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こころとからだの健康(13)目の病気の予防・対策に必要な栄養素と食品

 近年、スマホやコンピュータ、大画面テレビなどの急速な発展による生活環境の変化に伴って眼精疲労・ドライアイを自覚する人が増加すると共に白内障、緑内障、加齢黄斑変性などの失明に至る眼病が注目されるようになった。これら背景にはスマホやコンピュータの発展以外に高齢人口の増加と日常的なストレス、偏った食事、無理なダイエットなどによるビタミンやミネラル類の過不足など、栄養障害が考えられることから目の病気も生活習慣に関わる疾病と言える。
 目はこころとからだの健康維持に重要であり、目の病気は様々な行動の妨げとなるなど、日常生活への負の影響は計り知れない。疲れ目やかすみ目で悩んでいる人、スマホやパソコンなどで目を四六時中酷使している人や自動車やトラックのドライバー、飛行機のパイロットなどは一度自分の食生活を見直すことが大切である。普段の食事を意識して摂取する習慣を身に付けたい。食事で摂取できない時は視力回復のサプリメントや緑黄色野菜、果物などを積極的に摂りいれることも考えたい。
 世界の中でも日本人の視力低下は著しく、最近の調査では約83%の人がメガネかコンタクトを使用し、近視の低年齢化が問題となっている。目に関することわざは多数あるが、その中で「目は心の鏡」「目は人の眼(まなこ)」と言われるように、目はこころとからだの入力部位であり、こころとからだを映し出している。目は生体すべての感覚情報の約80%を占めると言われ、生体に入る情報は目に依存していると言える。
 人間において、視力が形成されるのは生まれてから後天的に徐々に発達し、5~7歳位までに完成すると言われている。したがって、この期間における目のケアーにはとくに十分に注意したい。また、目は12~13歳頃から老化が始まると言われている。生涯において目を大切にするこころを持って、目の健康に気を配り、食環境と同時にストレス解消の方法を自分なりに考え、美しい目を保持したいものである。
 本稿では目の病気の予防・対策に必要な栄養素・食品について調査を行った。論文の内容はⅠ.視覚と目の病気(1.視覚の性質、2.目の病気、3.失明の原因となる疾患)、Ⅱ.眼病の予防に良いとされる栄養素と食品(1.眼精疲労・ドライアイに良い栄養素、2.近視抑制に良い栄養素、3.白内障、加齢黄斑変性などに良い栄養素、4.抗酸化物質の機能、5.ブルーベリーは目が良くなる食べ物の代表)、Ⅲ.眼に良い栄養素(1.抗酸化物質、2.ビタミン類、3.ミネラル類、その他)からなる。
 内容詳細は以下のpdfを参照されたい。(近藤雅雄:平成28年2月8日掲載)
こころとからだの健康(13)眼の病気の予防・対策に必要な栄養素{pdf}

ビルベリー

 ツツジ科スノキ属の20〜40cm程の高さの低木に実が生るブルーベリーの一種で、ブルーベリー界の王様と呼ばれている。
 ビルベリーの果実はアントシアニン類などを豊富に含むため、「眼精疲労や近視によい」などと言われているが、ヒトでの有効性・安全性についての信頼できる十分なデータがない。ビルベリーの葉を経口で大量摂取すると死亡する可能性があると言われているので、葉の摂取は避ける。

ブルーベリー

 コケモモ属のベリー類の総称で、食用として日本、オーストラリア、ニュージーランドなど各地で栽培されている。果実は北アメリカでは古くから食用されてきたが、20世紀に入り果樹としての品種改良が進み多くの品種が作られ、ほとんどの品種はアメリカ産である。
 ブルーベリーやビルベリーを使用した健康食品やサプリメントが「目の網膜に良い」と視力改善効果を謳い、広く市販されている。しかし、(独)国立健康・栄養研究所の論文調査や海外での研究ではブルーベリーやビルベリーおよびそれらに含まれるアントシアニンによる視力改善効果は認められておらず、目に良いとして宣伝される科学的根拠はない。また、血管を丈夫にする、糖尿病・脳卒中に有効とされるが、ヒトでの有効性・安全性については信頼できるデータが見当たらない。妊娠中・授乳中の安全性については十分な情報がないため、食事以外での過剰摂取は避けた方がよい。

ほうれん草

 マグネシウムが豊富で、体内の血流を促進し、脳にも十分な血液が届く。また、ビタミンA、葉酸、ルテイン、鉄分を多く含み貧血予防に繋がる。しかし、シュウ酸が多く含まれているため、多量に摂取し続けるとカルシウムの吸収が阻害され、また、体内ではカルシウムと結合してシュウ酸カルシウム結石を作り腎臓や尿路障害の原因となることがある。

ビフィズス菌

 母乳栄養児の糞便に多く存在する。約30菌種に分類されているが、ヒトの腸内からはおよそ10種類のビフィズス菌が発見され、その種類は個人によって異なる。主に大腸に存在し、糖から酢酸、乳酸を生産する。生産された乳酸や酢酸が腸内のpH値を下げ、とくに酢酸には強力な殺菌作用があり、有害菌の活性を抑制して腐敗物質など有害物質の生成を抑える。
 ビフィズス菌はニコチン酸、葉酸などのビタミンB群やビタミンKなどを作ることが知られ、さらに、若い女性、老人、各種の疾患由来の便秘に対して改善する効果が見いだされている。
 また、インフルエンザなどに対する感染防御、抗がん、免疫力増強、血中脂質改善などの各作用が研究されている。

分岐鎖アミノ酸(BCAA、バリン・ロイシン・イソロシン)

 体内では生産されない必須アミノ酸。BCAAが十分にあると脳内の疲労物質セロトニンの合成が押さえられ、中枢性疲労が軽減される。
 筋タンパク質中の必須アミノ酸の約35~40%がBCAAで、筋肉のタンパク質分解を抑制するといわれている。哺乳類にとって必要とされるアミノ酸の40%を占め、活動エネルギー源となることから、運動時に摂取すると良いと考えられている。ただし、アミノ酸の代謝にはビタミンB群が必須であり、同時摂取しないと十分な効果は発揮できない。
 臨床では火傷の治療、肝硬変、肝性脳症などの治療に用いられている。大豆・チーズ・マグロの赤身などに多く含まれているほか、BCAAを含むサプリメントも市販されている。

フェルラ酸

 米ぬかから精製されたフェルラ酸がアルツハイマー型認知症に有効との論文がいくつか報告されている。ポリフェノールの一種で、抗酸化作用がある。アルツハイマー病の原因となるアミロイドβの凝集を防ぎ、アルツハイマー病の治療や予防に効果があるという。

ホスファチジルセリン

 大豆由来レシチンから生産される。脳機能改善、アルツハイマー病の改善と進行遅延作用、ストレス緩和作用、脳内グルコース代謝の活性化、アセチルコリン分泌促進、イオンポンプの活性化、神経細胞の樹状突起増加などの各作用が報告されているが、そのメカニズムは明らかでない。
 科学的根拠として、痴呆症、記憶障害、アルツハイマー病、運動ストレス、心理的ストレス、認知症の患者に対する二重盲検試験があり、有意な改善効果が報告されている。

ポリフェノール

 分子内に複数のフェノール性ヒドロキシ基(ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香環に結合したヒドロキシ基(OH))を持つ植物成分の総称。ほとんどの植物に含有され、その数は5,000種以上に及ぶ。光合成によってできる植物の色素や苦味の成分であり、アントシアン、タンニンやカテキンなどのタンニン類、ケルセチンやイソフラボンなどのフラボノイド類からなる。フラボノイドを豊富に含んでいる食品としてはチョコレート、ココア、緑茶、紅茶、ワインなどが知られている。
 ポリフェノールは抗酸化作用により活性酸素を除去し、動脈硬化や心臓病の予防、免疫力の増強、抗アレルギー作用、血管の保護、発がん物質の活性化抑制、老化抑制などの効果があると言われている。

フラボノイド

 植物に広く存在する色素成分でクロロフィルやカロチノイドと並ぶ植物色素の代表的な総称。
植物の花、葉、茎、果実などに、黄色または橙色を与えている。広義には赤、紫、青を発するアントシアニンもフラボノイドに分類される。特殊なものを除き植物の色素は、カロチノイドかフラボノイドのどちらかに属する。
 フラボノイドを多量に含む赤ワインや茶類の機能性が注目されている。ルチン、ヘスぺリジン、エリオシトルリンなど称してビタミンPと呼ぶことがある。
 生理的作用としては強い抗酸化機能を有し、同時に抗酸化物質であるビタミンC、ビタミンE、クエン酸と使用すると抗酸化作用の相乗効果を示す。抗変異原性、発がん抑制、抗菌、抗ウイルス、抗アレルギー、抗血液凝固、血圧降下、消臭作用、血管保護および血流増加、動脈硬化予防、老化抑制作用など多様な作用が推測されている。

プルーンエキス食品

 プルーンは西洋スモモともいわれ、西アジア・コーカサス地方原産のバラ科サクラ属落葉樹の実である。ビタミンAとB1が多く、カリウム,鉄、リン、カルシウムおよびマグネシウムなどのミネラル類を豊富に含む。これら栄養素の生理作用のみならず、プルーンには水溶性の食物繊維であるペクチンが多く、ヨーロッパでは古くから便秘薬代わりに摂取され、整腸・緩下作用が知られている。

ポリフェノール

 大豆のイソフラボン、柿のタンニン、茶のカテキン、玉ネギのケルセチン、ブルーベリーのアントシアニン、ココアのカカオマスポリフェノールなど、分子内にフェノール水酸基をもつ化合物の総称で、その種類は5000種にものぼる。糖分の一部が変化したもので、植物の葉や花、樹皮などに含まれている。
 ポリフェノールの主なはたらきは強い抗酸化作用であり、動脈硬化、がんの予防・改善、血糖値低下、虫歯菌の増殖抑制などの作用があるといわれる。

βカロテン

 野菜、果物、海藻などに色素として含まれるカルチノイドの一つである。
 カロチノイドにはα-、β-、γ-カロテン、リコピンなどの種類があるが、いずれも体内でビタミンAに変化し、免疫力の増加、皮膚や粘膜の増強、老化防止、がん、動脈硬化、心臓病,眼病,風邪などの予防に効果があるといわれている。

フラボノイド

 2個のベンゼン環を3個の炭素原子で結びつけたジフェニルプロパノイド(C6-C3-C6)構造をもつ化合物の総称。C3部分が酸素を介して閉環したクロマン骨格(フラバンの構造式で四角で囲んだ部分)をもつ三環性のものがよく知られ、植物界に広く存在し、食品の色素、苦味、甘み成分になるほか、抗酸化性、エストロゲン作用と抗発がん性と心保護剤としての可能性が提唱されている。植物体内での合成はマロニルCoAとヒドロキシケイヒ酸CoAからはじまり、カルコンで閉環してフラボン構造が出来た後、側鎖にーOH基、-OCH3基などの修飾を受けたり、糖を付けたりして多数のフラボノイドに分かれる。
 現在では5,000種類のフラボノイドが記載され、6つの主要な亜群が知られ、フラボン(アピゲニン、ルテオリンなど)、フラボノール(ケルセチン、ミリセチンなど)、フラバン(ナリンゲニン、ヘスペリジンなど)、カテキン類ナイシフラバノール(エピカテキン、ガロカテキンなど)、アントシアニジン(シアニジン、ペルアルゴニジンなど)、イソフラボン(ゲニステイン、ダイゼインなど)である。これらのフェノール構造を持つ一連の天然物フラボノイドは果物、野菜、穀物、樹脂、根、茎、花、お茶、ワインなどに含まれている。この多くは花、果物、葉の魅力的な色素・味を提供している。
 効用としては抗酸化作用、発がん抑制、動脈硬化予防、血管保護および血流増加、老化抑制など多彩な作用が推測されている。

老化とフラボノイド
 老化の進行を早める後天的因子として、ストレス、紫外線、放射線、温度、栄養、煙草、酒などがあるが、これらの因子による原因として、スーパーオキシド、O2-などの活性酸素が脂質を中心とする細胞成分を破壊・異常化し、しかも連続的・不可逆的に拡大していく活性酸素、フリーラジカルによる作用が注目されている。このような細胞成分の過酸化連鎖を防ぐために、体内ではビタミンC、E、SOD、NADPH、GSH系などの抗酸化機能が働いているが、フラボノイド類の活性酸素消去能はより直接的、強力で、これを外部から投与することによって老化の防止に役立つと思われる。

ビタミンU

 正式名は塩化メチルメチオニンスルホニウムといい、キャベツから見出されたため「キャベジン」とも呼ばれ、生体内で合成されるビタミン様物質である。主な作用としては、胃潰瘍や十二指腸潰瘍をはじめ、胃酸過多による胸のむかつき、食欲不振など、胃のトラブルを解消するといわれている。キャベツのほかにパセリ、レタス、セロリ、アスパラガス、牛乳、卵、青海苔などに含まれている。

ヘム鉄

 鉄は体内で鉄を吸収するタンパク質であるフェリチン(貯蔵鉄)、鉄を輸送するタンパク質のトランスフェリン(輸送鉄)、そして様々な生理作用を持つヘムタンパク質(機能鉄)に分かれる。
ヘムは、プロトポルフィリンという赤い色素に2価鉄が結合したものです。鉄は、体内での需要と供給のバランスから、成長期や運動、女性の生理、妊娠などによって鉄分が不足すると、ヘムの生産量が減少しますので、ヘムタンパク質の機能が発揮できず、貧血、息切れ、疲れやすいなどといった様々な症状が出やすくなります。
 そこで、食品から鉄分を摂取する際に鉄の吸収率が大きな問題となって、鉄の吸収率の高いヘム(10~30%吸収;肉類、レバーなどの動物性食品に多い)を「ヘム鉄」と呼び、吸収があまりよくない鉄分(1~5%吸収;野菜、穀類などの植物性食品に多い)を「非ヘム鉄」と分けるようになりました。ヘム鉄は非ヘム鉄と異なって、穀類に含まれるフィチン酸、お茶に含まれるタンニン、あるいは食物繊維などによる吸収阻害がありません。
 ヘム鉄を多く含んでいる食品の摂取は鉄分補給に効果的ですし、また、消費者庁から「特定保健用食品」として許可されたヘム鉄飲料などが市販されています。(近藤雅雄:ヘム鉄、2015年7月9日掲載)