番号:P04561609、特願2004-255577.2004.9、動物にALAを投与すると運動機能を高めることを発見しました。
3.近藤雅雄ほか:健康機能向上剤、特開2006-96745, 2006.4.13、動物にALAを投与すると造血機能、免疫機能、運動機能、神経機能が高まることを発見しました。
4.近藤雅雄ほか:健康機能向上剤、PCT/JP2005/15560(国際特許)、2005.8、動物にALAを投与すると健康を保持、増進することを発見しました。
5.近藤雅雄ほか:免疫機能向上剤、特開2006-96746, 2006.4.13。動物にALAを投与すると体液性免疫及び細胞性免疫の機能が高まることを発見しました。
)。とくに、免疫中枢である胸腺重量は加齢に従って萎縮することがわかっていますが、ALA投与によって胸腺重量の縮退抑制、増量を見出しました(文献55.近藤雅雄ほか:免疫機能向上剤、特開2006-96746, 2006.4.13。動物にALAを投与すると体液性免疫及び細胞性免疫の機能が高まることを発見しました。)。この増量については細胞生物学的に詳細な検討を要しますが、免疫細胞の増殖促進・抗酸化力増強を確認しました(近藤:未発表)。現在、胸腺の萎縮が免疫の機能低下および老化促進の原因であることが推測されていることから、ALA投与によって免疫力強化、QOL向上および健康寿命延伸が図られることが期待されます。

5.ALAの疲労回復と運動機能向上
 高齢動物にALAを投与すると、運動機能の亢進および筋蛋白質の増量を見出しました(文献22.近藤雅雄ほか:運動機能向上剤、整理番号:P04561609、特願2004-255577.2004.9、動物にALAを投与すると運動機能が高まることを発見しました。)。さらに、人でも運動により鉄、亜鉛などのミネラル類が有意に減少することを見出し(文献6、76.Kondo M et al:Decrease in blood molybdenum (Mo) concentration as a result of competitive sports activities, Biomedical Research on Trace Elements, 14(4):316-318, 2003、激運動により血液中のモリブデンや亜鉛などのミネラルが減少することを見出しました。
7.近藤雅雄ほか:思春期女子のスポーツ活動における血色素合成異常とその発症機序に関する研究、体力研究、No.72: 93-100、1989. 激運動によるヘム生合成の異常を見出しました。
)、これらミネラルを補給すれば疲労回復速度の促進や運動機能、持久力などが向上します。
 これらの結果から、図2に示した様に、ALAプラス鉄などのミネラルの補給は様々なストレスからの回復と同時に造血促進、代謝促進、運動機能促進など生体機能を高めると共に恒常性を維持するため様々な生体機能障害の改善に有用です。
ALA2
 以上、「アラプラス スポーツ ハイパフォーマンス」にはALAの他に亜鉛含有酵母、クエン酸第一鉄ナトリウム、ナイアシンアミドなどがプラスされ、①エネルギー生産量の向上による代謝促進、②体温上昇による免疫力向上、③運動負荷による疲労回復亢進、持久力の向上などの効果があり、健康管理に適したサプリメントとして推薦します。
 健康食品には①表示、②過剰摂取、③摂取方法等の各問題があり、十分に情報を得てから摂取する必要がありますが、ALAは水溶性であり、必要量利用され、余分なALAは尿中に排泄されるので過剰摂取の問題や摂取方法の問題はありません。
 なお、指定難病ポルフィリン症の患者さんはポルフィリン代謝異常を誘発することがありますので服用しないでください。また、妊婦や授乳中の女性、乳幼児、子どもでの有効性・安全性に対する科学的根拠はありません。病気の方の場合は必ず医師にご相談ください。

6.文 献
1.ポルフィリンーALA学会編:機能性アミノ酸「5‐アミノレブリン酸の科学と医学応用」-がんの診断・治療を中心にー、現代化学・増刊45、東京化学同人、2015.10
2.近藤雅雄ほか:運動機能向上剤、整理番号:P04561609、特願2004-255577.2004.9、動物にALAを投与すると運動機能が高まることを発見しました。
3.近藤雅雄ほか:健康機能向上剤、特開2006-96745, 2006.4.13、動物にALAを投与すると造血機能、免疫機能、運動機能、神経機能が高まることを発見しました。
4.近藤雅雄ほか:健康機能向上剤、PCT/JP2005/15560(国際特許)、2005.8、動物にALAを投与すると健康を保持、増進することを発見しました。
5.近藤雅雄ほか:免疫機能向上剤、特開2006-96746, 2006.4.13。動物にALAを投与すると体液性免疫及び細胞性免疫の機能が高まることを発見しました。
6.Kondo M et al:Decrease in blood molybdenum (Mo) concentration as a result of competitive sports activities, Biomedical Research on Trace Elements, 14(4):316-318, 2003、激運動により血液中のモリブデンや亜鉛などのミネラルが減少することを見出しました。
7.近藤雅雄ほか:思春期女子のスポーツ活動における血色素合成異常とその発症機序に関する研究、体力研究、No.72: 93-100、1989. 激運動によりヘム生合成の異常を見出しました。
(近藤雅雄著、平成28年5月18日掲載)

以下のPDFも参照ください。
ALApdf2

こころとからだの健康(14) 遊びから学ぶ幼児教育、子育て習慣および期待される人材

 この数十年の間に子育てに関する社会環境は大きく変化しました。核家族化や男女共同参画社会の進展など、例を挙げればきりがありません。そうした現代社会において最も懸念されるのは、子育てをする親が孤立してしまうことです。そこから多様な悲劇が起こるとも限りません。昔は大家族、そして近所に子どもの遊び場が沢山あり、親子ともども自然に地域コミュニティーが形成されていました。しかし、都市化と共にそうしたコミュニティーは徐々にその姿を消し、結果として子育てについて気楽に相談できる環境も減少しています。子育てには周囲のサポートが不可欠です。家族の協力は勿論のこと、地域社会の協力も必要です。どれだけ時代や社会環境が移り変わっても、「子どもは一人で育てるものではない」ことに変わりはありません。
 そこで、幼児教育の基礎と子育て習慣について考えました。現在、子育て中の保護者の参考になれば嬉しいです。(近藤雅雄:平成28年5月8日掲載)

幼児教育の基本~人間形成の基盤を成すこころの教育とは
 この地球上にて生を受けた人間は地球の恵みに感謝し、自然の恵みを大切にする。そして、自分自身を愛し、家族、友だちを愛し、社会、地球を大切にできる。そんな人間らしさと幸福感に満ちた環境にて子どもを育て、次代に繋いで行く。それが親の責任だと思います。子育て並びにヒトの本質はいつの時代も同じであり、それは「遊ぶこと」です。遊びの環境を設定し、育てるのが保護者の役割です。
 多様な遊びは様々な体験・体感を通して、生きるこころと力、いのちを大切にするこころ、他者を思いやるこころを学びます。これが人間形成の基盤を成すこころの教育であり、人としての基礎となります。
 そのためにも、「教育」を共に育むとした「共育」のこころを持つことです。父親、母親の育った環境とこれからその子どもが育つ環境では20年以上の隔たりがあり、それと共に成育環境は大きく変化しています。したがって、子どもの目線で子どもの育つ時代の環境にて子どもを育むことが大切です。
人の本質
遊びから学ぶ子育て
 人間には「言語的知性」「音楽的知性」「絵画的知性」「論理数学的知性」「身体運動的知性」「感情的知性」「社会的知性」という8つの知性があると言われています。これらの知性は就学前の4~5歳前後をピークとして形成されるもので、「遊び」によって育まれます。人間の知性、こころは脳の活動に直結していますので、就学前こそ、幼児教育に必要な多くの遊びや体験・体感によって、豊かな知性を育むことが重要で、それが成人になって一つまたは複数の知性が大きく育つ要因になります。
 多くの親が子どもの「教育」について悩んでいるようですが、子育てには迷いや不安はつきものです。難しく考える必要はありません。なぜなら、子どもの成長に最も必要なのは、この「遊び」だからです。とくに幼少期の教育は「遊びの場を用意してあげること」くらいに考えて丁度良いのではないかと思います。お父さん、お母さんはまず、子どもと一緒に遊んであげることから始めましょう。楽しそうな親の姿を見ると、子どもはもっと楽しくなります。そうすると図に示しましたが、好奇心・集中力が増し、さらに多くの事を遊びから吸収するようになります。それが創造力や自発性、課題発見力、さらには生きる力へとつながっていくのです。
 もちろん、親も子どもが遊ぶ中から学ぶことは沢山あります。よく言われることですが、やはり教育は「共育」、育児は「育自」なのです。ぜひ「子どもと」遊ぶ中で「子どもを」学んでください。学びに対する親の姿勢は、必ず子どもに受け継がれていきます。“共育の質の向上は人生の質の向上を担保する”ように子どもとその家族はそれぞれの道、人生に一つの目標・志を持ち、前向きに生きるこころを身に付けます。そして、“社会が求める人間力”が育まれます。
人間としての基礎力
社会が求める人材
 “社会が求める人間力”とは図に示しましたように、3つのパワーから成ります。これは社会・国家が求める人材であり、この基礎が幼児期の「遊び」から養われます。人間社会で生きる上で重要なこの3つのパワーとは、①前に踏み出す力(action power);すなわち、主体性を持って前向きに働きかける力、実行力、②考え抜く力(thinking power);すなわち、課題発見力、計画力、創造力、③チームで働く力(teamwork power);すなわち、発信力、傾聴力、柔軟性、状況把握力、起立性、ストレスコントロール力が身に付きます。これらの基礎力を身に付ける上で基本となるのが、以下に挙げた家族の子育て習慣です。

父親・母親の良い子育て習慣
1.家族の間で、朝起きたら「おはようございます」と言い、毎日挨拶を欠かさないようにしましょう。また、一日に最低一度は食事など団欒の時間を作りましょう。
2.家族は毎日きれいな言葉を使うように努力しましょう。子どもに「お前」「てめえ」「がき」などの汚い言葉で呼ばず、一人の人間として人格を尊んで名前で呼んでください。
3.家族はすべて一人ひとり、お互いに人として尊敬し合い、お互いが感謝のこころを持って接するように努力しましょう。
4.家族は一つの組織です。一人で頑張らないで家族で協力・分担して、日常的に楽しく笑顔を絶やさないよう前向きに生きる努力をしましょう。また、子育てを応援してくれる良い友達を複数持ち、コミュニティーを大切にしましょう。
5.子どものこころの痛みを自分のこころの痛みとして感じる「思い遣り」のこころを持ちましょう。また、子どもとのスキンシップによるコミュニケーションを大切にしましょう。
6.お互いを理解し合い、人の言うことをよく聞きましょう。また、何でも相談し合える環境を創るよう努力しましょう。これらが人間関係を形成していく上で大切になります。
7.子どもを泣かすより笑顔を引き出すように努力しましょう。子どもが病気でもないのに泣くのは、悲しいか、怖いかのどちらかです。子どもの気持ちを理解することが大切です。
8.子どもが良いことをしたときや、言うことを聞いたとき、頑張ったときなどは積極的にほめてあげましょう。叱りつけるよりもほめることを優先し、子どものやる気・意欲・能力を引き出すように努力しましょう。「教育」とは「引き出す」という意味でもあります。
9.自然に接する機会をたくさん作り、体験・体感を豊かに育てましょう。ノーベル賞学者など世の中の偉人と呼ばれる人のほとんどが、幼児期には遊びの多い自然の中で育っています。
10.「sense of wonder」という言葉があります。これは「不思議さや神秘さに目を見張る感性」を指し、子どもの教育に大変重要です。子どもは成長過程で様々な体験・体感を通して好奇心、自発性、創造力をからだとこころで育みます。

参考図書
近藤雅雄:子育てハンドブック、Tokyu Child Partners、東急グループ、2015
澤口俊之:幼児教育と脳、文春新書、2004
浜尾実:子どもを伸ばす一言、ダメにする一言、PHP文庫、2001
(近藤雅雄:平成28年5月8日掲載)

ポルフィリンーALA学会より「功績賞」受賞

功績賞4-1
 4月22日、31年間通った港区白金台の旧国立公衆衛生院を久し振りに拝観しました。その後、本院の隣に位置する東京大学・医科学研究所にて開催された第6回ポルフィリンーALA学会年会において、会長の大倉一郎先生から本学会「功績賞」を拝受致しました。「功績賞」の盾には『ポルフィリンーALA研究領域において 長年にわたり多大な功績をあげられました よってここに功績賞を贈呈いたします』と刻まれていました。2003年の「学会賞」に続き2度目の受賞となり、私にとっては大変名誉なことで、学会の役員・会員、1000人近くの共同研究者・研究協力者、そして恩師浦田郡平先生に深謝いたします。また帰途、敷地内で衛生院時代の同僚である磯野威さんと偶然に出会ったことは驚きでした。
功績賞5-1
本学会設立の経緯
 私は旧国立公衆衛生院にて、31年間、厚生行政に関わる研究・教育活動を行いました。その間、今から30年前の1986年にALAの代謝を行うALA-D酵素が亜鉛酵素であることが分かり、臨床医学、公衆衛生学・衛生学・産業衛生学、生化学、植物学、栄養学など多分野から注目され、そこで、職場の仲間と共にALAD研究会を創設しました。4年後の1990年には、研究領域を拡大・全国組織として、ポルフィリン研究会と名称変更・規約を作成し、国立公衆衛生院にて第1回の総会を開催すると同時に査読付論文掲載雑誌「PORPHYRINS」を定期的刊行物(季刊)として出版を始めました。当時は年に2回研究発表会、4年に1回国際学会を行っておりました。
 その後、時代は変わり、2011年にALA研究会を主宰する先生方とポルフィリン研究会を主宰する先生方のご努力によって、両研究会が統合され、「ポルフィリン‐ALA学会」が誕生し発展・充実致しました。
公衆衛生院1
(写真の建物は旧国立公衆衛生院:2002年(平成14)4月に、旧厚生省の付属試験研究機関再編成によって64年の歴史を閉じました。建物は現在もそのままの状態で残っています。この建物は米国ロックフェラー財団の寄付によって建てられ、竣工当時は国会議事堂の次に高い建物で大変眺望が良かったそうです。日本建築学会が編集した日本建築物総覧(1980年)には特筆に値する建築物14000件および特に重要な2000件の中に本院建物は含まれ、同会長名による「近代日本の進歩と地域景観に寄与した」として、永く保存されたき旨の依願状を受けています。本院で31年間、教育・研究活動に身を投じて行ってきた一人として、重要文化財に近いものとして永く保存されることを願っています。本院は日本の公衆衛生学発祥の地です。)(近藤雅雄:平成28年4月25日掲載)

日本人の食生活解析

はじめに
 日本の食生活は経済成長と共にこれまでの米を中心とした日本型食生活から欧米など世界中の料理、ファーストフードや健康食品というものを自由に取捨選択し、食べたいときに好きなものが食べられる豊かな自由型へと変った。このような豊食(飽食、崩食)の時代になると共に、アレルギー、がん、生活習慣病、認知症などの増加といった新たな課題が出現してきた。
本稿では、最新の主な食生活事情について分析・考察を行った。

1.食生活の変遷と食のあり方
 現代人は、食あるいは栄養に関する科学的な知識は殆ど持ち合わせることなく、好きなものを好きなときに好きなだけ、あるいは今あるものを寄せて食べる傾向が増えている。食生活はと言えば少子・高齢・核家族化の進展と共に「こ食」(孤食、小食、固食、個食、粉食、濃食、戸食など)が習慣化している。このような生活習慣は成人並びに次代を担う子どもたちの学習・記憶・体力の低下、免疫能の低下、対人技術の発達障害などと言った心身の問題や生活習慣病、摂食障害などを誘発し、さらに、これが体質として次代へも引継がれかねない。これらの現状を鑑み、最も重要な課題が乳幼児期から生涯にわたっての「食」のあり方である。

2.多くの病気が食源病
 日本人の免疫能はこの数十年間で低下してきている。免疫の中心である胸腺は酸化ストレスや加齢によって萎縮し、免疫能が低下する。これが、近年の生活習慣病、がんや自己免疫性疾患、感染症などといった様々な病気の発症要因の一つとして広く指摘されている。その主たる原因が前述した戦後の食生活の劇的な変化が挙げられる。すなわち、私たちの住む地球には時間的リズムがあるように、生体にも同じ時間のリズムがある。一日のリズム(概日リズム)には生命を維持するのに重要な働きとなる睡眠、自律神経、免疫、内分泌、摂食(食生活)などの各リズムがある。これらリズムの中心となっているのが「食」である。近年、この「食」を中心とした生活習慣の変化が生体のリズムを変え、肥満、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病、がんなどの生活習慣病が起こることが分かってきた。その原因の主なものとして、食塩と脂肪の摂取過剰と食物繊維、ミネラル類の摂取不足が挙げられる。したがって、これらの疾病は食が原因で発症する「食源病」といっても過言ではない。

3.日本人の食生活の実態と次代を担う子どもの食育
 厚生労働省が毎年行っている国民健康・栄養調査の結果を基に食生活の実態を解析した結果、免疫能に重要な影響を及ぼすタンパク質の摂取量は男・女共に生涯にわたって大きな変化が認められなかったが、タンパク質をどの様な食品群から摂取しているかを年齢別にみると、40歳代以降から肉類と魚類の摂取量が逆転することを見出した。すなわち、若年者は肉類、中・高齢者は魚類の摂取が高いことでタンパク質摂取が生涯にわたって保持できていることがわかった。一方、米国人の食生活パターンは生涯のタンパク質源を肉類に依存し、これが加齢と共に摂取量が減少することで1日に必要なタンパク質摂取量が減少する。この減少は免疫力の低下を惹き起こす。これが日米の寿命の差となっているのかもしれない。
 一方で、我われは日本人の中・高齢者の血中微量元素濃度を測定した結果、免疫能および抗酸化能に影響を及ぼす銅、亜鉛、セレン、マンガンなどが加齢に伴って減少する傾向を見出した。さらに、これら元素の変動が不定愁訴や循環障害などの各種自覚症状と関係していることを見出した。これらの結果をもとに、中・高齢者が抗酸化・免疫能を強化する微量元素やビタミン、フラボノイドなどを多く含む豆類、野菜、果物、魚介類などを積極的に摂取することによって、これらの自覚症状がなくなり、ますます健康寿命の延伸を図ることの可能性を見出している。
 これらの結果に対して、現代の子どもが将来高齢者となった場合に、現在の高齢者と同じような食事摂取パターンとなるかについては疑問である。すなわち、味覚や嗜好は乳幼児期に形成されるためである。したがって、安心・安全な食物を選別できる能力、食物の大切さを知る能力などを小児期に育てることは重要である。

4.免疫能を高める栄養素・食品の解析
 各種酸化ストレスからの防御を目的として、我われは食品中に含まれるミネラルやビタミン、フラボノイドなどの抗酸化成分を胸腺(免疫)細胞に投与し、活性酸素の消去能について検討したところ、各抗酸化物質によって細胞内外での抗酸化能力が異なっていることを見出した。このことは、抗酸化成分の効果的な摂取法として、細胞内外にて抗酸化作用を発揮する成分を摂取することの方が、細胞を酸化ストレスから防御するにはより効果的であることを示す。事実、細胞内外にて抗酸化能を発揮するフラボノイド(ルテオリンなど)を多く含む野菜(ピーマンなど)を高齢者に食べていただくという介入試験を国立健康・栄養研究所の研究倫理規定にしたがって行った結果、摂取前(介入前)と比較して摂取後(介入後)は抗酸化能および免疫能は統計学的に有意に上昇することを見出している。

5.日本型食生活の変遷と栄養行政
 日本人の食生活は主食、主菜、副菜、汁物で構成されているが、主食としては米を中心とした食生活が連綿と引き継がれてきた。そこから誕生したのがみそ汁、漬物、塩蔵品といった米と合う塩分と砂糖の多い食生活である。しかし、今日のITおよび乗り物社会といった運動量の少ない社会構造が確立してから肥満を始め、がん、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病など欧米に多い病気が我が国でも増加するようになってきた。これに対して、厚生労働省は「健康日本21」、「健康増進法」など様々な政策を打ち上げ、健康に対する対策を行ってきたが、現在までに成功したと言えるのは禁煙と減塩政策である。これら健康増進行政の基本は「栄養」「運動」「休養」の三位一体の遂行であることはいつの時代も変わらない。

6.最新食生活事情~糖質摂取制限に関する話題
 最近、糖質摂取(白米やパン、麺類など)を制限すると肥満、糖尿病(1型、Ⅱ型)などの生活習慣病だけでなく、妊娠糖尿病、がん、アルツハイマー病や認知症、虫歯、歯原性菌血症などが改善・予防されるといった書物が現在の食生活に対する混乱を惹き起こしている。いわゆる糖質ダイエットと称されるものである。これに対する異論・反論も多く、安易に信用することは控えたい。これら多くの話題には科学的根拠に欠けているのもあり、それらの課題は医学・栄養学・食品学等の学会、厚生労働省・農林水産省などの行政側で話題・議論すべき内容であり、これを国民に直接一般書物などマスメディアを通して訴えることは国民の不安を煽るだけでなく、食行政を混乱させるだけであり、売名行為とも受け取らわれかねない。これら内容については専門家の間でしっかりと議論し、科学的に確立したものを一般国民に公表すべきである。また、今日様々なダイエット法がメディアを通して宣伝されているが、もしもダイエットなど自分の食生活を変えたい場合には、必ず信頼できる人と相談することが大切である。このように、日本の食事事情が混乱している現代社会においては糖質、タンパク質、脂肪の摂取比率などを含めて、早急に総合栄養学的な観点から生涯にわたっての日本型食生活と健康について医学、農学、栄養学、経済学、工学などの広領域分野にて科学的に再検討する必要があると思われる。

7.望ましい食生活の在り方
 「食」は国家の基盤、文化や教育の根幹であることから、国は国民が生涯にわたって健全な心身を培い、豊かな人間性を育む事ができるよう、家庭、学校、地域社会における食育推進行政を徹底してほしいものである。「食育」は「職育」であり、各々のlife stageにおいて知力、体力、抵抗力、作業能率、正しい判断力、感性を育むために不可欠な教えである。人間の一人ひとりのゲノム(遺伝子)の差は0.1%であり、これが免疫など様々な個体(人)差となっている。したがって、年齢、性、運動量、作業量、各ストレス量、体質などが各個人によって異なるように、食事の質と量も当然異なってくる。望ましい食生活とは、個人個人が正しい知識を持って、賢く食事を楽しむことである。それによって、酸化ストレスも減少し、免疫能が強化され、健康寿命の延伸が図られる。我われは、「今こそ」栄養学・食品学の知識を身に付け、一つの栄養素・食品におけるミクロ的な視点ではなく、総合栄養といったマクロ的な視点から自分自身の食生活について真剣に考える必要がある。厚生労働省などの公的機関は国民に対する正しい栄養教育の一層の普及が望まれる。

おわりに
 戦後70年間で日本社会のあり様が著しく変貌し、今後もさらに変化していくものと思われる。いつの時代も生命・健康維持において最も重要なものが「食のあり方」である。正しい「食生活」を維持・継続することによって生体のリズムが構築され、知識や技術の向上が図られる。さらに、健全なからだや精神(感謝)という個人レベルの健康だけでなく、健全な社会が構築され、延いては国家が元気となる。また、「食」に対する知識を得ることによってからだと心を大切にし、生きる術として大切な善悪の判断、感謝し奉仕するといった素直な心を持つ。さらに、前向きに生活の工夫を行う知恵などを持ち、将来を夢見るこころを持つようになる。内容の貧しい食事であっても団欒のある楽しい食生活や四季の旬のおいしい物を食べた時の自然と笑みがこぼれる幸福感・こころのゆとりが得られ、そこからさまざまな知恵が伝承されることを忘れてはならない。(近藤雅雄:平成28年3月2日掲載

受験生がんばれ ‼ ~後悔しないための受験戦略と心得

 毎年、1月から3月は学校の定期試験、入学試験、様々な資格にかかわる試験、昇格試験など人生を左右する大きなイベントが集中し、受験の季節となります。この時期は、冬から春にかけて気象の変動が著しく、インフルエンザなどの風邪や自己免疫性疾患や持病などの症状が出現しやすい季節でもあります。これらを乗り越えて、漸く春がやって来ます。
 ここでは、受験に失敗しないための戦略とその心得の一例を紹介します。
1.試験前
1)計画を立てる。PDCAサイクル(plan-do-check-act cycle)に従う。
 試験の日程が決まったら、それに合わせて自分に合った試験準備を計画、これを実行し、勉強の方法・準備が適切であるかを評価する。その際、ムリ、ムダ、ムラの「3ム」がないよう、何度も繰り返し、最適な方法を考える。自分に合った勉強法が確立したら、それを実行する。
2)過去問題を徹底的に調べる。
 試験に出題される内容の重要ポイント(キーワード)はいつの時代も同じです。したがって、過去に出題された問題を繰り返し実施し、これを理解すれば試験準備は十分です。
3)体調を万全にする。
 季節的にも風邪や持病などが発生しやすい時期なので、こころとからだの健康管理を怠らないよう、強い意志と自信をもって日常の生活と体のリズムを守り、自己管理を行って下さい。

2.試験前日
 試験前日には試験勉強を行わないで、翌日に備え受験票や筆記用具などの準備を完璧に行い、カバンにしまって、早めに寝る。その際、絶対合格するという自信を持つことが大切です。

3.試験期間中
1)試験会場に30分前には必ず到着する。
 前もって試験会場を下見し、余裕をもって試験会場に到着できるよう交通機関などを調べておく。また、交通機関のアクシデントに備え、迂回路も調べておき、少なくとも30分前には会場に到着し、トイレなども済ませておきたい。
2)試験を受けるためのPDCAサイクルを考える。
 試験用紙が配布されたら問題全体を速読し、簡単な問題から解答し、難解な問題は後回しにする。問題順に一つひとつ解答していくと、難解な問題に遭遇した時に、それに関わる時間があっという間に過ぎてしまい、時間が足りなくなり、これが致命傷となることがあります。まずは、問題全体を早めに把握しておくことが大切です。
3)試験が終了した後の心構え。
 試験が終了してからも、ケアレスミスがないかを確認することが大切です。必ず、何度も問題と解答を見直す。また、迷った時は、最初に解答した答えが正解のことが多い。

4.試験終了後
 試験がすべて終了したら、自宅などで問題を必ず見直し、間違っていないかを確認する。間違いが確認されたら直ちに修正する。この確認作業はその後の人生においても、同じ間違いは絶対に繰り返さないという「考え抜く力」「課題発見力」などが養われるますので、必ず行って下さい。(近藤雅雄:平成28年2月5日掲載)

栄養学と医師

 栄養学の基本を学ぶことによって生命、生体の恒常性(ホメオスタシス)、生体リズムおよび動的平衡の重要性を理解できるようになります。そして、栄養の過不足状態における体内代謝への影響や遺伝学の観点から生活習慣病と栄養現象との相互作用などを正しく理解することによって、保健・医療・福祉・文化(食文化)・環境(食環境)との相互関連性を理解し、人間力を身に付けるようになります。
 栄養は生命維持に不可欠な現象であることから、栄養学はその基本である栄養の意義、健康の保持・増進、疾病の予防・治療における栄養の役割、エネルギーと栄養素の代謝とその生理的意義など、ヒトの生涯にわたって健全な健康学の在り方を追究します。そのためには生命維持に必須な各種栄養素の生理学的作用、栄養素の体内相互変換やその機能、栄養と健康および疾患との関わり、栄養と食生活の関係、体構成成分としてのエネルギー源の役割、摂食行動から消化・吸収、栄養素の体内運搬など、これら栄養学の基本的概念を疫学統計、理学、医学、社会科学などを駆使して、年齢別、性別、個別・集団別、運動と生活活動別、各種疾病と栄養との関連を追究し、人間のQOL向上と健康寿命の延伸を図るべく、総合的・学際的に教育・研究を行うことを使命としています。
 このような教育・研究を学修してきた管理栄養士が健康、医療などヒトの生命に関わる仕事に携わる場合には、栄養学に対する正しい幅広い知識と技術を駆使して病院、学校、企業、その他社会的な様々な場面で人々の健康の保持・増進、疾病の予防や治療・予後などの指導・管理にあたってほしいと願います。

 しかしながら、近年、少数ですが栄養学を学修していない医師が栄養・食事に関して自ら様々なメディアを介して、あるいは医師が書いた書物が氾濫し、自説を説く人が多くなりました。それらの中には①栄養学の基本を覆すものが多くみられる。②栄養学的な根拠のない個人的な感想が多く、危険なものもたくさん見られる。また、③統計学的に有意差があるからと言って、あたかも全人的に科学的根拠があるように指導する。さらに、④動物実験の結果をそのまま人に当てはめようとする。医師は栄養学については素人同然です。その医師が自分の体験・感情から広く一般向けに栄養学的な根拠なしにマスメディアに向かって自説を公表することは無責任と言えます。その場合は医師という肩書を外して公表すべきです。医師の使命は病気の治療です。
 一般人からすれば、医師ということで、その言動を丸呑みにし、それを行動に移そうとします。とくに医師の言葉は重たく、責任がありますので、話題性を狙った軽はずみな言動や著作は控えるべきです。医者は医師としての自覚を十分に持ち、その責任を全うしてほしいものです。

 現在、病院におけるチーム医療が求められていますが、医師主体の我が国にあっては、医師が医療のリーダーとなり、すべて医師の指導の下に進められているのが現状です。また患者にとっても、医師は「お医者様」と言われるように尊敬され、絶対的な立場にあります。しかしながら、本来のチーム医療の考えからすれば、チーム医療に携わるスタッフ全員(医師、看護師、薬剤師、管理栄養士など)が十分に意思の疎通を図り、共通理解のもとに治療を進めることが大切と思います。一方、管理栄養士などの栄養の専門家は十分に誇りを持って、当該専門領域のさらなる向上のための勉学に日々努めてほしいと思います。
 今後は、医療に携わる医師以外の看護師、管理栄養士などの国家資格者の待遇と責任をさらに強化し、少なくとも医師と同等の発言力を高め、本来の姿であるチーム医療の進展を目指してほしいと思います。また、国民の保健・健康、医療、福祉にかかわる行政において、医師が万能であるといった時代はもう終わりにしたいものです。(近藤雅雄:平成27年9月20日掲載)

人間と地球環境問題

 生物がこの地球に誕生して以来、気の遠くなるような長い時間をかけて地球環境のもたらす様々な変化に適応・順化し、今日の人間を中心とした文明社会を築き上げてきた。しかし、この百年単位の短い期間で先進国における大量消費、大量破壊型の社会構造、途上国における爆発的な人口増加、急激な都市化・工業化などによって私たちの住む恵の地球環境が大きく変貌しようとしている。いわゆる地球環境問題として、オゾン層の破壊、地球の温暖化、酸性雨など越境大気汚染、海洋汚染(地球規模の化学物質汚染を含む)、自然資源の劣化(熱帯林の減少、生物の多様性の減少、砂漠化など)など生物の生命に直接関わる深刻な問題が多数発生しているが、これらはすべてお互いに関連しあっている。
(近藤雅雄:平成27年9月5日掲載)
以下のpdfに原稿を掲載した。
人間と地球環境問題

伝統医学と日本の医療の方向

 戦後の急速な社会変化から、次代に向かっての社会と共に歩む幅広い医療の改革が進められている。一方で、世界各地で伝統医学従事者を中心とした「伝統医学(traditional medicine)」を見直す機運が起こっている。こうした中で、日本の伝統医学の今後の方向性を考える動きも起こり始めている。

1.世界での伝統医学の現状 
 西洋医学はギリシャ、ロ-マで発祥し、そしてそれが西洋に芽生えた伝統医学の一つである。この西洋で誕生した一伝統医学である西洋医学が今日の世界の主流をなしてきた背景の一番大きな要因は近代科学的手法(分析的手法)を取り入れるのに成功したことによる。すなわち、西洋医学では、臨床と基礎の各研究がうまく合体し、その成果は現在の多くの病気の原因やその発症機構を明らかにし、病気の診断・治療・予防など医療のあらゆる面で大成功を収めてきた。この事実は誰も否定することはできない。
 しかし、近年の病気の多様性や文化の多様性から(原因の明らかでない慢性的な疾患、ストレスなどの精神的な要素が反映される疾患、再発性疾患などは西洋医学的手法では困難な場合が多い)、これまでの近代科学的手法に基づいた西洋医学だけで、全人類的医療が行えるかの疑問が世界中で沸き起こってきた。そこで、近年、世界各地の伝統医学、民族医学を見直そうとする機運が国際的に起こってきている。
 中国では数千年の歴史を有する中国医学主体の医療から、文化大革命(1966~1976年あるいは1977年)以降、西洋医学と中国伝統医学の融合政策に政府が積極的に推進し、一応の成功を収めている。しかし、近年の急速な経済発展・開発に従い、此れまでの中国の伝統療法に変わって西洋医学が主流になりつつあることは否めない。
 一方、他国ではしだいに積極的に民族医学を取り入れ、その土地、風土に合った医療を推進しようとする国が増え、国際機関も積極的にこれを支援する方向にある。すなわち、現代西洋医学以外のすべての医療を含む多種多様な治療法である補完・代替医療が急速に進展している。日本では漸く他国での伝統医学を含む代替療法の調査・研究が行われ、現代の医療に活用するためのプロジェクトが動きだし、伝統医学(東洋医学:主に漢方)を正規カリキュラムに取り入れているところも増えてきた。しかし、これらはすべて医師教育(日本では、医師はすべて大学の医学部での医学教育を受けたものだけを指す)の一環として取り組まれており、一般的に東洋療法に携わる専門家(あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師、柔道整復師などの治療師)の身分は残念ながら極めて低い。その最大の理由は、わが国の医療行政が西洋医学の医師主体の構造国家として機能しているためである。

2.欧米での民間医療ブ-ム(代替・補完医療)の背景
 1998年に米国国立衛生研究所(NIH)に国立補完代替医療センター(NCCAM)ができたことをきっかけに広まり、世界各地で現代医学を補完・代替する医療として利用されている。1999年の11月に米国・ワシントンで「第1回チベット医学国際会議」が-伝統医学と西洋医学の対話-と題し、世界中から2500人の参加で開催された。日本でも、1998年に「日本代替・相補・伝統医療連合会(JACT)」、2000年「日本統合医療学会」などが結成され、伝統医学および補完・代替医療(complementary medicine, alternative medicine)が世界的なブ-ムにあることは事実である。このような背景としては、これまでの西洋医学主体の医療は①検査、薬などの医療費が高く、副作用が多い、②即効性があるが、病気の局所しか診ない、③検査の結果が中心で全体(とくに患者のこころ)を診ない、④貧しい人は西洋医学にかかれない、⑤医師の職業意識に対する個人差が大きい、⑥その土地の風土・文化に則した医療が欠けている、⑦患者の健康・医療に対する意識の高まりなどであるが、その最大の根拠は⑧医療費の高騰と思われる。そこで、現在、厚生労働省、医師会を中心とした病気の予防、健康増進という健康政策が民間企業および国民における健康医学ブ-ムを起しているものと思われる。

米国と日本の現状
 米国では6種の医療職 ①医師 ②歯科医、③オステオパス、④カイロプラクタ-、⑤ポタイアトリスト、⑥検眼師があり、これらは大卒あるいは短大卒後4~6年の専門課程の履修を経た後授与される学位であり、学位取得後に国家試験にパスして免許を受けなければその業務が行えない。この内、日本的な感覚で、いわゆる普通の医者と呼べるのは医師とオステオパスであり、投薬・手術を含む人体に対するありとあらゆる医療行為が法的に認められている。検眼師は眼科医の業務から投薬・手術を除いたものすべてを行うことができる。ポタイアトリストは足の医者で、足のみを治療の対象として、麻酔を含む投薬及び手術も行うことができる。
 一方、米国で生まれたカイロプラクティクは、今日では多くの国で正規医療の一部となっている。カイロプラクタ-は一般的診断権とX線撮影権を持ち、州によっては簡単な外科手術や死亡診断書の作成なども認めているが、自由競争・独占禁止を国是とする米国ならではの住み分けぶりといえる。さらに、米国では「インディアン伝統医学」、「仏教医学」、「アロマテラピ-」が現在静かなブ-ムとして広まっている。

 日本では国家資格として国が一般開業(独立)権を認めた職種として、歯科医師以外に、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師があり、日本の伝統療法と言える。このうち、指圧は昭和15年に現在の日本指圧専門学校浪越学園の前身である指圧学院を設立した浪越徳治郎氏によって普及され、現在に至る。柔道整復術は日本古来固有の伝統医療、民間療法、代替医療であり、柔道整復師は、骨折・脱臼・打撲・捻挫の治療を行うことができる。ただし、これらの療法については、医師はすべてについて実施可能であるが、日本独自のこれら伝統療法の発展並びに治療師からなる医療行政の今後の進展が期待される。

3.日本の医療の方向性
 米国ではアメリカ人の健康づくりをまとめた米国健康政策の指針である「ヘルシーピープル2000」が10年ごとの見直しで米国保健社会福祉局より提出された。一方、日本の医療も西洋医学を基軸に進化してきたが、米国と同様に近年の生活習慣病を始め慢性疾患の増加に関連した健康政策が重要視されるようになり、米国に追従した形で、厚生労働省から「健康日本21」と題し、21世紀における国民の健康寿命の延伸を実現するための新しい考え方による国民健康づくりの策定に対する取り組みが行われるようになった。
 また、これまでの医療は、プライマリ・ケアについては軽視の傾向であったが、プライマリ・ケアの専門医として、2013年4月に厚生労働省は「総合診療専門医」という新しい専門医を養成・認定することを決定した。2017年から後期研修がスタートし、2020年に新制度の下で、初めての専門医が誕生する。すなわち家庭医(family doctor)制度とも言える。これによって、①患者中心の医療、②家庭志向型のケア、③地域包括プライマリ・ケア、④健康問題の心理社会的アプローチ、⑤共感できる人間関係の維持・強化等が図れることが推測される。
 したがって、これからの医療は各種疾病に対する治療対策は勿論のこと、健康向上・疾患予防(予防医学)という概念が大きく広がってきていることは癌、生活習慣病の概念でもすでに証明されていることから、これを家庭医にて個人の健康管理を徹底しようとする時代にあると言える。
 一方、日本独自の伝統療法の充実についての対策は未だにみられない。これを早急に充実させ、西洋医学と東洋医学(日本の伝統医学)の両者の発展を目指した日本独自の総合医療の発展を期待したい。
参考文献:①今西二郎編集:補完・代替療法、金芳堂、2003、②葛西龍樹著:医療大転換―日本のプライマリ・ケア革命、ちくま新書、2013、③アンドルーワイル著、上野圭一訳:癒す心、治る力、角川書店、1995年。(近藤雅雄:平成27年9月2日掲載)


主な世界の伝統医学
①中国:中国医学(気功などを含む:黄帝内経、神農本草経、傷寒論を基本典籍とする)漢方、鍼灸、チベット医学、太極拳など、②インドその他:ア-ユルヴェ-ダ、ユナニ、ヨガなど、③ミャンマ-:ビルマ伝統医学(土着医学)、④インドネシア:スクン・バイ(伝承治療薬:ジャムウ、ウコン)、⑤アラブ諸国:ユナニなど、⑥アフリカ:薬草学など、⑦欧州諸国:アロパシ-、ホメオパシ-、鍼灸、温泉療法、カイロプラクティク、アロマテラピ-など100 種類以上、⑧米国:インディアン伝統医学、カイロプラクティクなど、⑨日本:あん摩マッサージ指圧、柔道整復、鍼灸など

補完・代替医療の種類(今西二郎編集:補完・代替療法,2003)
①食事・ハーブ療法:栄養補助食品、絶食療法、花療法、ハーブ療法、菜食主義、メガビタミン療法、②心を落ち着かせ、体力を回復させる療法:睡眠療法、瞑想療法、リラクゼーション、バイオフィードバック、イメージ療法、漸進的筋弛緩療法、③からだを動かして痛みを取り除く療法:太極拳、ヨガ、運動療法、ダンスセラピー、④動物や植物を育てることで安楽を得る方法:アニマルセラピー、イルカ療法、園芸療法、⑤感覚受容器を介した療法:アロマセラピー、芸術療法、絵画療法、ユーモアセラピー、光療法、音楽療法、⑥物理的刺激を利用した療法:温泉療法、刺激療法、電磁療法、⑦外力で健康を回復させる療法:指圧、カイロプラクティック、マッサージ、オステオパシー、リフレクソロジー、頭蓋骨調整療法、⑧宗教的療法


こころとからだの健康(9)治療と治癒

 生体には様々なバイオリズムがあり、そのリズムの乱れは、脳の視床下部を中心とした体内の恒常性維持機能(これをホメオスターシスという)によって常に無意識的に自己診断、修復、再生の3つの機能が働き、健康状態に戻そうとする治癒力が働いています。
 健康とは完全にバランスの取れた状態であり、これが崩れたときに健常な状態に戻そうとします。この勢いは人為的に作用させることが可能であり、それは治療によって成すべきです。治療と治癒との関係は、治療は受身的であり、病を外部から叩くのに対して、治癒は能動的であり病を内部から除去することを指します。

1.医学誕生における2つの神話
1)医神 アスクレピオス(Asclepius)
 病気の治療は基本的に抗医学であるというのが現在西洋医学思想の根本であり、病気のプロセスを内部に押しやるという本質的に対抗的・抑圧的な医学です。

2)健康神 ヒュギエイア(Hygeia)
 治癒力の強化(自発的治癒、spontaneous healing)は東洋医学をはじめとした西洋医学以外の伝統医学の根本思想です。この思想は現在の西洋医学の一分野である衛生学に見られ、衛生学を健康神の考えを取り入れHygieneと命名されましたが、現代の衛生学は疫学や中毒学が主流であり、ヒーリングシステム(治癒系)、すなわち、自己診断、修復、再生の機序解明に関する研究はこれまであまり行われてきませんでした。また、衛生学は予防医学としての代替、補完、相補医療の領域が重要と思われますが、広く公衆衛生学という見地からすれば、医学部のみで究明できるものではなく、理工学、人文科学、家政学、栄養学、人間科学など多領域に渡る学際的研究分野であるべきです。

2.主な伝統医療 
 日本には貝原益軒(1630~1714)の「養生訓」が有名ですが、明治時代以降医師の権力が著しく増大し、西洋医学一辺倒となっていきました。一方、世界では、アーユルヴェーダ医学、鍼療法、バイオフィードバック、ボディーワーク、中国医学、カイロプラクティック、イメージ療法、生薬医学、ホリスティック医学、ホメオパシー、睡眠療法など多数が知られています。このうち、よく知られているのがインドの伝統的医学であり、ユナニ医学(ギリシャ・アラビア医学)、中国医学と共に世界三大伝統医学の一つでるアーユルヴェーダです。サンスクリット語で長寿の知恵と言います。問診、触診、脈診など患者の様子を細かく観察して診断し、食事療法、薬草療法(生薬、動物薬、鉱物薬)、スチームバスやオイルマッサージなどがあり、インドの庶民の医学となっています。

3.ボブ・フルフォードの教え 
 フルフォードの医学は病気を抑圧するのではなく、からだに備わっている潜在的な治癒力の発現を助長する、非侵襲的な医学であり、古代ギリシャの医師であったヒポクラテスの2大訓戒「①Primum non nocere:傷つけてはいけない、②Vis medicatric nature:自然治癒力を嵩めよ」を遵守し、「①からだは健康になりたがっている、②治癒は自然の力である、③からだはひとつの全体であり、全ての部分は1つに広がっている、④こころとからだは分離できない、⑤治療家の信念が患者の治癒力に大きく影響する」の五つの知恵を実践した。このフルフォードの教えについてはアンドルーワイル著の「癒す心、治る力」は、「自発的治癒とは何か」、「8週間で甦る自発的治癒力」の2冊からなる書物に記載されています。医師をはじめとする治療家には一度は必読されることを望みます。
参考文献:①アンドルーワイル著、上野圭一訳:癒す心、治る力、角川書店、1995年。
(近藤雅雄:平成27年9月2日掲載)

こころとからだの健康(8)肥満対策

 肥満とは単に体重が多いということではなく、脂肪量(中性脂肪)が過剰に蓄積した状態をいい、脂肪が増量している組織および場所(分布)によって皮下脂肪型(下半身型、洋梨型)肥満と内臓脂肪型(上半身型、りんご型)肥満に分類されます。生活習慣病との関わりがあるのは内臓脂肪型肥満です。
 肥満発症の原因は①食べ過ぎ、②誤った食事パターン、③運動不足、④遺伝、⑤熱産生機能障害などが挙げられますが、生活習慣による影響が多いことが分かっています。

1.肥満のメカニズム
 肥満のメカニズムの研究は1994~1995年に肥満の遺伝子およびその受容体遺伝子などが相次いで発見され、漸く肥満のメカニズムの概要がわかってきました。ヒトの体重は身長に対して設定されたように遺伝子によって食欲や消費エネルギーが調節されています。その調節には主に①レプチン(白色脂肪細胞から内分泌される蛋白質で摂食中枢を抑制する。すなわち、もう食べなくても良いという信号を脳に伝える。レプチンとはギリシャ語で“やせ”の意味です)、②レプチン受容体(視床下部の摂食中枢に存在する)、③β3アドレナリン受容体(エネルギー倹約遺伝子)、④脱共役蛋白(UCPファミリー;ミトコンドリア内膜に局在する蛋白で、ATP生産を伴わずに熱産生を行う)などが関与し、これらの遺伝子の異常と様々な環境要因が肥満を発症させる原因となります(肥満に関連した遺伝子は約70種類存在するという)。
 近年、急速に肥満者が増加(とくに小児の肥満が多い)し、社会問題となっていますが、その原因は過食や運動不足などが考えられます。

2.小児肥満の対策
 小児肥満の問題点として、①成人肥満への移行、②生活習慣病の発現、③いじめの対象となるなどがありますが、これらの対策として、こころの教育が最も大切です。小児肥満は、①家族、学校での教育(共育)、育児(育自)、②食生活改善、③糖質、脂質の摂取量を減らす、④積極的に運動を奨励する、⑤ダイエットの自重などによって予防することができます。

3.食事と健康
 こころとからだの健康を堅持していくために最も重要なのが食です、日頃から食に対する考え、興味を持ち、栄養についての正しい知識を身に付けたいものです。
 栄養は生命を維持するために必須な行為であり、その目的は生体機能の調節、生体組織の修復・再生、体温生産およびエネルギーの獲得などです。栄養素の摂取が十分であるかないかは、年齢に適した発育(身長・体重)、日常作業に十分見合った体力(作業能力)、病気に対しての抵抗力(免疫力)、などによって栄養状態が判定されます。
 これらの栄養状態が適正であるためには栄養素の過不足がないようにバランスよく食事摂取することが重要です。特に、食事は日常の生活習慣に欠かせない現象であり、生活習慣と深くかかわる病気の予防や改善のためには、毎日の食生活、食事に気を配ることが重要です。

4.肥満を誘発する原因が氾濫
 近年、24時間営業のコンビニエンスストアで外国の食材、加工食品、健康食品が氾濫し、気安く購入できることから需要が急増しています。しかし、これらの食品には一時のファッション的な、科学的裏づけのないものが多く出回っています。また、外食産業が発展し、今や欧米と同じように日本人の食生活並びに健康管理は個人に委ねる時代となりましたが、その結果、日本人の肥満人口が増加し、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病が蔓延することとなりました。

5.太らないための10か条
 肥満は①生活習慣病に直結する、②免疫力が低下する、③動きが鈍くなる、④息切れがするようになる、⑤やたらに汗をかく、⑥寿命が短くなる等、デメリットが多く、メリットがあまりありません。私も、青年期に56㎏であった体重が、中年期には過食と運動不足によって70kgと過体重となり、様々な生活習慣病を発症すると共に、先に挙げたデメリットが出てきました。そこで、健康について意識するようになり、これまでの生活習慣、特に食に対する意識を変え、日本人本来の日本型食生活に変えてから体重が減少し、現在は青年期の56㎏に戻すことに成功すると同時に生活習慣病もなくなりました。以下に、私の経験に基づき作成した太らないための条件を挙げます。

太らないための10か条
1)自分の体質を知る
2)1日3食、時間をかけて楽しくいただく
3)食塩、脂肪類は控えめに
4)刺激物、甘物、アルコール類などの嗜好品は控えめに
5)毎日野菜、海産物を多く食べる
6)寝る2~3時間前までに食事を終える
7)1日30分以上の運動(有酸素運動、徒歩1万歩)を行う
8)からだをこまめに動かす
9)体重計に乗る習慣をつける
10)入浴中は腹式呼吸を行い、ストレス解消を図る

6.健康度に対する健康指数
 標準体重は身長(m)×身長(m)×22によって、また、肥満度(BMI:体格指数)は体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)によって求められます。評価は、BMI 18.5~25が正常で、18.5以下がやせ、25以上が肥満です。やせすぎの場合も病気の罹患率が高く、BMI=22が最も病気の罹患率が低いと言われています。
(近藤雅雄:平成27年8月30日掲載)

こころとからだの健康(7)摂食障害

摂食障害 拒食や過食などの摂食障害は年々増加の傾向にあります。その病因は成熟恐怖や家族問題などの心理的要因(心因説)、摂食調節因子異常などの生物学的要因(身体因説)、ダイエット流行などの文化・社会的要因(文化・社会因説)などが考えられ、また、これらの要因が相互に関連しあって発症する多元的モデルが広く受け入れられています。
 一方、拒食と過食は相反するもののように捉えがちですが、拒食症から過食症に移行するケースが約60~70%出現し、「極端なやせ願望」あるいは「肥満恐怖」などが共通し、病気のステージが異なるだけの同一疾患と考えられています。

1.拒食症(神経性食欲不振症、神経性無食欲症)
 とくに若年層(思春期)の女性に多く、また、先進国に多いことから文化的要因も含まれていることが推測されます。
 この病気は体重増加への強い恐怖心を持つものが多く、その発症には第2次性徴期における特有のこころとからだの成熟のアンバランスからくる不安定な心理状態が関与しているといわれています。症状としては、女性の場合は拒食のために体重減少(標準体重の-20%以上)、無月経、性ホルモン低下、糖質コルチコイド(ステロイドホルモン)上昇などを引き起こし、「うつ」に移行することもあります。また、時には隠れ食いをしては嘔吐を繰返すこともあります。重症例では死亡することもあります。

2.過食症(神経性大食症、神経性過食症)
 過食症の場合は1週間に2回以上ヤケ食いやドカ食い(俗に週末過食症候群などと言われる)が見られ、結果的には肥満(単純性肥満)となりますが、体重増加を止めるため食べたあと吐くこともあります。原因は不明ですが、認知行動療法(体重と自己評価)や抗うつ剤が効く場合もあるということです。
 拒食症や過食症はこころの病が中心であることは間違いなく、その治療には、体重を調節するだけではなく、摂食障害についてよく理解し、ストレスとなる原因を早期に発見、その対処を考えることがなによりも大切です。
(近藤雅雄:平成27年8月30日掲載)

こころとからだの健康(6)ストレスと心身の障害

ストレス 現代社会はストレスに満ち溢れ、社会生活上、学校、会社、家庭内などでよく遭遇する不安、悲しみ、失望、恐怖、また、突発的な事件に巻き込まれたり、大きな災害に遭遇したりなど、後天的にこころが傷害されることが多く見られます。これは日本が抱える課題の一つである自殺者の増加と決して無縁ではありません。
 こころが健康であるということは、感情(気持ちや気分)と精神(理性)が健全で、社会と調和した生活を営んでいる状態と言えます。このような状態から外れるとこころの健康に異変が生じ、やがて「こころの病」へと進展します。
 ストレスが原因で起こる「こころの病」の代表が「心身症」「神経症」「うつ病」ですが、これらは関連している部分も多く、厳密に区別できないことがあります。この中で、「うつ病」はこころの風邪と言って誰でもなる病気ですが、年々患者数が増加し、放置すると自殺へと進展するので、予防医学上早期対策が望まれています。
 一方、からだの疲労がこころの疲労に移行する「累積疲労」が知られています。また、「慢性疲労症候群」も知られていますがこれらこころとからだの疲労には必ずその原因が存在します。まずは、睡眠時間を十分に確保し、成長ホルモンの分泌を高め、疲れを解消してから、疲労の根本となる原因について相談し、早めに除去または対策を講じることが必要です。

1.心身症
 心身症はどの年齢層でも発症しますが、特に働き盛りの中高年齢者に多く見られ、こころの過度の負担(心理的、社会的ストレスが過剰に加えられた状態)が、内臓諸臓器に器質的ないし機能的障害となって現れる病気を言います。例えば、胃・十二指腸潰瘍、過敏性大腸炎、神経性狭心症、自律神経失調症、円形脱毛症、睡眠障害、片頭痛、高血圧症、糖尿病、気管支喘息、更年期障害、性機能不全症、メニエール症候群、単純性肥満、慢性関節リュウマチなど多くの病気が関連し、ヒトによって病状は様々です。心身症はストレスとうまく付き合うように工夫し、早めに病気の原因を取り除くことによって、様々な病気の発症を未然に防ぎたいものです。

2.神経症
 神経症は性、年齢に関係なく発症しますが、特に10歳代後半から30歳代にかけて起こりやすい病気です。神経症の発症には心理的・社会的ストレスが大きく関与し、精神・神経症状として現れるもので、一般にノイローゼと言われています。心身症と異なり、内臓諸臓器には異常が認められません。また、躁うつ病や統合失調症のような内因性の精神病と異なって幻覚や妄想は見られません。
 神経症には①絶えず漠然とした不安感を持つ不安神経症(パニック障害)、②ささいな病状でも重病と思い込む器官神経症(心気症)、③自分の意思に反してまるで強迫観念に取り付かれたようにある行為や考えから抜け出せない強迫神経症、④対人恐怖や赤面恐怖、異性恐怖などの恐怖症、⑤健忘状態になったり、人柄が急に変わったり、無表情になったりする精神的症状および座れなくなるなどの運動麻痺や物が見えない、耳が聞こえないなどの知覚麻痺が起こり、これがヒステリーとなって現れることがあります。これらの根底には不安が共通して見られますので、不安となる原因を除去または考え方を改めることが早期治療につながります。

3.うつ病
 うつ病は近年増加傾向にあり精神心理的、社会的ストレスが発症や増悪に深く関与する病気で、脳の心身症とも言われています。発症年齢は時代と共に低年齢化し、20歳から50歳代で発症し、女性の方が男性に比べ約3倍高く、我が国の自殺増加との関係からもその対策が急がれます。女性では産褥期や更年期に比較的発症頻度が高いと言われています。
 うつ病の発症機序は不明ですが、こころとからだを活性化するセロトニンやノルアドレナリンといった脳内神経化学伝達物質の減少によって引き起こされると考えられています。したがって、薬物療法としてSSRI(選択的セロトニン取り込み阻害薬)を投与し、シナプス内セロトニン濃度を増やすための療法が中心となります。診断基準としては、米国精神医学会が作った診断マニュアルやWHO(世界保健機構)が作ったものがあります。
 表に示した様に、うつ病の症状は神経症や心身症とうつ病と神経症似た点も多く見られますが、生きる気力がなくなり、こじらすと自殺につながることが特徴です。うつ病患者の自殺率は高く、患者の14~37%が自殺企図し、15~25%が自殺する。合併症として不安障害、アルコール・その他の薬物乱用、社会恐怖、人格障害、摂食障害などが知られています。うつ病の場合は薬(抗うつ剤)や休養をとり、安心(癒し)を与え、治る病気であることを認識することが重要であり、励ましや叱責は本人の気持ちを追いつめることになり逆効果となります。予後は良好ですが、患者の約20~30%は慢性化すると言われています。
(近藤雅雄:平成27年8月30日掲載)

こころとからだの健康(5)右脳と左脳を知る

1.男と女の脳の違い
 男性の脳重量が1.45㎏前後に対して女性は1.25~1.35㎏ですが、この理由はよくわかっていません。脳の機能からすると男性は主に右脳を使っているのに対して、女性は右脳と左脳の両方を使っていると言われます。このことは、人間の誕生以来、男性は家族を養うべく食糧を獲得しなければならないため、筋肉運動、推理能力、空間認識などを機能とする右脳が発達し、女性は子孫を残し、愛情を持って育てるべく持久力、語学能力、言語能力、計算能力、書字能力など育児を司る左脳と、本能的に子どもを外敵(環境)から守る右脳をうまく使って発達してきたと思われます。この違いが脳の進化・発達に影響を与え、性差による右脳と左脳の違いとなって現われたものと思われます。すなわち、胎児期に男性ホルモン量が多いと右半球の成長が早くなり、左半球の成長が遅くなって、男性は右脳が発達してきたと考えられます。

2.大脳皮質前頭連合野働き
 脳は大脳(皮質、辺縁系、基底核)、間脳(視床、視床下部)、脳幹(中脳、橋、延髄)、小脳からなりますが、人では他の哺乳動物と異なって大脳皮質が異常に大きく発達し、知的な活動をコントロールできる機能が発達してきました。この大脳皮質については、①全ての人が同じ数の神経細胞(約140億個)を持つ。②心身(こころとからだの働き)の司令塔である。③感覚、運動の統合、意志、創造、思考、言語、感情の中心となる。④成長に従って発達し、ゆっくり退化する。⑤1日、週、月、四季、消化、ホルモンの各リズムが存在する。⑥心身の疲労を回復し、記憶に役立つ睡眠のリズムが存在する。⑦男と女との違い等、脳の中で最も重要ですが、その中でも人間として最も大切なのが、前頭連合野です。
 この前頭連合野は思考、言語、理解、理性など人間としてのこころの働き(精神活動)の中心となっていますので、人としての「こころの中枢」と言えます。哺乳動物では、前頭連合野の重さはヒトが約400g(脳重量の約30%)に対してチンパンジーは約70g(17%)です。さらにサル、イヌ、ネコでは、各々脳重量の12%、6%、2~3%しかありません。笑いは進化の証と言われますが、地球上の生物の中で、笑う動物は前頭連合野の多い人とチンパンジーだけです。さらにチンパンジーよりも大きく前頭連合野が発達した人は言語の機能を獲得し、自分自身に関する情報を意識的に保持しつつ組み合わせて(自己意識)、自分自身をコントロール(自己制御)することが可能ですので、「人間力の中枢」とも言えます。

3.右脳と左脳の違い
 人の言語機能の約90%は左半球にあり、大脳半球左右差の典型例と言えます。言語機能から見ると、左半球は言語半球あるいは優位半球と言われています。この言語に関しては左の前頭葉にブローカの「運動性言語中枢」があり、側頭葉にウェルニッケの「感覚性言語中枢」があります。両者はお互いに連絡し合って生命の司令塔として機能しています。例えば、運動性の言語中枢に障害をあると会話が出来なくなり(運動性の失語症)、感覚性の言語中枢に障害があると相手の話す言葉や書かれた文字の意味がわからなくなる(感覚性の失語症)ようになります。
 左脳は言語のほかに図に示したように計算、書字など分析的、抽象的、論理的な機能が多いのに対して、右脳は空間的知覚や情操的な音楽などについての機能を持ち、言葉で表現できない直感的な理解に関与すると言われています。。左脳と右脳
 したがって、左脳は生後に獲得される言語、計算、書字、記憶などを司り、右半身の感覚と運動を支配します。一方、右脳は芸術脳と言って、音楽や絵画、空間認識、非言語的な概念を司り、左半身の感覚と運動を支配します。この左脳と右脳は約2~3億5000万の神経線維を含む脳梁で連絡しています。
 古来より、人間の知恵として、「しわの一番多い手の掌を左右合わせることによって幸せになる」とよく言い伝えられてきましたが、まさに人間はうれしい時、感謝の意を表する時に手を合わせたり、手をたたいたりします。この現象は、脳が活性化し、喜んでいることを反映しています。つまり、左脳からの情報が右脳に移動し、またはその逆が起こり、左右の大脳皮質が猛烈に活動していることを示しています。
 したがって、左脳に入ってきた様々な情報を右脳に連絡するためには左手と右手を合わせることで両方の脳が発達することが考えられますので、毎日欠かさず朝の起床時にいのちに対する感謝を込めて、寝る前に一日の生活・行動への感謝を込めて、そして食事の前後に生きる力を頂くことへの感謝を込めて手を合わせる習慣を身に付けてはいかがでしょうか。
(近藤雅雄:平成27年8月26日掲載)

こころとからだの健康(4)男女の寿命差

 介護の必要がなく健康に生活できる期間を「健康寿命」と言いますが、平成25年(2013年)の日本人の健康寿命は男性71.19歳(同年の平均寿命は80.21歳)、女性74.21歳(同86.61歳)でした。平均寿命からすると女性の方が男性よりも約6年長く、健康寿命は女性の方が約3年長い。しかし、介護を要する期間は男性よりも女性の方が約3年長いという結果でした。
 健康寿命の延伸とQOL(生活の質)の向上を図るためには、健康増進の3原則である栄養、運動、休養を生活習慣にうまく取り入れることが大切です。しかし、仕事を抱えた男性はなかなか困難で、惰性になりがちですが、健康に対する意識改革が必要です。一方、女性は介護を必要とする期間が長いことから、老後自立できるような工夫を早期に講じることです。

1.男女の寿命の違い
 男女の違いはY染色体の有無で決まります。性を決定する遺伝子であるY染色体上のSRY(Sex-determining region on the Y chromosome)は男性ホルモンであるテストステロンを生産し、男性生殖器への分化や男性の性格形成を促進すると言われています。例えば、染色体(XX)は女性でありながら性格が男性の場合は男性ホルモンが胎児期の脳に入った場合に起こり、反対に染色体(XY)は男性なのに男性ホルモンが脳に入る量が少ない場合は女性の性格になるといった、いわゆる性同一性障害となることが知られています。
 さて、世界中の国において男性の方が短命です。その理由は、①男性は免疫の中枢である胸腺(免疫器官)の萎縮が早い、②筋肉量が多いため基礎代謝量が高い、③染色体の違い(Y染色体は傷つくと回復しない)等が挙げられます。男性は、一般的に生活のリズムが不規則、仕事によるストレス、不適切な食生活(偏食が多い)などによる生体リズムの乱れや筋肉をたくさん持つことから、女性に比して酸素の摂取量が多く、それだけ多くの活性酸素を発生する。これが酸化ストレスとなって免疫力の低下、病気や孤独に弱い、デリケートである等の理由によって短命となると言えます。したがって、男性は日常的にビタミンA、C、Eやポリフェノールといった抗酸化・免疫増強物質を摂取し、ストレスとうまく付き合う生活習慣を身に付ける等、酸化ストレスからの防御が必要です。

2.夫婦の寿命の差
 長年、夫婦が幸せに暮らし、ある日どちらかが先に亡くなった場合を想定します。もし、夫を亡くした妻は1年位落ち込みますが、それ以降は、のびのびと暮す場合が多く見られます。逆に、妻に先立たれると5年寿命が短くなり、離別するとさらに10年寿命が短くなるそうです。また、50歳からの平均余命は、妻のいる男性では約30年なのが、妻のいない男性は約21年と短い。さらに、60歳以上の自殺による死亡者数は離婚した男性が妻のいる男性に比べ46倍も多いと言われています。
 結婚は夫婦それぞれのこころとからだの健康に大きく影響し、特に、男性は配偶者・家族の存在の恩恵を強く受けます。男女ともに健康寿命と平均寿命をまっとうし、介護の必要のない生活を送るのが理想的な寿命と言えます。
 夫婦が幸せに暮らしている姿はだれが見ても微笑ましいものです。夫は妻を、妻は夫を、お互いに理解し、末永く幸せに暮らす方法を若い時から考えていきたいものです。
(近藤雅雄:平成27年8月26日掲載)

こころとからだの健康(3)12か条

 生活習慣病、感染症、癌等に罹患しない丈夫なからだ作り、ストレスを溜めないこころの健康作りが各個人、社会に求められています。個人ならびに集団社会が惰性的であったり、依存的である場合、あるいは個人が身体を動かさなかったり、偏食、喫煙、薬に頼るようなことになると、生きがいを持たない、暗い性格(キレ易い、悲観し易いなど感情の変化が著しい)を持ったヒトが多くなり、社会全体が非活動的・非生産的になるばかりでなく、医療費の高騰を招きます。個人においてはストレスを溜め易く、不定秋訴→籠もり易い→病気(こころとからだの病気)によって健康寿命をはやめる結果となります。
 こころとからだの健康には日頃から報恩、感謝の気持ちを抱くこと、いのちの尊さを理解すること、愛情を持つこと、ストレスを貯めないで前向きであること、目標(夢、志)を持つこと、自然のリズムを大切にすることなどが重要です。これらはすべて酸化ストレスを少なくし、免疫能を増強させ、こころとからだを軽くし、毎日がウキウキと生きがいの満ちた生活となり、人生を楽しく、また素晴らしいものにしてくれます。
 そこで、私の考える健康増進の処方箋として「こころとからだの健康」12か条を以下に挙げました。

1.栄養(バランスの取れた食生活:団欒、育自、共育、神経・内分泌・免疫機能の維持)
 厚生労働省から提出されている食事摂取基準には年齢に応じた栄養素の摂取が記載されています。第一次・第二次性徴期、青年期、中高年齢期には栄養のバランスを考えた食事摂取が重要であることは言うまでもありませんが、特に中高年齢期になると基礎代謝が低下しますので、カロリーの過剰摂取は肥満につながります。肥満はメタボリック症候群と直結しますので、高血圧症、糖尿病、脂質異常などの生活習慣病のリスクが高まります。また、過剰な食事制限(ダイエット)は生体のリズムの乱れにつながり、若い女性では月経困難症、貧血、感染症など多様な疾病の原因となります。したがって、バランスのとれた食生活が大切です。さらに、食事摂取時には団欒が大切です。食事を通して家族、友人などの人間関係を形成するこの上ない貴重な時間となります。家族であれば、育児(自)、教(共)育の時間となり、食事時間のリズムを遵守することによって、神経・内分泌・免疫の各機能が適切に働くだけでなく、食及び他者への感謝の気持ちを持ち、ストレス解消に役立ちます。

2.運動(身体を動かす:神経、循環、免疫機能の増強)
 人は動物です。動物は動く物と書きます。筋肉は第2の心臓とも言うように、適度な筋肉をつけることが大切です。とにかく身体を動かすこと。運動は定期的に3メッツ以上の強度の身体運動を毎日1時間は行いたいものです。運動によって、脳や筋肉が喜び(心身一如)、循環機能を高めるだけでなく、こころもすっきり、免疫力も高まり、まさにこころとからだのアンチエイジングに繋がります。糖尿病や心臓疾患などの基礎的疾患を抱えている場合は医師の指導に従ってください。

3.休養(疲れる前に休む:脳と全身筋肉の機能保持)
 思春期以降、1日約90分の時間のリズムがあります。90分前後仕事をしたら、10分前後の休息をとることが大切です。すなわち、疲れる前に休むことが大切で、疲れ果ててしまってからの休養は回復力が悪く、健康を取り戻すのに多くの時間がかかります。
 睡眠においても約90分のリズムがあります。就寝してから深い睡眠のノンレム睡眠が現れ、約90分後に浅い睡眠のレム睡眠が出現します。レム睡眠というのはREM(rapid eye movement)と言い、寝ていながら筋肉は弛緩(脱力症状)していますが、眼球が動いている状態で、この時に夢をみます。また、歯ぎしりをしていたり、寝返りを打っていたり、寝言を言っていたりする時の睡眠で、逆説睡眠といって体の睡眠を指します。一方、ノンレム睡眠は脳の睡眠(徐波睡眠)と言って、筋電図は動いていますが、眼電図はプラトーとなっています。この時に成長ホルモンなどが分泌され、生体がリセットされます。成長期の子どもは寝る子は育つと申しますが、まさに成長ホルモンの分泌が高まります。
 一日のスタートとして、目覚めは重要です。朝起きるときにはレム睡眠時の浅い睡眠時に目覚まし時計などを設定して起きると快適な朝を迎えることができます。逆に、深い睡眠のノンレム睡眠時に起きたりすると、一日中頭が働かないなど、不愉快なことが多々起こります。さらに、この2つの睡眠は記憶力にも関与していると言われていますので、良い睡眠を心がけるようにしたいものです。このように、良い睡眠を取ることは脳と全身筋肉の機能が改善し、こころとからだがスッキリします。

4.体質を知る(遺伝子・環境因子相互干渉作用)
 米国などの他の先進国に比べて日本は島国として、また長い間鎖国を通して比較的単一民族にて長年種族を保存してきました。すなわち、日本国民は比較的純粋培養され、遺伝子による影響はその血筋(家族・親戚)に左右されることが推測されます。
 自分の家族親戚(血筋)の中に癌や高血圧症、糖尿病、脂質異常症、肥満などがあれば、その体質を受け継いでいると考え、「生活習慣を考える」または「見直す」必要があります。もしも、大腸癌が家族にみられれば、大腸癌の体質を受け継いでいると考え、食物繊維や抗酸化食品の積極的な摂取やストレスに対する対処によって病気を予防できます。また肺癌の血筋であれば喫煙を止め、また副流煙(受動喫煙)や大気汚染からからだを守り、抗酸化食品を積極的に摂取するなどして病気を予防することが可能です。これを遺伝子―環境因子相互干渉作用と呼んでいますが、遺伝子の働きには生後の環境因子が最も大切であることを意味しています。
 一方で、近年生殖工学が進展し、匿名の第三者の卵子からの体外受精などによって誕生した人については遺伝的な背景に対する情報が少なく、体質について考えることは困難です。今後さらに増加する傾向にありますが、この場合には自身の「からだからのサイン」を修得し、自分なりの健康法を身に付けると、よい結果につながるでしょう。

5.危険因子からの予防(自己防御:遺伝的素因、食生活、アレルギ-、タバコなど)
 「体質を知る」ことと共通しますが、ここでは体質とは異なって、人間として、日常生活の上で必要な対処について延べます。例えば夏の猛暑の中を活動したりすると熱中症のリスクが高まりますが、そのようなときに水分、塩分の補給を怠らず、また帽子などを被ることによって熱中症からの予防できます。同じように紫外線等の環境因子だけでなく、食べ物などの生活因子等、経済・産業・文明の発展に伴って、健康を脅かす多くのリスク因子が満ち溢れていますが、これらのリスク因子からの予防、すなわち自己防御が現代社会に住む私たちにとって大変重要です。

6.からだからのサインを習得する(早期診断:感染症、遺伝病、癌、生活習慣病の予防)
 妊娠可能な女性は排卵後、基礎体温が上昇します。これと同じように、体内に異物が侵入したり、異物が発生したりすると熱が出ます。これらはすべて、からだからのサインを意味していますので、これを早く自覚することによって、その場への対応が可能になります。特に後者の場合に、熱が出たからと言って無理をすると、本来すぐ治るべきものが病気となって長い間寝込むことになります。からだは異常を起こすとすぐに何らかのサインを体に伝えます。そのサインを修得し、早目に対処することによって、自然治癒力が増して、感染症、遺伝病、癌、生活習慣病、ストレス病等の予防につながります。

7.環境の向上を図る(生活・社会環境の改善、ストレス解消、スローライフなど)
 こころとからだの健康は自らが考え保持し、常に最適な状態を維持しなければなりません。すなわち、自分の体は自分で守ることが、今求められています。例えば、アレルギー体質であれば、体質を改善すべく、生活環境・習慣を見直し、自分に合った環境の向上を図ることによって、多くのことが改善されます。そのような努力が日々必要であるという意味です。環境の改善によって、また新たな問題が出てきた場合は、あきらめないで再度検討することが重要で、自分自身が納得するまで、前向きに健康を意識して生活・社会環境の改善に取組むことが大切です。人間環境についても同じで、十分にコミュニケーションを取り、環境の向上を図ることによってストレス解消が果たされます。

8.自然との対話(自然環境との融合、マイナスイオン、アロマテラピー、音楽など)
 日本は木造建築の中に3世代が住むのが通常でしたが、戦後のコンクリート住まいの中に少数住む共稼ぎ夫婦といった核家族や一人住まいが進展し、家族のコミュニケーションも少なくなりました。このような無機的な住まいの中に観葉植物や木製の家具、またはペットとして小鳥や金魚などの生物をコンクリート部屋の中に同居することによって、私たちと同じ遺伝子を共有することができます。そのことは、自然環境との融合を意味し、遺伝子同士の不可思議なコミュニケーションが起こり、気分が楽になったり、ストレスが解消されたりすることがあります。私たち自然界に住むすべての生物はすべて共通の遺伝子を持ってそれぞれの種族が保存されています。したがって、本来自然の中で済むことが一番の快適環境ですが、産業の発展と同時に私たちの身の回りにはプラスチックやコンクリートなどの無生物が生活環境に満ちあふれております。そのような中にあって、ちょっとした自然環境の融合がストレス解消に大きく役立つことがあります。

9.生きがいを見出す、夢を持つ(趣味、家庭、仕事等将来設計、希望、明日に向かって)
 人生50年の時代から80年の時代に突入している。女性でいえば、更年期以降30年以上の平均寿命を要している。少子化、核家族化の今日、幼児期、学童期、思春期、青年期、成人期、中年期、高齢期といった、それぞれのライフステイジにおいて、生きがいや夢を持つことが大切な時代に突入しています。生きがいや夢を持つことによって当面の目標が設定され、明日への希望が出てきます。とくに男性の定年退職後の生き方においては、ボランテア活動などをすることによって、いつも教育(今日行くところがある)と教養(今日用事がある)を心がけ、人のために自分が必要であると思うことと毎日目的を持つことが一番の生きがいとなることでしょう。

10.自信を持つ、前向きである(免疫、こころの機能維持)
 生きがいを見出す、夢を持つとも共通していますが、ここでは、とにかくも一歩前に進むことが大切であることを言っています。前に進めば、必ず結果がついてくる。結果が出れば、自信につながり、次の行動への対応が可能となります。それを繰り返していると、生体の機能は前向となり、自然治癒力も向上し、ストレスもよい方向に働き、免疫力も向上し、こころの機能維持につながります。成功体験がないからと言って、自信を喪失しないで、身近なことから一歩一歩前に踏み出していく力が必要です。そうすれば、いつの日か、自信へとつながり、必ず、成功体験を獲得し、大きく前進する力となります。

11.概日リズムを守る(約1日のリズム、バイオリズム、睡眠リズムなど)
 地球における生命の誕生以来、生命は太陽のリズムに従ったいのちのリズムが獲得されてきました。すなわち、地球には時間や周、月、季節の各リズムがあるように、生体にも同じ時間的な体内リズムがあります。1日のリズム(これをサーカディアンリズム(Circadian rhythm, 概日リズム)という)には食生活(摂食)のリズム、睡眠のリズム、自律神経のリズム、免疫のリズム、内分泌のリズムなどがあり、生体の機能維持にとって重要な働きとなっています。したがって、これらのリズムを知り、生活にメリ・ハリをつけることが大切です。生活のリズムが崩れると生体のリズムも崩れ、何らかの病気となってあらわれてきます。

12.感謝の気持ちを持つ(健康への感謝とこころへの感謝)
 いのちに対する感謝、家族への感謝、仕事に対する感謝、人間関係に関する感謝など人間としての基本を考えることです。この世の中は自分を取り巻く環境が日々変化しています。そんな中で、言葉の使い方が最も大切です。こころは言葉の影響を最も受け易いため、日常的に前向きな、きれいな言葉を使うよう心掛けるようにすれば、一日が大変充実して、楽しくなります。
(近藤雅雄:平成27年8月12日掲載)

食生活と栄養と食育

戦後70年における「住」「食」環境の変化がもたらしたもの
 戦後の経済や生活環境の発展は言うまでもないが、ここではとくに生活の根本的な「住」と「食」との部分での変貌について展望する。
 戦前までの日本は3世代や4世代が同じ屋根または敷地内に住むという大家族社会が当たり前で、「家」という継承の体制が確立されていたが、戦後は、核家族政策によって居住空間が細分化し、アパートやマンションあるいは小スペースの一戸建て住居が乱立し、少数家族あるいは単身世帯が確立、これが現在、定着するようになった。そして、代々引き継がれてきた様々な伝承が時代とともに薄れ、集団から個人の社会へと変化した。
 とくに、食生活の面からみると日本が長い年月を通して形成してきた日本型食生活から、西洋・中国・東南アジアなど世界中の料理、ファーストフードやいわゆる健康食品というものを自由に取捨選択できる豊かな自由型食生活へと変わり、いつでも食べたいときに好きなものが食べられる時代となった。
 このように「食」と「住」という根本的な部分での生活様式を大きく変え、先進国の一員として競争・発展してきたが、逆に、今日では、日本は世界で最も自殺率の高い国となると共に国家や組織、家族など様々な環境に対して無関心な国民が増加している。また、貧富の差が増し、少子・高齢化という少数単位での生活環境がからだとこころをますます脆弱化している。

次代をになう乳幼児・子どもの生活・行動の変化
 近年の核家族・少子化に伴って就労女性が増え、育児休暇などの問題が噴出するようになったが、現実は育児休暇をとることは難しく、そこで託児所や保育園が急増するようになった。しかし、最近の厚生労働省研究班の調査では「保育園で過ごす時間の長さは子どもの発達にほとんど影響せず、家族で食事をしているかどうかが子供の発達を左右する」という結果(とくに乳児期に神経細胞が急激に増殖するため、この時期に正しい栄養や生活環境を獲得しておかないと神経回路の形成に影響が出るといわれる)を報告している。
 子どもたちはといえば、親を含めた社会の期待が学力中心の過保護社会へと変化し、塾通いをする一方で、狭い居住空間に閉じこもってコンピューターゲーム、テレビ、マンガに夢中になり、からだを動かさない生活やレトルト食品、コンビニ食品を摂取するという生活様式が定着し、子どもの知力、体力、運動能力の低下が問題となっている。
 さらに、最近の子どもおよび若者は感動することおよび感動して涙を流すことが少ないと言われている。涙はこころから湧き出てくる体液であり、他の動物では見られない人間としての特有の生理現象である。涙を流すことによって心が洗われるとよく言うが、最近のTVでも現在の人間模様を反映してか、一過性の虚楽を求めるものやお笑いが蔓延し、涙を誘うドラマなどがきらわれ、少なくなっている。
一方、このような現状が生じているにもかかわらず、国家を挙げてIT化が推奨され、幼児教育からコンピュータが導入され、小学生でも携帯電話を持っているように、IT関連ツールは日用必需品となり、「孤立」、「エゴ」が蔓延し、デジタル型からアナログ型に移ろうとしている。読書の方はと言えば既に漫画時代といったアナログ型が定着している。食生活の面では「孤食」が定着しようとしている。
 こうした現実は、とくに次世代をになう子どもたちの体力の低下、書字能力の低下、計算能力の低下、記憶能力の低下、対人技術の発達の遅れなどが起こり、日本および地球の発展・未来において計り知れないほどの損失が生じるという危惧感を抱く。子どもは成長につれて知力や体力も自然とついてくるという錯覚を捨てるべきである。

「食育」の重要性
 そこで、上記した諸問題を真摯に受け止め、改善の方向性を探ると、最も基本的で緊急を要する課題は乳幼児期からの「家族」としての食生活のあり方である。すなわち、育自・共育の精神を持って正しい食生活をすれば健全な家庭生活を送ることができる。しかし、食生活のあり方を一歩間違えれば生活習慣病や摂食障害などの精神障害をまねき、さらにこれが遺伝的体質として次世代へも引き継がれかねない。
 こうした中、食と栄養の専門家である服部幸應氏は「食育」と言う言葉を流行させ、次の日本を作っていくためには「食育」がいかに大切であるかについての教育活動を展開し、2007年食育基本法の制定に貢献した。そこには「食育」に対する強い信念が伺えられる。
 一般に、現代人は、食に対しては好きなものを好きなときに、あるいは今あるもの(または残り)を取り寄せて食べているのが実情であり、食あるいは栄養に対する科学的な知識は殆ど持ち合わせていないのが現状である。私たちは、食を通してからだとこころの成長が図られることを忘れてはならない。団欒のある楽しい食生活やおいしい食べ物を摂取した時の自然と笑みがこぼれる幸福感を忘れてはならない。すなわち、「食育」は「職育」であり、幼児期であれば正しく成長するために、子どもであれば、知識を学習するために、大人であれば、それぞれの任務・責任を遂行するために、つまり生涯についての重要な営みである。

生活にリズムをつける
 例えば、エネルギーの貯蔵組織である脂肪細胞が増殖する時期にはリズムがあり、生涯において3回存在する。最初は、妊娠末期3ヶ月の胎児期で、この時期に母胎内から外界に出るために必要なエネルギーを蓄えることが出来るように脂肪細胞数が増える。2回目は生後1年以内の乳児期で、この時期に誕生と同時に外界において生存、成長していくために必要な脂肪組織を作り上げる。そして第3回目は思春期である。これらの時期に生活のリズムが乱れ、過食すれば当然脂肪細胞の数は増え、肥満となり、生体のリズムは乱れる。一度増殖した脂肪細胞は生涯減少しない。
 私たちの住む地球には時間や周、月、季節の各リズムがあるように、生体にも同じ時間的な体内リズムがある。1日のリズム(これをサーカディアンリズム(概日リズム)という)には食生活(摂食)のリズム、睡眠のリズム、自律神経系のリズム、免疫のリズム、内分泌のリズムなどがあり、生体の機能維持にとって重要な働きとなっている。したがって、これらのリズムを知り、生活にメリ・ハリをつけることが大切である。生活のリズムが崩れると生体のリズムも崩れ、さらに生体恒常性維持機能(これをホメオスターシスという)が崩れ、病気となる。

いまこそ「食生活」の見直し、教育・学習が必要であり、この期を失うと未来への損失は計り知れないものとなる
 生命維持において最も基本的で根本的なものが「食」であり、正しい食生活を維持・継続することによって生体のリズムが構築され、知識や技術の向上が図られる。さらに、健全なからだや精神(感謝)という個人レベルの健康だけでなく、健全な社会が構築され、延いては国家が元気となる。
 まさに、「知識の消化吸収は人生最大の栄養素となり、多くの知恵を生み出す」ように、健全な食生活から得られるものは計り知れない。すなわち、「食生活と栄養」に対する知識を得ることによってからだとこころを大切にし、団欒などから知恵を引き継ぎ (親からの伝承など)、生きる術として大切な善悪の判断、感謝する素直なこころを持つ。さらに、前向きに生活の工夫を行う知恵などを持ち、将来を夢見るこころを持つようになる。そしてこれらの習得が「自由」なこころで「正当性」、「責任」を持って、「平和 (社会)」に貢献できる体力とこころを持つようになる。これがさらに、次の世代に引継がれていく。(近藤雅雄:平成27年8月1日掲載)

社会の変貌と大学における科学教育 

 さて、戦前までの日本は三世代や四世代が同じ屋根または敷地内に住むという大家族社会が当たり前で、「家」という継承の体制が確立されていた。しかし、戦後の都市化および核家族化政策によって居住空間が細分化し、アパートやマンションあるいは小スペースの一戸建て住居が乱立し、少数家族あるいは単身世帯が確立し、一極集中化した結果、代々綿々と受け継がれてきた様々な伝承・文化が時代とともに薄れ、「集団」から「個人」の社会へと変化した。また、住居は植物という有機体を主とした木造建造物から無機物である鉄筋コンクリートに変わり、日本古来の生活環境が大きく変化した。さらに、食生活の面では日本型食生活から、欧米など世界中の料理、ファーストフードやいわゆる健康食品というものを自由に取捨選択できる豊かな自由型食生活へと変わり、いつでも食べたいときに好きなものが食べられる時代へと変化した。
 このように「家族」、「食」と「住」という生活の根源的な部分で大きく変貌し、一見、豊かさを増したように思われるが、逆に、日本は世界で有数の自殺率の高い国となると共に国家や組織、家族など様々な機能的合胞体に対して無関心で脆弱な国民が増加している。また、格差が増し、超少子・高齢社会という少数単位での生活環境がからだと心をさらに脆弱化している。こうした現実は、とくに次世代をになう子供たちの「対人技術の発達の遅れ」など各種脳力の低下が起こり、日本の未来において計り知れないほどの損失が生じるという危惧感を抱く。子供は成長につれて知力や体力も自然とついてくるという錯覚を捨てなければならない。
 一方で、相変わらず先端産業技術開発の進展は著しく、専門とする分子生物学方面を見ても、2003年に既にヒトの全遺伝子情報が解読され、それ以降、ヒトゲノムの塩基配列において、どの多型や変異が病気の発症や体質を決定するかを解明する「ゲノム機能学」や「テーラーメイド医療」、生命をシステムと捉え、それをコンピュータで解析、シミュレーションするという「システムプログラム生物学」、さらにES細胞、iPS細胞の多機能性維持の分子機序の解明や分化誘導の細胞内シグナル伝達系の解析による「再生医学」研究が地球規模で取組まれている。しかし、これら研究技術は悪用すれば瞬時に生命圏、地球の破壊に繋がる。
 大学は教育における最終的な人格形成機関である。教養を基礎に専門性を育てる機関である。しかし、全入時代となった今日、大学の質と量に対するさまざまな改革、グローバル化が行われているが、教養の空洞化が年々大きく拡大し始めているように感じてならない。人間社会と科学技術の発展との間に大きなジェットラグが生じているのが現状である。
 大学で働く教育・研究者は、中途半端な人材育成だけは避けていただきたい。技術はあくまでもツールであって、ことの本質を見誤ることなく、善用することが大切であり、そのためには自然科学と人文科学の融合が必須であり、基本的教養の再構築、温故知新(文化の保存、伝達、創造)、知的コミュニティの強化、文化の多様性の確保が大切である。基本的教養を身につけることは、生きる術として大切な善悪の判断、感謝し奉仕するといった素直な心、さらに、前向きに生活技術の工夫を行う知恵と将来を夢見る心を持つことであり、「自由」な心で「正当性」、「責任」を持って、「平和 (社会)」に貢献できる体力と心を持つ大学生の育成を心がけてほしい。(近藤雅雄:平成27年8月1日掲載)

ポルフィリン症専門外来開設への思い

 平成27年6月26日(金)から毎月第4金曜日に島根県済生会江津総合病院の堀江裕(ほりえゆたか)名誉院長の高い志のもと、浜松町ビルディング(東芝ビルディング)1階の「芝浦スリーワンクリニック(望月吉彦院長)」内に日本で初めてポルフィリン症専門外来が開設されました。

堀江先生に感謝
 堀江先生とは「ポルフィリン症」という疾患を通して診断・治療などの共同研究だけでなく、学術研究会や患者会(さくら友の会)の創設・運営など、30年以上ご一緒させていただいている友人です。ポルフィリン症の指定難病や学術会議のシンポジウム開催などでよく国会議員の先生方への陳情にもご一緒させていただきました。
 今回はポルフィリン症の専門外来開設の準備および診療にご一緒させていただきました。堀江先生はポルフィリン症の名医としての知名度が高く、患者さんは先生の診療をぜひ受けたいと言って日本全国から集まって来ます。先生のお人柄なども重なって、皆様感謝の意を表して先生の診療を受けています。
 そのような中で、堀江先生の隣でポルフィリン症乃至その疑いのある患者さんの診断のお手伝いをさせていただいています。私にとって貴重な経験で、堀江先生とご一緒に、同じ目標をもってボランテアができることを大変光栄に思っています。

ポルフィリン症専門外来の診療にご一緒させていただいて
 患者さんはポルフィリン症の疑いなどとして不安そうにポルフィリンの検査データを持って診察室に入り、その場で堀江先生と共に検査データ並びに採取した尿や血液の中にポルフィリンが含まれているかどうかの蛍光判定等のお手伝いをさせていただいています。
 そこで感じることは、患者さんにとっては難病であるポルフィリン症の疑いと診断されて、今後どうして生きていけばよいのかなどといった不安、小さなお子様であれば、その子の将来に対する不安、育児の不安など、大変なストレスを抱えてこられる方がほとんどですが、堀江先生の的確な判断によって、ポルフィリン症の疑いと他院で言われてきた患者さん、あるいはお子様がその場にてポルフィリン症ではないと診断された時の感激に何度か遭遇致しました。また、ポルフィリン症と診断された方も、日常の生活習慣などの指導など的確な判断を下され、患者さんからは堀江先生から生きる力を頂いたと感謝し、診察室を後にします。

患者さんの殆どが誤診
 ポルフィリン症は皮膚型と急性型に分類されますが、どちらも非常に多彩な症状を示す疾患で、多くの医師が一つや二つの症状がポルフィリン症に類似している、あるいは尿または血液中のポルフィリンの数値が多少高い。と言ってポルフィリン症の疑いがある、またはポルフィリン症であるという診断が下されます。しかし、そのほとんど(90%以上)はポルフィリン症ではありません。しかし、ポルフィリン症を疑ってみることはポルフィリン症の早期診断に繋がります。早期診断が下されば、その後の対応によって健常者と同様の日常生活を送れる場合が多いことが分かっています。ポルフィリン症は診察する医師が正しい知識を持っていれば、確定診断にこぎつけることは可能であり、正しい指導によって患者さんのQOLが著しく高まることは確かです。

決定的な誤診例
 20年位前に、山口県で急性ポルフィリン症と診断された思春期の娘さんが、15年後、結婚して30歳となって子どもがほしいからと言って相談に来られたことがあります。そこで、検査した結果、ポルフィリン症ではありませんでした。明らかな誤診でした。その人にとって見れば、それまでの15年間、医師の診断・治療・指導を忠実に守り、大変な思いをして生活されて来たことを知って、医師の診断に対する責任を痛切に考えたことがあります。また、医師の指導が十分でなく、死の転帰をされた患者さんなど、誤診並びに不適切な診察を多く見てきております。

診療拒否例
 通常、ポルフィリン症の場合はその多彩な症状から確定診断されるのに長くかかることは多く知られています。さらに、患者さんのかかりつけの病院または大病院にはポルフィリン症を知る人はいないということで、診療を拒否される場合が多く存在します。さらに、ポルフィリン症の患者さんに対して、厄介な病気であるということで、あからさまに不愉快な態度をとり、病院から追い出そうとする医師がいることは真に残念ですが、事実です。医師はどのような病気の患者さんであろうと共に寄り添う姿勢が大切です。

今後の課題~医師へのお願いと後継者
 現在、ポルフィリン症の専門外来を通して、ポルフィリン症という稀少疾患について正しく診察して頂くよう、医師への啓発を含め、教育・研究活動を続けています。しかし、堀江先生も私も定年を迎え、高齢期になっていることから、今一番急ぐことは、ポルフィリン症研究の後継者を育てることです。
 今回のポルフィリン症専門外来の開設の大きな目的の一つは、指定難病であるポルフィリン症に対する研究者並びに医師の後継者が出てくることです。多くの医師に、堀江先生の活動に注目して頂き、ポルフィリン症に対する興味を持っていただきたいと願っています。この専門外来がいつまで続くか未定ですが、この専門外来の意義を理解し、稀少疾患を抱えた患者さんへの治療に対する高い志を持った医師が沢山出現してくることを切に願っています。
(近藤雅雄:平成27年7月29日掲載、新聞記事は下記のpdfを参照)

毎日新聞記事2015.7.24朝刊

 

日本の食文化の変遷と食育~日本型食生活による健康寿命の延伸

はじめに
 連綿と引き継がれてきた日本の伝統的な食文化が戦後の約70年間で劇的に欧米化、依存化されるようになった。この結果は中高年齢者の免疫能の低下、がん、生活習慣病の発症および次世代をになう子どもたちの学習・記憶・体力の低下、対人技術の発達障害や摂食障害などといった心身への影響だけでなく、食糧自給率の低下、食品に関する偽装問題、薬物混入などといった食の安全・安心の問題まで発展し、国民として、日本国家として新たな様々な問題が出現してきているのが現状である。
 ここでは、科学的根拠を基に日本人としての食生活および食育のあり方について考える。

1.食文化の変遷と食育の必要性
 現在の日本の食生活は、経済成長と共にこれまでの日本型から欧米など世界中の料理、ファーストフードやいわゆる健康食品というものを自由に取捨選択し、食べたいときに好きなものが食べられる豊かな自由型(洋風型)へと変わった。その反面、核家族化の定着と共に食糧自給率の低下、「こ食」(孤食、小食、固食、粉食、個食、濃食、戸食など)が習慣化し、さまざまな問題を生じさせている。これは、とくに次代をになう子どもたちの学習・記憶・体力の低下、免疫能の低下、対人技術の発達障害などと言った心身の問題を含み、また、将来、これまでに日本文化を通して獲得されてきた日本人体質に変化が生じ、生活習慣病や摂食障害などを誘発し、さらに、これが遺伝的体質として次世代へも引継がれかねない。
 現代人は、好きなものを好きなときに、あるいは今あるものを寄せて食べ、食あるいは栄養に関する科学的な知識は殆ど持ち合わせていないのが現状である。そこで、これら諸問題の改善の方向性を探ると、最も根本的で緊急を要する課題が乳幼児期からの「食」のあり方である。食を通してからだと心の成長・健康が図られ、貧しい食事であっても団欒のある楽しい食生活や四季の旬のおいしい物を食べた時の自然と笑みがこぼれる幸福感・心のゆとりが得られ、そこからさまざまな知恵が伝承される。すなわち、「食育」は「職育」であり、各々のlife stageにおいて知力、体力、抵抗力、作業能率、正しい判断力、感性を育むための生涯に亘っての重要な営みであり、「いまこそ食育」が必要である。
 一方、政府は国民が生涯にわたって健全な心身を培い、豊かな人間性を育む事ができるよう、食育を総合的かつ計画的に推進することを目的として、平成17年7月15日に食育基本法を施行し、国民運動として、家庭における食育、学校における食育、地域における食生活の改善のための取組および食育推進運動を展開している。

2.日本型食生活の解析と健康寿命の延伸
 日本人の免疫能はこの数十年間で低下してきている。免疫の中心である胸腺は酸化ストレスや加齢によって萎縮し、免疫能が低下する。これが、近年の生活習慣病、がんや自己免疫性疾患、感染症などといった様々な疾病を発症する原因の一つとして広く指摘されている。その主たるものの原因が前述した戦後の食生活の劇的な変化が挙げられる。すなわち、私たちの住む地球には時間的リズムがあるように、生体にも同じ時間的な体内リズムがある。一日のリズム(概日リズム)には睡眠のリズム、自律神経のリズム、免疫のリズム、内分泌のリズム、摂食(食生活)のリズムなどがあり、日本人が長い歴史を通して獲得してきたさまざまな体内リズムの中心となっているのが「食」であり、生体の機能維持にとって最も重要な働きとなっている。近年、この「食」を中心とした生活習慣(リズム)の変化が生体のリズムを変化させ、肥満をはじめとした各種生活習慣病が起こることが分かってきた。したがって、これらの疾病は「食源病」といっても過言ではない。
 そこで、われわれは、国民栄養調査結果から日本人食生活の実態を解析した結果、免疫能に重要な影響を及ぼすタンパクの摂取量は男・女共に、成人後大きな変化が認められなかったが、タンパク質をどの様な食品から摂取しているかを年齢別にみると、40歳代以降から肉類と魚類の摂取量が逆転するという特徴的な食事摂取パターンを見出した。また、このパターンの変化が起こることで、高齢者のタンパク質摂取が保持できていることがアメリカ人の食生活パターンと比べることによって明らかになった。これは日本人がアメリカ人よりも高い平均寿命を有していることの一つの原因と思われる。
 しかし、免疫能および抗酸化能に影響を及ぼす微量元素量は加齢に伴って血中濃度が減少する傾向を見出し、これら元素の変動が不定愁訴などの各種自覚症状や血圧などの循環機能と関係していることがわかった。したがって、高齢者では抗酸化・免疫能を高める微量元素やビタミン、フラボノイドなどを多く含む豆類、野菜、果物、魚介類などを積極的に摂取することによって、ますます健康寿命の延伸が可能であると思われる。
 一方、現代の子どもが将来高齢者となった場合に、現在の高齢者と同じような食事の摂取パターンを取るかについては疑問である。すなわち、味覚や嗜好は乳幼児期に形成されるためである。そこで、とくに、安全な食物を選別できる能力、食物の大切さを知る能力等を小児期に育てることが重要である。

3.免疫能を高める食材の選別
 酸化ストレスからの防御を目的として、食品中に含まれるミネラルやビタミン、フラボノイド等の抗酸化成分を胸腺(免疫)細胞に投与し、活性酸素の消去能について検討したところ、細胞の内外での抗酸化能力が異なっていることを見出した。このことは、抗酸化成分の効果的な摂取法として、細胞内外にて作用を発揮する成分を摂取することの方が、細胞を酸化ストレスから防御するにはより有効であることを示す。事実、細胞内外にて抗酸化能を発揮するフラボノイド(ルテオリン)を多く含む野菜(ピーマン)を高齢者に摂取させると、摂取前と比較して抗酸化能及び免疫能は有意に上昇することが分かった。
 以上の結果から、日本人の高齢者はタンパク質においては十分に摂取できていることから、これらの食生活に加えて、銅、亜鉛、セレン等の抗酸化酵素関連微量元素や細胞の内外にて抗酸化能力を発現しうる抗酸化成分を多く含む食品群(主に豆類、野菜、果物、魚介類)を十分に摂取することによって抗酸化能力を高め、免疫能を保持し、QOLを高める。このことは若年者においてもまったく同じことが言え、免疫能の健全化のためにも「健全な日本型食生活」が重要であることを示唆している。

おわりに
 この60年間で日本社会のあり様が著しく変貌し、今後もさらに急速に変化していくものと思われる。このような時世において、健康な生命を維持する上で最も重要なものが「食のあり方」である、正しい「食生活」を維持・継続することによって生体のリズムが構築され、知識や技術の向上が図られる。さらに、健全なからだや精神(感謝)という個人レベルの健康だけでなく、健全な社会が構築され、延いては国家が元気となる。また、「食」に対する知識を得ることによってからだと心を大切にし、生きる術として大切な善悪の判断、感謝し奉仕するといった素直な心を持つ。さらに、前向きに生活の工夫を行う知恵などを持ち、将来を夢見る心を持つようになる。そしてこれらの習得が「自由」な心で「正当性」、「責任」を持って、「平和 (社会)」に貢献できる体力と心を持つようになる。これが、次の世代に引継がれる。
 「食」は国家の基盤、文化や教育の根幹である。これらの根本である「食育基本法」が誕生してからすでに10年を経たが、未だに家庭、地域、学校、行政、企業、等々の連携による社会全体での活力ある国民総運動が期待されている。
(近藤雅雄、日本の食文化と食育~日本型食生活と健康寿命の延伸、平成27年7月21日掲載)

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