栄養学と食育」カテゴリーアーカイブ

『栄養学と食育』に関する記事一覧

健康を体感できる完全栄養食品「サルバチア ホワイト チアシード」

1週間ほどで発芽

 チアシードは中南米原産サルビア科の植物。現地では古来から「生命維持にはチアシードと水があれば足りる」と言われ、他の穀物に混ぜたり飲み水に入れたりして摂取してきた。粒の大きさはゴマよりも小さく、いちごの表面の粒位で、白と黒がある。白い粒の方が栄養学的効果は高く、これを品種改良したスーパーチアシードが「サルバチア」。水を含んだ時にもチアシードは約10倍、サルバチアは14倍と膨む。

 サルバチアの主な栄養成分は、脂肪33%(オメガ3系脂肪酸は総脂肪の59%)、炭水化物36%(食物繊維81%)、タンパク質20%、%e3%83%91%e3%83%b3%e3%83%95%e3%82%b5%e3%83%ab%e3%83%90%e3%83%81%e3%82%a2%e8%a1%a8%e9%9d%a2ビタミン・ミネラル11%を含む完全栄養食品です。ダイエット時の食事や運動時の栄養補給、生活習慣病予防やアンチエイジングなど多方面で健康保持を目的として注目されている。

 生体の機能保持に不可欠なオメガ3系脂肪酸(DHAやEPAなど)はサーモンの8倍以上、葉酸はほうれん草の5倍、マグネシウムはブロッコリーの5倍、ミネラルは牛乳の6倍、抗酸化物質はブルーベリーよりも多く、タンパク質も大豆より多いことが報告されている。これだけの栄養素を一度にとることができる完全栄養食品はなかなかなく、男女・年齢問わず、日常の食生活に取り入れたい食品です。
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 サルバチアは無味無臭でクセがなく、日常の食生活に手軽に取り入れられる。食べ方の用途は多様で、水につけておくと水分を吸収してゼリー状になり、そのまま食しても、ごはん、みそ汁、麺類、ヨーグルト、スムージー、スープ、サラダなどに混ぜてもよく、その用途は大きく広がり、食事が楽しくなります。まさしく、食育健康食品としてお勧めです。

 テイクオン株式会社で販売しています。ホームページはhttp://www.takeon.cc/

(近藤雅雄:平成28年11月22日掲載)

必須微量元素モリブデン(Mo)の生体機能に関する調査研究

 激しいスポーツ活動によって男女ともに血中のモリブデン濃度が低下することを報告した(2016年8月25日掲載)。すなわち、モリブデンの血中濃度の平均値は男子大学駅伝選手群が0.00002ppm(対照群0.047)、バスケットボール高校生女子選手群が0.009ppm(対照群0.077)と両者ともに著明に減少していることが分かった。
 そこで、モリブデンに関する健康影響について調査を行った。調査は2003年にミネラルの食事摂取基準を作成する際、1980年から2003年7月の23年間に学術誌に掲載された原著論文を、 PubMedを用いて系統的に収集した。また、1987年から2003年7月までに医学中央雑誌に掲載されたタイトルから国内で報告された学術論文を収集した。
 その結果、「モリブデン」としてPubMedからの調査件数5126件、このうち、人に関するもの889件のタイトルおよび抄録から461件の原著を抽出した。また、医学中央雑誌調査件数人に関するもの42件のタイトルおよび抄録から15件の原著を抽出した。
 これらの原著論文を読み込んだ結果、激しい運動が血中モリブデン濃度を著明に減少させる機序並びにその健康影響については解明できなかったが、貧血や疲労によって低下するという。なお、2004年以降については未調査である。
 本論文(PDF)ではモリブデンの発見の歴史、物理的・化学的性質、用途、環境・植物・人体中のモリブデン、測定法、摂取量、必要量、生理作用、モリブデン依存性酵素(キサンチンオキシダーゼ、アルデヒドオキシダーゼ、サルファイトオキシダーゼ)、過剰症、欠乏症、食事摂取基準など、2003年までの情報について総説した。(近藤雅雄:平成28年10月24日掲載)

PDF必須元素モリブデンの生体機能に関する調査研究

「コンパクト応用栄養学」第2版出版の紹介

 株式会社朝倉書店より、ヒトの生涯に関わる応用栄養学領域のエッセンスをわかりやすくまとめ,「日本人の食事摂取基準(2015年版)」および「管理栄養士国家試験出題基準(ガイドライン)」に準拠した「コンパクト応用栄養学」第2版が出版されました.B5版,158ページ.

目次
1 栄養ケア・マネジメント
 A 栄養ケア・マネジメントの概念
 B 栄養スクリーニング
 C 栄養アセスメント
 D 栄養ケア計画の実施,モニタリング,評価,フィードバック
2 食事摂取基準の基礎的理解
 A 食事摂取基準の意義
 B 食事摂取基準策定の基礎理論
 C 食事摂取基準活用の基礎理論応用栄養学28
 D エネルギー・栄養素別食事摂取基準
3 成長,発達,加齢(老化)
 A 成長,発達,加齢の概念
 B 成長,発達,加齢に伴う身体的・精神的変化と栄養
 C 加齢(老化)に伴う身体的・精神的変化と栄養
4 妊娠期,授乳期
 A 妊娠期・授乳期の生理的特徴
 B 妊娠期・授乳期の栄養アセスメントと栄養ケア
5 新生児期,乳児期
 A 新生児期・乳児期の生理的特徴
 B 新生児期・乳児期の栄養アセスメントと栄養ケア
6 成長期(幼児期,学童期,思春期)
 A 幼児期・学童期・思春期の生理的特徴
 B 幼児期・学童期・思春期の栄養アセスメントと栄養ケア
7 成人期
 A 成人期・更年期の生理的特徴
 B 成人期・更年期の栄養アセスメントと栄養ケア
8 高齢期
 A 高齢期の生理的特徴
 B 高齢期の栄養アセスメントと栄養ケア
9 運動・スポーツと栄養
 A 運動時の生理的特徴とエネルギー代謝
 B 運動と栄養ケア
10 環境と栄養
 A ストレスと栄養ケア
 B 特殊環境と栄養ケア
付録(用語解説,参考資料:食事摂取基準,食育基本法,食生活指針,食事バランスガイド)

序論
 朝倉書店から出版されている「コンパクト栄養学」シリーズ、『コンパクト公衆栄養学』『コンパクト応用栄養学』『コンパクト基礎栄養学』『コンパクト臨床栄養学』『コンパクト食品学』は他社から発行されている多くの栄養学シリーズとは異なって,病気の予防,健康に関する正しい知識と技術を普及・啓発し,地域,社会集団の栄養改善さらには健康の維持増進を図る学問としての幅広い領域をわかりやすくコンパクトにまとめた教科書です.
 今回、第2版の出版となった応用栄養学はかつては栄養学の一部として扱われてきましたが,その後,特殊栄養学,栄養学各論と名称が変わり,応用栄養学へと進化しました.内容は成長・発達・加齢といった人の生涯における栄養管理として,新生児期から高齢期までの各ライフステージ別に,また妊娠期,授乳期,更年期・運動・スポーツ,環境と栄養について項目ごとにまとめました.
 本書は,2015(平成27)年2月16日に厚生労働省ガイドライン改定検討会より提出された新ガイドラインおよび2014(平成26)年3月28日に公表された「日本人の食事摂取基準(2015年版)」に従い,第一線にて活躍している教育・研究者によって執筆・改訂を行ったものです.管理栄養士等養成校の学生は勿論のこと,保健・医療・福祉などに関わる領域を勉強している学生,一般社会人にもわかりやすく「コンパクト」にまとめています.本書をしっかりと学習し,社会に貢献して行って欲しいと願っています.(近藤雅雄:平成28年4月2日掲載)

日本人の食生活解析

はじめに
 日本の食生活は経済成長と共にこれまでの米を中心とした日本型食生活から欧米など世界中の料理、ファーストフードや健康食品というものを自由に取捨選択し、食べたいときに好きなものが食べられる豊かな自由型へと変った。このような豊食(飽食、崩食)の時代になると共に、アレルギー、がん、生活習慣病、認知症などの増加といった新たな課題が出現してきた。
本稿では、最新の主な食生活事情について分析・考察を行った。

1.食生活の変遷と食のあり方
 現代人は、食あるいは栄養に関する科学的な知識は殆ど持ち合わせることなく、好きなものを好きなときに好きなだけ、あるいは今あるものを寄せて食べる傾向が増えている。食生活はと言えば少子・高齢・核家族化の進展と共に「こ食」(孤食、小食、固食、個食、粉食、濃食、戸食など)が習慣化している。このような生活習慣は成人並びに次代を担う子どもたちの学習・記憶・体力の低下、免疫能の低下、対人技術の発達障害などと言った心身の問題や生活習慣病、摂食障害などを誘発し、さらに、これが体質として次代へも引継がれかねない。これらの現状を鑑み、最も重要な課題が乳幼児期から生涯にわたっての「食」のあり方である。

2.多くの病気が食源病
 日本人の免疫能はこの数十年間で低下してきている。免疫の中心である胸腺は酸化ストレスや加齢によって萎縮し、免疫能が低下する。これが、近年の生活習慣病、がんや自己免疫性疾患、感染症などといった様々な病気の発症要因の一つとして広く指摘されている。その主たる原因が前述した戦後の食生活の劇的な変化が挙げられる。すなわち、私たちの住む地球には時間的リズムがあるように、生体にも同じ時間のリズムがある。一日のリズム(概日リズム)には生命を維持するのに重要な働きとなる睡眠、自律神経、免疫、内分泌、摂食(食生活)などの各リズムがある。これらリズムの中心となっているのが「食」である。近年、この「食」を中心とした生活習慣の変化が生体のリズムを変え、肥満、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病、がんなどの生活習慣病が起こることが分かってきた。その原因の主なものとして、食塩と脂肪の摂取過剰と食物繊維、ミネラル類の摂取不足が挙げられる。したがって、これらの疾病は食が原因で発症する「食源病」といっても過言ではない。

3.日本人の食生活の実態と次代を担う子どもの食育
 厚生労働省が毎年行っている国民健康・栄養調査の結果を基に食生活の実態を解析した結果、免疫能に重要な影響を及ぼすタンパク質の摂取量は男・女共に生涯にわたって大きな変化が認められなかったが、タンパク質をどの様な食品群から摂取しているかを年齢別にみると、40歳代以降から肉類と魚類の摂取量が逆転することを見出した。すなわち、若年者は肉類、中・高齢者は魚類の摂取が高いことでタンパク質摂取が生涯にわたって保持できていることがわかった。一方、米国人の食生活パターンは生涯のタンパク質源を肉類に依存し、これが加齢と共に摂取量が減少することで1日に必要なタンパク質摂取量が減少する。この減少は免疫力の低下を惹き起こす。これが日米の寿命の差となっているのかもしれない。
 一方で、我われは日本人の中・高齢者の血中微量元素濃度を測定した結果、免疫能および抗酸化能に影響を及ぼす銅、亜鉛、セレン、マンガンなどが加齢に伴って減少する傾向を見出した。さらに、これら元素の変動が不定愁訴や循環障害などの各種自覚症状と関係していることを見出した。これらの結果をもとに、中・高齢者が抗酸化・免疫能を強化する微量元素やビタミン、フラボノイドなどを多く含む豆類、野菜、果物、魚介類などを積極的に摂取することによって、これらの自覚症状がなくなり、ますます健康寿命の延伸を図ることの可能性を見出している。
 これらの結果に対して、現代の子どもが将来高齢者となった場合に、現在の高齢者と同じような食事摂取パターンとなるかについては疑問である。すなわち、味覚や嗜好は乳幼児期に形成されるためである。したがって、安心・安全な食物を選別できる能力、食物の大切さを知る能力などを小児期に育てることは重要である。

4.免疫能を高める栄養素・食品の解析
 各種酸化ストレスからの防御を目的として、我われは食品中に含まれるミネラルやビタミン、フラボノイドなどの抗酸化成分を胸腺(免疫)細胞に投与し、活性酸素の消去能について検討したところ、各抗酸化物質によって細胞内外での抗酸化能力が異なっていることを見出した。このことは、抗酸化成分の効果的な摂取法として、細胞内外にて抗酸化作用を発揮する成分を摂取することの方が、細胞を酸化ストレスから防御するにはより効果的であることを示す。事実、細胞内外にて抗酸化能を発揮するフラボノイド(ルテオリンなど)を多く含む野菜(ピーマンなど)を高齢者に食べていただくという介入試験を国立健康・栄養研究所の研究倫理規定にしたがって行った結果、摂取前(介入前)と比較して摂取後(介入後)は抗酸化能および免疫能は統計学的に有意に上昇することを見出している。

5.日本型食生活の変遷と栄養行政
 日本人の食生活は主食、主菜、副菜、汁物で構成されているが、主食としては米を中心とした食生活が連綿と引き継がれてきた。そこから誕生したのがみそ汁、漬物、塩蔵品といった米と合う塩分と砂糖の多い食生活である。しかし、今日のITおよび乗り物社会といった運動量の少ない社会構造が確立してから肥満を始め、がん、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病など欧米に多い病気が我が国でも増加するようになってきた。これに対して、厚生労働省は「健康日本21」、「健康増進法」など様々な政策を打ち上げ、健康に対する対策を行ってきたが、現在までに成功したと言えるのは禁煙と減塩政策である。これら健康増進行政の基本は「栄養」「運動」「休養」の三位一体の遂行であることはいつの時代も変わらない。

6.最新食生活事情~糖質摂取制限に関する話題
 最近、糖質摂取(白米やパン、麺類など)を制限すると肥満、糖尿病(1型、Ⅱ型)などの生活習慣病だけでなく、妊娠糖尿病、がん、アルツハイマー病や認知症、虫歯、歯原性菌血症などが改善・予防されるといった書物が現在の食生活に対する混乱を惹き起こしている。いわゆる糖質ダイエットと称されるものである。これに対する異論・反論も多く、安易に信用することは控えたい。これら多くの話題には科学的根拠に欠けているのもあり、それらの課題は医学・栄養学・食品学等の学会、厚生労働省・農林水産省などの行政側で話題・議論すべき内容であり、これを国民に直接一般書物などマスメディアを通して訴えることは国民の不安を煽るだけでなく、食行政を混乱させるだけであり、売名行為とも受け取らわれかねない。これら内容については専門家の間でしっかりと議論し、科学的に確立したものを一般国民に公表すべきである。また、今日様々なダイエット法がメディアを通して宣伝されているが、もしもダイエットなど自分の食生活を変えたい場合には、必ず信頼できる人と相談することが大切である。このように、日本の食事事情が混乱している現代社会においては糖質、タンパク質、脂肪の摂取比率などを含めて、早急に総合栄養学的な観点から生涯にわたっての日本型食生活と健康について医学、農学、栄養学、経済学、工学などの広領域分野にて科学的に再検討する必要があると思われる。

7.望ましい食生活の在り方
 「食」は国家の基盤、文化や教育の根幹であることから、国は国民が生涯にわたって健全な心身を培い、豊かな人間性を育む事ができるよう、家庭、学校、地域社会における食育推進行政を徹底してほしいものである。「食育」は「職育」であり、各々のlife stageにおいて知力、体力、抵抗力、作業能率、正しい判断力、感性を育むために不可欠な教えである。人間の一人ひとりのゲノム(遺伝子)の差は0.1%であり、これが免疫など様々な個体(人)差となっている。したがって、年齢、性、運動量、作業量、各ストレス量、体質などが各個人によって異なるように、食事の質と量も当然異なってくる。望ましい食生活とは、個人個人が正しい知識を持って、賢く食事を楽しむことである。それによって、酸化ストレスも減少し、免疫能が強化され、健康寿命の延伸が図られる。我われは、「今こそ」栄養学・食品学の知識を身に付け、一つの栄養素・食品におけるミクロ的な視点ではなく、総合栄養といったマクロ的な視点から自分自身の食生活について真剣に考える必要がある。厚生労働省などの公的機関は国民に対する正しい栄養教育の一層の普及が望まれる。

おわりに
 戦後70年間で日本社会のあり様が著しく変貌し、今後もさらに変化していくものと思われる。いつの時代も生命・健康維持において最も重要なものが「食のあり方」である。正しい「食生活」を維持・継続することによって生体のリズムが構築され、知識や技術の向上が図られる。さらに、健全なからだや精神(感謝)という個人レベルの健康だけでなく、健全な社会が構築され、延いては国家が元気となる。また、「食」に対する知識を得ることによってからだと心を大切にし、生きる術として大切な善悪の判断、感謝し奉仕するといった素直な心を持つ。さらに、前向きに生活の工夫を行う知恵などを持ち、将来を夢見るこころを持つようになる。内容の貧しい食事であっても団欒のある楽しい食生活や四季の旬のおいしい物を食べた時の自然と笑みがこぼれる幸福感・こころのゆとりが得られ、そこからさまざまな知恵が伝承されることを忘れてはならない。(近藤雅雄:平成28年3月2日掲載

こころとからだの健康(13)目の病気の予防・対策に必要な栄養素と食品

 近年、スマホやコンピュータ、大画面テレビなどの急速な発展による生活環境の変化に伴って眼精疲労・ドライアイを自覚する人が増加すると共に白内障、緑内障、加齢黄斑変性などの失明に至る眼病が注目されるようになった。これら背景にはスマホやコンピュータの発展以外に高齢人口の増加と日常的なストレス、偏った食事、無理なダイエットなどによるビタミンやミネラル類の過不足など、栄養障害が考えられることから目の病気も生活習慣に関わる疾病と言える。
 目はこころとからだの健康維持に重要であり、目の病気は様々な行動の妨げとなるなど、日常生活への負の影響は計り知れない。疲れ目やかすみ目で悩んでいる人、スマホやパソコンなどで目を四六時中酷使している人や自動車やトラックのドライバー、飛行機のパイロットなどは一度自分の食生活を見直すことが大切である。普段の食事を意識して摂取する習慣を身に付けたい。食事で摂取できない時は視力回復のサプリメントや緑黄色野菜、果物などを積極的に摂りいれることも考えたい。
 世界の中でも日本人の視力低下は著しく、最近の調査では約83%の人がメガネかコンタクトを使用し、近視の低年齢化が問題となっている。目に関することわざは多数あるが、その中で「目は心の鏡」「目は人の眼(まなこ)」と言われるように、目はこころとからだの入力部位であり、こころとからだを映し出している。目は生体すべての感覚情報の約80%を占めると言われ、生体に入る情報は目に依存していると言える。
 人間において、視力が形成されるのは生まれてから後天的に徐々に発達し、5~7歳位までに完成すると言われている。したがって、この期間における目のケアーにはとくに十分に注意したい。また、目は12~13歳頃から老化が始まると言われている。生涯において目を大切にするこころを持って、目の健康に気を配り、食環境と同時にストレス解消の方法を自分なりに考え、美しい目を保持したいものである。
 本稿では目の病気の予防・対策に必要な栄養素・食品について調査を行った。論文の内容はⅠ.視覚と目の病気(1.視覚の性質、2.目の病気、3.失明の原因となる疾患)、Ⅱ.眼病の予防に良いとされる栄養素と食品(1.眼精疲労・ドライアイに良い栄養素、2.近視抑制に良い栄養素、3.白内障、加齢黄斑変性などに良い栄養素、4.抗酸化物質の機能、5.ブルーベリーは目が良くなる食べ物の代表)、Ⅲ.眼に良い栄養素(1.抗酸化物質、2.ビタミン類、3.ミネラル類、その他)からなる。
 内容詳細は以下のpdfを参照されたい。(近藤雅雄:平成28年2月8日掲載)
こころとからだの健康(13)眼の病気の予防・対策に必要な栄養素{pdf}

高齢期の健康に影響を与える成人期の栄養学

成人期は就職、社会貢献、結婚、子育て、子どもの自立、親の介護など、生涯において様々な環境因子・ストレスによる影響が最も大きい激動期である。この時期は、生活が多忙になり不摂生や無理をし易く、食べすぎや飲みすぎ、不規則な食事時間、欠食、栄養素のアンバランス、運動不足、肥満などと併せて、生活習慣病が発症するなど、身体的にも社会的にも大変重要な時期であり、高齢期への健康に大きく影響を与える。したがって、健康寿命の延伸とQOLの向上を図るための方策を早めに考え、成人期の特徴、生活習慣を変える効果的な方法などについて栄養学的に理解することが大切である。
ここでは、下記の目次にしたがって執筆内容をpdfに掲載した。

1.成人期の生理的特徴
 1)生理的変化と生活習慣の変化

2.成人期の栄養アセスメントと栄養ケア
 1)成人期の栄養の特徴
 2)成人の食事摂取基準
 3)生活習慣病の予防
 4)肥満とメタボリックシンドローム
 5)主な生活習慣病の一次予防

 (近藤雅雄:平成28年1月15日執筆掲載)

高齢期の健康に影響を与える成人期の栄養[pdf]

成長・発達、加齢の栄養・生理学

 ヒトの生涯の各時期における生理学的特徴、頻度の高い疾患を把握し、栄養学的な諸問題を理解する。小児期では著しい成長・発達は生涯栄養学の基礎的問題として重要である。成人期は生活習慣が変動する時期であり、生活習慣病発症の予防として栄養・食生活管理が重要である。高齢期については、老化のメカニズムを理解し、高齢期の生理的・心理的変化からさまざまな体調の変動が起こる時期であり、それぞれの体調に合った最適な栄養ケアができるようにする。 
 本稿では、ヒトの生涯における栄養と生理について下記の項目にしたがって概説したので、pdfを参照されたい。
Ⅰ.成長、発達、加齢の概念
 1.成長
 2.発達
 3.加齢
Ⅱ.成長・発達に伴う身体的・精神的変化と栄養
 1.身長、体重、体組成
 2.消化・吸収
 3.代謝
 4.運動、知能、言語発達、精神発達、社会性
 5.食生活、栄養状態
Ⅲ.加齢に伴う身体的・精神的変化と栄養
 1.臓器の構造と機能の変化
 2.分子レベルの老化(テロメア、活性酸素による障害)
 3.高齢者における疾患(病態、症候、治療)
 4.高齢者の生理的特徴(予備力、適応能力)
 5.高齢者の心理的特徴
 6.高齢者における食事摂取の特徴
 7.栄養状態の変化
(近藤雅雄:平成27年11月6日執筆掲載)

成長、発達、加齢の栄養・生理学27.11

こころとからだの健康(10)脳に良い食品、機能性食品とその成分

 脳は大脳(皮質、辺縁系、基底核)、間脳(視床、視床下部)、脳幹(中脳、橋、延髄)および小脳から構成され、心身(こころとからだの働き)の司令塔である。特に大脳皮質は感覚・運動の統合、意志、創造、思考、言語、理性、感情、記憶を司る人間としての最も重要な器官であり、その中でも前頭連合野は人間としての中枢とも言うべき、様々な重要な働きをし、哺乳動物の中では一番重たい。脳は骨格筋、肝臓に次いで基礎代謝量が高く、多くの栄養素を必要としているため、栄養の摂取バランスの異常や不足は脳の機能にダメージを与え、こころとからだに様々な影響を与える。その代表的なものとして、近年、アルツハイマー病やうつ病などの疾病が大きな問題となっている。2012年の世界保健機関の報告によると、認知症患者は毎年770万件増加し、その数は世界中で3,560万人と推定されている。これが2030年までに倍増、2050年までに3倍以上(1億人以上)になると予測されている。認知症には①アルツハイマー型、②脳血管性認知症、③レビー小体型認知症、④ピック病(前頭側頭型認知症)、⑤混合型認知症、⑥その他などがあるが、この内、70%近くがアルツハイマー病という。
 そこで、認知症やうつ病などの脳の障害を予防し、脳(こころとからだの司令塔)の働きをよくする食品および有効成分について文献調査を行い、こころとからだの健康に役立つ資料とした。
掲載した食品および機能性物質は以下の24食品、24物質であり、その詳細はpdfに掲載した。

1.脳(アンチエンジング)の活性化が期待される食品
 亜麻の種(亜麻仁油)、イチョウ葉、オリーブオイル、カワカワ、くるみ、ココア、コーヒー、魚、ザクロ、センテラ(ゴツコーラ、ブラーミ、ツボクサ)、SOD様作用食品、セイヨウオトギリソウ、セイヨウカノコソウ、ダークチョコレート、納豆、ニンニク、ビルベリー、ブルーベリー、ほうれん草、豆類、松葉、ムール貝、ヨヒンベ(ヨヒンビン)、緑茶の24食品。

2.脳に良いとされる機能性物質
 アスタキサンチン、アントシアニン、イソフラボン、カテキン、γ‐アミノ酪酸(GABA、ギャバ)、ギンコライド、グルタチオン、コエンザイムQ10、サポニン、ジメチルアミノエタノール、食物繊維(不溶性食物繊維、水溶性食物繊維)、タウリン、テアフラビン、テアニン、DHA、トリプトファン、ビフィズス菌、分岐鎖アミノ酸(BCAA)、フェルラ酸、ホスファチジルセリン、ポリフェノール、フラボノイド、メラトニン、レシチンの24物質。
 原稿は以下のpdfを参照されたい。(近藤雅雄:平成27年10月6日掲載)
こころとからだの健康(10)脳に良い食品、機能性食品

食物繊維

 人の消化酵素で消化されない炭水化物の難消化成分で、セルロース、リグニンなどの不溶性食物繊維と粘質多糖類などの水溶性食物繊維に大別される。

1)不溶性食物繊維
①咀嚼回数が増加し、唾液の分泌が亢進するため、早食い防止や満腹感を得やすく、過食や肥満の防止。②消化管内で水分を吸収・膨張し腸の蠕動運動を促進するため、便秘の予防・改善。③腸内の有害物質の排出を促進し、大腸がん発生予防。などの効果が知られている。

2)水溶性食物繊維
消化管内で水分を含むゲル状になり、①糖分の吸収速度を遅らせ、食後の血糖値の急激な上昇とインスリンの急速な消費を防ぎ、糖尿病の予防効果がある。②コレステロールの吸収抑制とコレステロール由来の胆汁酸排出を促進するため、血中コレステロールが減少し動脈硬化を予防する。③脳に働きかけて食欲を抑えるようにコントロールする。などの効果があるという。

栄養学と医師

 栄養学の基本を学ぶことによって生命、生体の恒常性(ホメオスタシス)、生体リズムおよび動的平衡の重要性を理解できるようになります。そして、栄養の過不足状態における体内代謝への影響や遺伝学の観点から生活習慣病と栄養現象との相互作用などを正しく理解することによって、保健・医療・福祉・文化(食文化)・環境(食環境)との相互関連性を理解し、人間力を身に付けるようになります。
 栄養は生命維持に不可欠な現象であることから、栄養学はその基本である栄養の意義、健康の保持・増進、疾病の予防・治療における栄養の役割、エネルギーと栄養素の代謝とその生理的意義など、ヒトの生涯にわたって健全な健康学の在り方を追究します。そのためには生命維持に必須な各種栄養素の生理学的作用、栄養素の体内相互変換やその機能、栄養と健康および疾患との関わり、栄養と食生活の関係、体構成成分としてのエネルギー源の役割、摂食行動から消化・吸収、栄養素の体内運搬など、これら栄養学の基本的概念を疫学統計、理学、医学、社会科学などを駆使して、年齢別、性別、個別・集団別、運動と生活活動別、各種疾病と栄養との関連を追究し、人間のQOL向上と健康寿命の延伸を図るべく、総合的・学際的に教育・研究を行うことを使命としています。
 このような教育・研究を学修してきた管理栄養士が健康、医療などヒトの生命に関わる仕事に携わる場合には、栄養学に対する正しい幅広い知識と技術を駆使して病院、学校、企業、その他社会的な様々な場面で人々の健康の保持・増進、疾病の予防や治療・予後などの指導・管理にあたってほしいと願います。

 しかしながら、近年、少数ですが栄養学を学修していない医師が栄養・食事に関して自ら様々なメディアを介して、あるいは医師が書いた書物が氾濫し、自説を説く人が多くなりました。それらの中には①栄養学の基本を覆すものが多くみられる。②栄養学的な根拠のない個人的な感想が多く、危険なものもたくさん見られる。また、③統計学的に有意差があるからと言って、あたかも全人的に科学的根拠があるように指導する。さらに、④動物実験の結果をそのまま人に当てはめようとする。医師は栄養学については素人同然です。その医師が自分の体験・感情から広く一般向けに栄養学的な根拠なしにマスメディアに向かって自説を公表することは無責任と言えます。その場合は医師という肩書を外して公表すべきです。医師の使命は病気の治療です。
 一般人からすれば、医師ということで、その言動を丸呑みにし、それを行動に移そうとします。とくに医師の言葉は重たく、責任がありますので、話題性を狙った軽はずみな言動や著作は控えるべきです。医者は医師としての自覚を十分に持ち、その責任を全うしてほしいものです。

 現在、病院におけるチーム医療が求められていますが、医師主体の我が国にあっては、医師が医療のリーダーとなり、すべて医師の指導の下に進められているのが現状です。また患者にとっても、医師は「お医者様」と言われるように尊敬され、絶対的な立場にあります。しかしながら、本来のチーム医療の考えからすれば、チーム医療に携わるスタッフ全員(医師、看護師、薬剤師、管理栄養士など)が十分に意思の疎通を図り、共通理解のもとに治療を進めることが大切と思います。一方、管理栄養士などの栄養の専門家は十分に誇りを持って、当該専門領域のさらなる向上のための勉学に日々努めてほしいと思います。
 今後は、医療に携わる医師以外の看護師、管理栄養士などの国家資格者の待遇と責任をさらに強化し、少なくとも医師と同等の発言力を高め、本来の姿であるチーム医療の進展を目指してほしいと思います。また、国民の保健・健康、医療、福祉にかかわる行政において、医師が万能であるといった時代はもう終わりにしたいものです。(近藤雅雄:平成27年9月20日掲載)

こころとからだの健康(8)肥満対策

 肥満とは単に体重が多いということではなく、脂肪量(中性脂肪)が過剰に蓄積した状態をいい、脂肪が増量している組織および場所(分布)によって皮下脂肪型(下半身型、洋梨型)肥満と内臓脂肪型(上半身型、りんご型)肥満に分類されます。生活習慣病との関わりがあるのは内臓脂肪型肥満です。
 肥満発症の原因は①食べ過ぎ、②誤った食事パターン、③運動不足、④遺伝、⑤熱産生機能障害などが挙げられますが、生活習慣による影響が多いことが分かっています。

1.肥満のメカニズム
 肥満のメカニズムの研究は1994~1995年に肥満の遺伝子およびその受容体遺伝子などが相次いで発見され、漸く肥満のメカニズムの概要がわかってきました。ヒトの体重は身長に対して設定されたように遺伝子によって食欲や消費エネルギーが調節されています。その調節には主に①レプチン(白色脂肪細胞から内分泌される蛋白質で摂食中枢を抑制する。すなわち、もう食べなくても良いという信号を脳に伝える。レプチンとはギリシャ語で“やせ”の意味です)、②レプチン受容体(視床下部の摂食中枢に存在する)、③β3アドレナリン受容体(エネルギー倹約遺伝子)、④脱共役蛋白(UCPファミリー;ミトコンドリア内膜に局在する蛋白で、ATP生産を伴わずに熱産生を行う)などが関与し、これらの遺伝子の異常と様々な環境要因が肥満を発症させる原因となります(肥満に関連した遺伝子は約70種類存在するという)。
 近年、急速に肥満者が増加(とくに小児の肥満が多い)し、社会問題となっていますが、その原因は過食や運動不足などが考えられます。

2.小児肥満の対策
 小児肥満の問題点として、①成人肥満への移行、②生活習慣病の発現、③いじめの対象となるなどがありますが、これらの対策として、こころの教育が最も大切です。小児肥満は、①家族、学校での教育(共育)、育児(育自)、②食生活改善、③糖質、脂質の摂取量を減らす、④積極的に運動を奨励する、⑤ダイエットの自重などによって予防することができます。

3.食事と健康
 こころとからだの健康を堅持していくために最も重要なのが食です、日頃から食に対する考え、興味を持ち、栄養についての正しい知識を身に付けたいものです。
 栄養は生命を維持するために必須な行為であり、その目的は生体機能の調節、生体組織の修復・再生、体温生産およびエネルギーの獲得などです。栄養素の摂取が十分であるかないかは、年齢に適した発育(身長・体重)、日常作業に十分見合った体力(作業能力)、病気に対しての抵抗力(免疫力)、などによって栄養状態が判定されます。
 これらの栄養状態が適正であるためには栄養素の過不足がないようにバランスよく食事摂取することが重要です。特に、食事は日常の生活習慣に欠かせない現象であり、生活習慣と深くかかわる病気の予防や改善のためには、毎日の食生活、食事に気を配ることが重要です。

4.肥満を誘発する原因が氾濫
 近年、24時間営業のコンビニエンスストアで外国の食材、加工食品、健康食品が氾濫し、気安く購入できることから需要が急増しています。しかし、これらの食品には一時のファッション的な、科学的裏づけのないものが多く出回っています。また、外食産業が発展し、今や欧米と同じように日本人の食生活並びに健康管理は個人に委ねる時代となりましたが、その結果、日本人の肥満人口が増加し、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病が蔓延することとなりました。

5.太らないための10か条
 肥満は①生活習慣病に直結する、②免疫力が低下する、③動きが鈍くなる、④息切れがするようになる、⑤やたらに汗をかく、⑥寿命が短くなる等、デメリットが多く、メリットがあまりありません。私も、青年期に56㎏であった体重が、中年期には過食と運動不足によって70kgと過体重となり、様々な生活習慣病を発症すると共に、先に挙げたデメリットが出てきました。そこで、健康について意識するようになり、これまでの生活習慣、特に食に対する意識を変え、日本人本来の日本型食生活に変えてから体重が減少し、現在は青年期の56㎏に戻すことに成功すると同時に生活習慣病もなくなりました。以下に、私の経験に基づき作成した太らないための条件を挙げます。

太らないための10か条
1)自分の体質を知る
2)1日3食、時間をかけて楽しくいただく
3)食塩、脂肪類は控えめに
4)刺激物、甘物、アルコール類などの嗜好品は控えめに
5)毎日野菜、海産物を多く食べる
6)寝る2~3時間前までに食事を終える
7)1日30分以上の運動(有酸素運動、徒歩1万歩)を行う
8)からだをこまめに動かす
9)体重計に乗る習慣をつける
10)入浴中は腹式呼吸を行い、ストレス解消を図る

6.健康度に対する健康指数
 標準体重は身長(m)×身長(m)×22によって、また、肥満度(BMI:体格指数)は体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)によって求められます。評価は、BMI 18.5~25が正常で、18.5以下がやせ、25以上が肥満です。やせすぎの場合も病気の罹患率が高く、BMI=22が最も病気の罹患率が低いと言われています。
(近藤雅雄:平成27年8月30日掲載)

食生活と栄養と食育

戦後70年における「住」「食」環境の変化がもたらしたもの
 戦後の経済や生活環境の発展は言うまでもないが、ここではとくに生活の根本的な「住」と「食」との部分での変貌について展望する。
 戦前までの日本は3世代や4世代が同じ屋根または敷地内に住むという大家族社会が当たり前で、「家」という継承の体制が確立されていたが、戦後は、核家族政策によって居住空間が細分化し、アパートやマンションあるいは小スペースの一戸建て住居が乱立し、少数家族あるいは単身世帯が確立、これが現在、定着するようになった。そして、代々引き継がれてきた様々な伝承が時代とともに薄れ、集団から個人の社会へと変化した。
 とくに、食生活の面からみると日本が長い年月を通して形成してきた日本型食生活から、西洋・中国・東南アジアなど世界中の料理、ファーストフードやいわゆる健康食品というものを自由に取捨選択できる豊かな自由型食生活へと変わり、いつでも食べたいときに好きなものが食べられる時代となった。
 このように「食」と「住」という根本的な部分での生活様式を大きく変え、先進国の一員として競争・発展してきたが、逆に、今日では、日本は世界で最も自殺率の高い国となると共に国家や組織、家族など様々な環境に対して無関心な国民が増加している。また、貧富の差が増し、少子・高齢化という少数単位での生活環境がからだとこころをますます脆弱化している。

次代をになう乳幼児・子どもの生活・行動の変化
 近年の核家族・少子化に伴って就労女性が増え、育児休暇などの問題が噴出するようになったが、現実は育児休暇をとることは難しく、そこで託児所や保育園が急増するようになった。しかし、最近の厚生労働省研究班の調査では「保育園で過ごす時間の長さは子どもの発達にほとんど影響せず、家族で食事をしているかどうかが子供の発達を左右する」という結果(とくに乳児期に神経細胞が急激に増殖するため、この時期に正しい栄養や生活環境を獲得しておかないと神経回路の形成に影響が出るといわれる)を報告している。
 子どもたちはといえば、親を含めた社会の期待が学力中心の過保護社会へと変化し、塾通いをする一方で、狭い居住空間に閉じこもってコンピューターゲーム、テレビ、マンガに夢中になり、からだを動かさない生活やレトルト食品、コンビニ食品を摂取するという生活様式が定着し、子どもの知力、体力、運動能力の低下が問題となっている。
 さらに、最近の子どもおよび若者は感動することおよび感動して涙を流すことが少ないと言われている。涙はこころから湧き出てくる体液であり、他の動物では見られない人間としての特有の生理現象である。涙を流すことによって心が洗われるとよく言うが、最近のTVでも現在の人間模様を反映してか、一過性の虚楽を求めるものやお笑いが蔓延し、涙を誘うドラマなどがきらわれ、少なくなっている。
一方、このような現状が生じているにもかかわらず、国家を挙げてIT化が推奨され、幼児教育からコンピュータが導入され、小学生でも携帯電話を持っているように、IT関連ツールは日用必需品となり、「孤立」、「エゴ」が蔓延し、デジタル型からアナログ型に移ろうとしている。読書の方はと言えば既に漫画時代といったアナログ型が定着している。食生活の面では「孤食」が定着しようとしている。
 こうした現実は、とくに次世代をになう子どもたちの体力の低下、書字能力の低下、計算能力の低下、記憶能力の低下、対人技術の発達の遅れなどが起こり、日本および地球の発展・未来において計り知れないほどの損失が生じるという危惧感を抱く。子どもは成長につれて知力や体力も自然とついてくるという錯覚を捨てるべきである。

「食育」の重要性
 そこで、上記した諸問題を真摯に受け止め、改善の方向性を探ると、最も基本的で緊急を要する課題は乳幼児期からの「家族」としての食生活のあり方である。すなわち、育自・共育の精神を持って正しい食生活をすれば健全な家庭生活を送ることができる。しかし、食生活のあり方を一歩間違えれば生活習慣病や摂食障害などの精神障害をまねき、さらにこれが遺伝的体質として次世代へも引き継がれかねない。
 こうした中、食と栄養の専門家である服部幸應氏は「食育」と言う言葉を流行させ、次の日本を作っていくためには「食育」がいかに大切であるかについての教育活動を展開し、2007年食育基本法の制定に貢献した。そこには「食育」に対する強い信念が伺えられる。
 一般に、現代人は、食に対しては好きなものを好きなときに、あるいは今あるもの(または残り)を取り寄せて食べているのが実情であり、食あるいは栄養に対する科学的な知識は殆ど持ち合わせていないのが現状である。私たちは、食を通してからだとこころの成長が図られることを忘れてはならない。団欒のある楽しい食生活やおいしい食べ物を摂取した時の自然と笑みがこぼれる幸福感を忘れてはならない。すなわち、「食育」は「職育」であり、幼児期であれば正しく成長するために、子どもであれば、知識を学習するために、大人であれば、それぞれの任務・責任を遂行するために、つまり生涯についての重要な営みである。

生活にリズムをつける
 例えば、エネルギーの貯蔵組織である脂肪細胞が増殖する時期にはリズムがあり、生涯において3回存在する。最初は、妊娠末期3ヶ月の胎児期で、この時期に母胎内から外界に出るために必要なエネルギーを蓄えることが出来るように脂肪細胞数が増える。2回目は生後1年以内の乳児期で、この時期に誕生と同時に外界において生存、成長していくために必要な脂肪組織を作り上げる。そして第3回目は思春期である。これらの時期に生活のリズムが乱れ、過食すれば当然脂肪細胞の数は増え、肥満となり、生体のリズムは乱れる。一度増殖した脂肪細胞は生涯減少しない。
 私たちの住む地球には時間や周、月、季節の各リズムがあるように、生体にも同じ時間的な体内リズムがある。1日のリズム(これをサーカディアンリズム(概日リズム)という)には食生活(摂食)のリズム、睡眠のリズム、自律神経系のリズム、免疫のリズム、内分泌のリズムなどがあり、生体の機能維持にとって重要な働きとなっている。したがって、これらのリズムを知り、生活にメリ・ハリをつけることが大切である。生活のリズムが崩れると生体のリズムも崩れ、さらに生体恒常性維持機能(これをホメオスターシスという)が崩れ、病気となる。

いまこそ「食生活」の見直し、教育・学習が必要であり、この期を失うと未来への損失は計り知れないものとなる
 生命維持において最も基本的で根本的なものが「食」であり、正しい食生活を維持・継続することによって生体のリズムが構築され、知識や技術の向上が図られる。さらに、健全なからだや精神(感謝)という個人レベルの健康だけでなく、健全な社会が構築され、延いては国家が元気となる。
 まさに、「知識の消化吸収は人生最大の栄養素となり、多くの知恵を生み出す」ように、健全な食生活から得られるものは計り知れない。すなわち、「食生活と栄養」に対する知識を得ることによってからだとこころを大切にし、団欒などから知恵を引き継ぎ (親からの伝承など)、生きる術として大切な善悪の判断、感謝する素直なこころを持つ。さらに、前向きに生活の工夫を行う知恵などを持ち、将来を夢見るこころを持つようになる。そしてこれらの習得が「自由」なこころで「正当性」、「責任」を持って、「平和 (社会)」に貢献できる体力とこころを持つようになる。これがさらに、次の世代に引継がれていく。(近藤雅雄:平成27年8月1日掲載)

日本の食文化の変遷と食育~日本型食生活による健康寿命の延伸

はじめに
 連綿と引き継がれてきた日本の伝統的な食文化が戦後の約70年間で劇的に欧米化、依存化されるようになった。この結果は中高年齢者の免疫能の低下、がん、生活習慣病の発症および次世代をになう子どもたちの学習・記憶・体力の低下、対人技術の発達障害や摂食障害などといった心身への影響だけでなく、食糧自給率の低下、食品に関する偽装問題、薬物混入などといった食の安全・安心の問題まで発展し、国民として、日本国家として新たな様々な問題が出現してきているのが現状である。
 ここでは、科学的根拠を基に日本人としての食生活および食育のあり方について考える。

1.食文化の変遷と食育の必要性
 現在の日本の食生活は、経済成長と共にこれまでの日本型から欧米など世界中の料理、ファーストフードやいわゆる健康食品というものを自由に取捨選択し、食べたいときに好きなものが食べられる豊かな自由型(洋風型)へと変わった。その反面、核家族化の定着と共に食糧自給率の低下、「こ食」(孤食、小食、固食、粉食、個食、濃食、戸食など)が習慣化し、さまざまな問題を生じさせている。これは、とくに次代をになう子どもたちの学習・記憶・体力の低下、免疫能の低下、対人技術の発達障害などと言った心身の問題を含み、また、将来、これまでに日本文化を通して獲得されてきた日本人体質に変化が生じ、生活習慣病や摂食障害などを誘発し、さらに、これが遺伝的体質として次世代へも引継がれかねない。
 現代人は、好きなものを好きなときに、あるいは今あるものを寄せて食べ、食あるいは栄養に関する科学的な知識は殆ど持ち合わせていないのが現状である。そこで、これら諸問題の改善の方向性を探ると、最も根本的で緊急を要する課題が乳幼児期からの「食」のあり方である。食を通してからだと心の成長・健康が図られ、貧しい食事であっても団欒のある楽しい食生活や四季の旬のおいしい物を食べた時の自然と笑みがこぼれる幸福感・心のゆとりが得られ、そこからさまざまな知恵が伝承される。すなわち、「食育」は「職育」であり、各々のlife stageにおいて知力、体力、抵抗力、作業能率、正しい判断力、感性を育むための生涯に亘っての重要な営みであり、「いまこそ食育」が必要である。
 一方、政府は国民が生涯にわたって健全な心身を培い、豊かな人間性を育む事ができるよう、食育を総合的かつ計画的に推進することを目的として、平成17年7月15日に食育基本法を施行し、国民運動として、家庭における食育、学校における食育、地域における食生活の改善のための取組および食育推進運動を展開している。

2.日本型食生活の解析と健康寿命の延伸
 日本人の免疫能はこの数十年間で低下してきている。免疫の中心である胸腺は酸化ストレスや加齢によって萎縮し、免疫能が低下する。これが、近年の生活習慣病、がんや自己免疫性疾患、感染症などといった様々な疾病を発症する原因の一つとして広く指摘されている。その主たるものの原因が前述した戦後の食生活の劇的な変化が挙げられる。すなわち、私たちの住む地球には時間的リズムがあるように、生体にも同じ時間的な体内リズムがある。一日のリズム(概日リズム)には睡眠のリズム、自律神経のリズム、免疫のリズム、内分泌のリズム、摂食(食生活)のリズムなどがあり、日本人が長い歴史を通して獲得してきたさまざまな体内リズムの中心となっているのが「食」であり、生体の機能維持にとって最も重要な働きとなっている。近年、この「食」を中心とした生活習慣(リズム)の変化が生体のリズムを変化させ、肥満をはじめとした各種生活習慣病が起こることが分かってきた。したがって、これらの疾病は「食源病」といっても過言ではない。
 そこで、われわれは、国民栄養調査結果から日本人食生活の実態を解析した結果、免疫能に重要な影響を及ぼすタンパクの摂取量は男・女共に、成人後大きな変化が認められなかったが、タンパク質をどの様な食品から摂取しているかを年齢別にみると、40歳代以降から肉類と魚類の摂取量が逆転するという特徴的な食事摂取パターンを見出した。また、このパターンの変化が起こることで、高齢者のタンパク質摂取が保持できていることがアメリカ人の食生活パターンと比べることによって明らかになった。これは日本人がアメリカ人よりも高い平均寿命を有していることの一つの原因と思われる。
 しかし、免疫能および抗酸化能に影響を及ぼす微量元素量は加齢に伴って血中濃度が減少する傾向を見出し、これら元素の変動が不定愁訴などの各種自覚症状や血圧などの循環機能と関係していることがわかった。したがって、高齢者では抗酸化・免疫能を高める微量元素やビタミン、フラボノイドなどを多く含む豆類、野菜、果物、魚介類などを積極的に摂取することによって、ますます健康寿命の延伸が可能であると思われる。
 一方、現代の子どもが将来高齢者となった場合に、現在の高齢者と同じような食事の摂取パターンを取るかについては疑問である。すなわち、味覚や嗜好は乳幼児期に形成されるためである。そこで、とくに、安全な食物を選別できる能力、食物の大切さを知る能力等を小児期に育てることが重要である。

3.免疫能を高める食材の選別
 酸化ストレスからの防御を目的として、食品中に含まれるミネラルやビタミン、フラボノイド等の抗酸化成分を胸腺(免疫)細胞に投与し、活性酸素の消去能について検討したところ、細胞の内外での抗酸化能力が異なっていることを見出した。このことは、抗酸化成分の効果的な摂取法として、細胞内外にて作用を発揮する成分を摂取することの方が、細胞を酸化ストレスから防御するにはより有効であることを示す。事実、細胞内外にて抗酸化能を発揮するフラボノイド(ルテオリン)を多く含む野菜(ピーマン)を高齢者に摂取させると、摂取前と比較して抗酸化能及び免疫能は有意に上昇することが分かった。
 以上の結果から、日本人の高齢者はタンパク質においては十分に摂取できていることから、これらの食生活に加えて、銅、亜鉛、セレン等の抗酸化酵素関連微量元素や細胞の内外にて抗酸化能力を発現しうる抗酸化成分を多く含む食品群(主に豆類、野菜、果物、魚介類)を十分に摂取することによって抗酸化能力を高め、免疫能を保持し、QOLを高める。このことは若年者においてもまったく同じことが言え、免疫能の健全化のためにも「健全な日本型食生活」が重要であることを示唆している。

おわりに
 この60年間で日本社会のあり様が著しく変貌し、今後もさらに急速に変化していくものと思われる。このような時世において、健康な生命を維持する上で最も重要なものが「食のあり方」である、正しい「食生活」を維持・継続することによって生体のリズムが構築され、知識や技術の向上が図られる。さらに、健全なからだや精神(感謝)という個人レベルの健康だけでなく、健全な社会が構築され、延いては国家が元気となる。また、「食」に対する知識を得ることによってからだと心を大切にし、生きる術として大切な善悪の判断、感謝し奉仕するといった素直な心を持つ。さらに、前向きに生活の工夫を行う知恵などを持ち、将来を夢見る心を持つようになる。そしてこれらの習得が「自由」な心で「正当性」、「責任」を持って、「平和 (社会)」に貢献できる体力と心を持つようになる。これが、次の世代に引継がれる。
 「食」は国家の基盤、文化や教育の根幹である。これらの根本である「食育基本法」が誕生してからすでに10年を経たが、未だに家庭、地域、学校、行政、企業、等々の連携による社会全体での活力ある国民総運動が期待されている。
(近藤雅雄、日本の食文化と食育~日本型食生活と健康寿命の延伸、平成27年7月21日掲載)

健康食品の話題

1.薬と食品の相互作用およびサプリメントの副作用

医薬品の多さと同じように食品も多種多様なものが氾濫している今日、薬同士の相互作用、薬と食品との相互作用、および食品同士の相互作用のチェックも重要な課題となってきた。例えば、次のようなことが広く知られている。
①民間薬の強壮剤として使用されてきた高麗人参は心臓に作用して血圧を上昇させるので、血圧が高く降圧剤を服用している人は避けた方がよい。
②抗凝血療法(血栓防止)にワルファリン(脳血栓を起しやすい人や心臓の手術をした人が主に服用する薬)を使用している人が納豆およびクロレラ食品を摂取するとワルファリンの効果が減弱する。これは、ワルファリンがビタミンKの作用に拮抗するため肝臓でビタミンKによってプロトロンビンなどの血液の凝固因子の生産が促進し血栓形成を促進するためである。このほか、ほうれん草、ブロッコリー、ワカメをはじめとする海藻類などには比較的ビタミンKが多いので大量の摂取は避けた方がよい。
このほかにも薬品と食品成分との相互関係を示すものは多数知られているので、薬を服用している人はサプリメントを利用する場合には必ず医師に相談することが望ましい。
一般に、サプリメントを利用する場合は、自分の健康状態をチェックし、健康診断で異常があるか無いかを調べ、はっきりとした異常があれば病院でそれに対する治療を行い、異常が無い場合は日常の食生活や運動などの生活習慣を見直し、食生活の中でなかなかとれない栄養素(サプリメントとして)を摂るように心がけるのが望ましい。しかし、サプリメント自体にも過剰摂取や粗悪品を飲用して副作用が生じた報告もかなり多い。

2.米国のサプリメント

サプリメント(栄養補助食品)の法制度化を最初に手がけたのは米国であり、従来、米国では食品、医薬品、化粧品を取り扱う基本的な法律は「連邦食品、医薬品、化粧品法(USFDCA)であったが、米国議会はこの法律の一部を改正してサプリメントを食品の1カテゴリーとして扱う「栄養補助食品健康教育法(Dietary Supplement Health and Education Act; DSHEA)単にサプリメント法とも呼ばれる)」が1994年10月クリントン大統領時代に成立してからアメリカ人の日常生活に浸透し、需要と供給が増加している。
この制度によってサプリメントを「食事を補充する目的で製造されたもの」と定義付け、サプリメントの構造、機能表示を認めた。この法律によって、ビタミンやミネラル、ハーブ、植物性栄養物、代謝産物、代謝に必要な成分、組成物、抽出物、濃縮物およびそれらの混合物などまでがサプリメントに組み入れられた。したがって、これまでに医薬品扱いであった副腎皮質ホルモンであるデヒドロエピアンドロステロン、松果体ホルモンであるメラトニン、ハーブ類などもサプリメントとして扱われるようになった。これらサプリメントの販売は医薬品扱いをしない、あくまでも食品であるとしている。
これらDSHEAは有効性と安全性に関する科学的な指針や、第三者による実証試験の機能評価が無くても表示できるが、替わりにボトルのラベルにはこの効能を米国食品医薬品局(FDA)は認知していないという表示がされる。そこで、ここ数年、米国ではサプリメントの服用者から死亡事例が出たことから(因果関係が不明な例がある)、2003年9月から暫定的ながら条件付ヘルスクレーム表示制度を導入し、信頼度をA~Dの4つのランクに分け、科学的な根拠の強さによって判断できるようにし、このランクの違いの意味を説明するための文章を表示に加えることが条件とされている。

表 ヘルスクレーム(健康への効果効能表示)の信頼度
A High 良好な機能がある
B Moderate 良好な根拠があるが、限定的で結論できない
C Low 示唆的な根拠はあるが、限定的で結論付けられない
D Extremely Low 限られた初歩的な根拠しかなく、協調表示を支持する科学的根拠は殆ど無い

ここで、商品のイメージからも表のDに示した表示を付けるサプリメントはなく、これまでのDSHEA法に基づいて販売されている多くの商品はDより下に位置づけられる。また、これらの表示が信頼できるという判断基準が明確にされていない。交通やインターネットが便利になった今日、各国で販売している機能性食品を手軽に入手する機会が多くなっていることから、サピリメントに対する有効性や安全性などに関する国際的な総合的議論が期待される。

3.サプリメントを購入するときの注意点

サプリメントを購入する際には以下の点について気を付けたい。
①ラベルに原材料、内容成分がわかりやすく表示されていること
②中蓋シールでしっかり密閉され、開封した後が無いこと
③アレルギーの人はアレルギーに該当する成分をチェックすること
④自分の体質に合ったものを選択する
⑤信頼できるメーカーの製品を選ぶ。例えば、メーカーに直接問合せた時に、きちんと対応してくれるかどうか。
⑥出来ればインターネットなどで、サプリメントの副作用事例などについてチェックする
(近藤雅雄:健康食品の話題、2015年7月10日掲載)

ヘム鉄

 鉄は体内で鉄を吸収するタンパク質であるフェリチン(貯蔵鉄)、鉄を輸送するタンパク質のトランスフェリン(輸送鉄)、そして様々な生理作用を持つヘムタンパク質(機能鉄)に分かれる。
ヘムは、プロトポルフィリンという赤い色素に2価鉄が結合したものです。鉄は、体内での需要と供給のバランスから、成長期や運動、女性の生理、妊娠などによって鉄分が不足すると、ヘムの生産量が減少しますので、ヘムタンパク質の機能が発揮できず、貧血、息切れ、疲れやすいなどといった様々な症状が出やすくなります。
 そこで、食品から鉄分を摂取する際に鉄の吸収率が大きな問題となって、鉄の吸収率の高いヘム(10~30%吸収;肉類、レバーなどの動物性食品に多い)を「ヘム鉄」と呼び、吸収があまりよくない鉄分(1~5%吸収;野菜、穀類などの植物性食品に多い)を「非ヘム鉄」と分けるようになりました。ヘム鉄は非ヘム鉄と異なって、穀類に含まれるフィチン酸、お茶に含まれるタンニン、あるいは食物繊維などによる吸収阻害がありません。
 ヘム鉄を多く含んでいる食品の摂取は鉄分補給に効果的ですし、また、消費者庁から「特定保健用食品」として許可されたヘム鉄飲料などが市販されています。(近藤雅雄:ヘム鉄、2015年7月9日掲載)

ミネラル(必須性が認められているもの)

 ミネラルには、人が日常健康生活を送る上で、生命の機能維持に必要不可欠であると確認されているものを必須ミネラルと呼び、これまでに16種類(Na, K, Cl, P, Ca, Mg, S, Zn, Fe, Cu, Mn, Co, Cr, I, Mo, Se)が知られている。その中でも、特に欠乏や過剰が心配される13元素(Ca, Fe, P, Mg, Na, K, Cu, I, Mn, Se, Zn, Cr, Mo)については、摂取基準が策定されている。
 ミネラルは体のバランスを調節し、機能を保つ働きを持つ。さらに、ナトリウムとカリウムのように、関わりあいながら機能しているミネラルもあるので、全体的にバランスよく摂取することは、健康の維持・増進、疾病の予防に重要な役割を発揮する。そのため、毎日の食事では補いきれず不足しがちなものを補うのが、サプリメント活用の目的である。

1.カルシウム(Ca)
 カルシウムは人体でもっとも多く存在する無機質で、成人体重の約2%(体重50kgの成人で約1kg)を占める。人体中のカルシウムの約99%は骨や歯などの硬い組織に存在し、生体を維持する働きをする。これらの硬組織はカルシウムの貯蔵組織としても機能する。残りの約1%のカルシウムは細胞や血液中に存在し、生命の維持に必要な機能の調節に重要な役割を果たしている。さらに遊離カルシウムの濃度は細胞内が細胞外より大きく、この差が情報伝達に関与している。
 生体内の細胞や血液中のカルシウム濃度は、副甲状腺ホルモン、活性型ビタミンD、カルシトニン(甲状腺ホルモン)により一定に保たれている。さらに腸管からのカルシウム吸収を調節し、血液中のカルシウムを骨に沈着させ、骨のカルシウムを血液中に溶出させることによってカルシウム濃度が一定に保持される(図2-7)。したがって、カルシウム欠乏状態が長く続くと骨のカルシウム含量を低下させ、骨粗鬆症の原因となる。
 骨は硬組織ではあるが、約3ヶ月単位で骨吸収と骨形成を繰り返し、常に作り変えられている。
 細胞や血液中のカルシウムは、主としてイオンとして①細胞の分裂・分化、②筋肉の収縮、③神経の刺激、④細胞膜の透過性、⑤血液の凝固などに関与している。
欠乏症-血液中のカルシウム濃度はホルモンによって一定に保たれているので、カルシウム欠乏は貯蔵部位である骨にみられることが多い。幼児では骨のは発育障害、成長障害がおこる。高齢者、特に閉経後の女性では骨粗鬆症が多く見られる。

**骨粗鬆症**
 骨粗鬆症は骨の外形は変化せず、骨塩量の低下により内部が萎縮する疾病で、骨折の原因となる。骨折の後発部位は胸椎、腰椎、大腿骨頚部、上腕骨頭部である。人体の骨量は骨形成と骨吸収のバランスで定まり、骨量は青年期に最大骨量となり、それ以後男女ともに減少する。最大骨量が少ないほど発症しやすいので、青少年期までのカルシウム摂取は重要である。女性は閉経期以降、卵胞ホルモン(エストロゲン)の低下に伴い、発症が多くなる。本症はビタミンDの血中濃度が低く、副甲状腺ホルモン分泌が亢進して、骨量減少が進行する。予防として日光浴と運動が有効である。ビタミンK摂取も良い。また摂取するカルシウムとリンの比率は1:1程度がよく、同時にマグネシウムの摂取も必要である。減量経験者や低体重者は骨密度が低いので、注意が必要である。

2.マグネシウム(Mg)
 マグネシウムは人体に約0.05%(成人で約25g)存在し、リン酸塩や炭酸塩として骨に沈着し、また筋肉に多く、血液にはわずかしか存在しない。マグネシウムは300種以上の酵素の活性剤として働き、エネルギーの生産、アミノ酸の活性化、タンパク質の合成に関与している。また神経の興奮を抑制し、血管を拡張して、血圧を降下させる。その他、脂肪酸合成、ビタミンDの活性化、体温調節にも関与している。過剰症は発生しにくい。カルシウムの約半量摂取するのが望ましい。
欠乏症-マグネシウムが慢性的に欠乏すると虚血性心疾患などの心臓血管の障害をもたらす。欠乏が進行すると、神経過敏症、筋肉のけいれん、不整脈、循環器障害がみられる。

3.リン(P)
 リンはカルシウムについで多く存在する無機質で、成人体重の約1%(約
500g)を占めている。そのうち、大部分がカルシウムとともに骨や歯に存在する。残りの大部分はタンパク質、脂質、糖などと結合した有機リン化合物としてすべての細胞に含まれ、細胞の構成成分として、また高エネルギーリン化合物(ATP)としてエネルギー代謝に供給するなど、多くの代謝反応に関与する。また遺伝情報を担う核酸にも含まれる。体液中のリン酸塩はpHや浸透圧の調節にも関与する。
欠乏症と過剰症-リンは日常食品中に十分含まれ、欠乏症はほとんどみられない。長期的に欠乏すると、骨の石灰化が阻害される。現在の日本の食生活では加工食品の利用増加に伴い、食品添加物として広く用いられているリン酸塩の摂取が多くなっている。リンの過剰摂取はカルシウムの吸収を低下させる。カルシウムとリンの摂取量の比率は1:1から1:2の範囲が望ましい。

4.鉄(Fe)
 鉄は体内に男性3.8g、女性2.3g含まれ、その60~70%が血液中のヘモグロビン、20~30%が肝臓、脾臓、骨髄などのフェリチン、ヘモシデリンに貯蔵鉄として、3~5%が筋肉中の酸素運搬・貯蔵物質のミオグロビンに、約1%が鉄含有酵素に存在している。体内に存在する鉄は機能鉄と貯蔵鉄に分けられ、貯蔵鉄の割合は男性は全身鉄の1/3であるが、女性は1/8である。食物中の鉄の形態は、ヘモグロビンやミオグロビンなどのヘム鉄や植物、乳製品、貯蔵鉄に含まれる非ヘム鉄(食品中の鉄の85%以上を占める)からなる。ヘム鉄の吸収率は非ヘム鉄の数倍高い。非ヘム鉄はビタミンCを同時に摂取すると吸収がよくなる。一方、穀類、豆類に含まれるフィチン酸、野菜などに含まれるシュウ酸、お茶に含まれるタンニンは吸収を低下させる。
 鉄は赤血球のヘモグロビンや筋肉細胞のミオグロビンの構成成分となり、酸素を運搬する。また種々の酵素に含まれATP生成に必要なため、エネルギー代謝にもかかわっている。
欠乏症-鉄欠乏は貧血、疲れやすい、頭痛、動悸を起こす。乳児では発育が遅れる。

5.ナトリウム(Na)と塩素(Cl)
 摂取した食塩はナトリウムイオンや塩化物イオンとして吸収される。吸収されたナトリウムは腎臓で調節を受けて、排泄される。ナトリウムは血漿浸透圧に関与している。血漿浸透圧が高くなると、脳視床下部の口渇中枢を刺激して水分摂取を促し、抗利尿ホルモンの分泌を刺激する。したがって、食塩の過剰摂取は高血圧発症因子である。高血圧発症の機序としては、循環血液量の増大が心拍手量を大きくすることによる。そのほかに腎臓のナトリウム排泄能の低下、内因性ジキタリス様物質の放出増大、交感神経亢進が考えられる。
 ナトリウムは体液の浸透圧の維持、細胞外液量の調節、酸・塩基平衡の保持、神経の興奮、筋肉の収縮、細胞膜の糖やアミノ酸の輸送などに関与している。
欠乏症-日常の食事でナトリウムが不足することはないが、多量の発汗に起因するけいれん、食欲不振、疲労などがある。
塩素は浸透圧の調節、酸・塩基平衡、胃酸としてペプシンやアミラーゼの活
性化、膵液の分泌刺激などに関与している。
欠乏症-腎臓にカルシウムが沈着する。

6.カリウム(K)
 カリウムは成人で約100g存在するが、大部分は細胞内にある。
 ナトリウムとともに浸透圧の維持、神経刺激の伝達、筋肉の収縮、水分の維持などに関与する。カリウムは腎臓でのナトリウム再吸収を抑制して尿中への排泄を促進するため、高血圧症に対して降圧作用がみられる。
欠乏症-カリウムは多くの食品に含まれるので欠乏症はほとんどみられない。

7.亜鉛(Zn)
 成人の体内に約2gの亜鉛が含まれ、95%以上が細胞内に存在している。全量の50%以上が筋肉に、約20%が皮膚に存在している。血液中には全量の0.5%が含まれ、その70%が赤血球中に、10~20%が血漿中に存在する。亜鉛は100種類を超える亜鉛含有酵素として機能している。また中枢神経活動、免疫系の発達と維持、遺伝子の転写制御、細胞の増殖と分化などに関与している。
欠乏症-成長障害、食思不信、発疹、味覚障害、免疫能低下、皮膚障害が起こる。亜鉛の吸収は鉄やカルシウムと拮抗し、フィチン酸により吸収が阻害される。

8.銅(Cu)
 人体に70~100mg存在し、肝臓や脳に比較的多く存在する。銅は銅含有酵素として機能している。また乳児の成長、ヘモグロビンの合成、骨の合成に関与している。
欠乏症-ヘモグロビンの形成が減少して、貧血になる。骨折・変形を起こす。

9.マンガン(Mn)
 マンガンは人体では肝臓、膵臓などの組織に比較的多く存在し、骨の発育に必要とされる。炭水化物、脂質、タンパク質代謝における各種酵素の活性剤として機能する。
欠乏症-体重減少、骨の生育低下、生殖能力低下、運動失調。

10.ヨウ素(I)
 ヨウ素は人体に15~20mg存在し、その70~80%は甲状腺に含まれる。甲状腺ホルモンの成分として、タンパク質の合成や交感神経の感受性に関与している。
欠乏症と過剰症―欠乏症は日本ではまれであるが、世界的には内陸地域では多くみられ、甲状腺肥大、肥りすぎ、疲労、発育停止が起こる。過剰摂取によっても甲状腺腫や甲状腺機能障害を引き起こす可能性がある。

11.セレン(Se)

 グルタチオンペルキシダーゼという酵素の成分であり、この酵素は抗酸化作用を有し、過酸化脂質を還元する。生体内で過酸化物から細胞を防御する役割を持つ。
 克山病という心筋壊死をともなう心疾患は中国でみられ、セレン欠乏が基本的誘因と考えられている。セレン過剰症としては脱毛や爪の変形がみられる。

12.クロム(Cr)
 糖代謝、脂質代謝、発育、免疫力に関与する。クロムの必要量は極めて微量であるため、通常は欠乏しない。クロムを取り扱う作業者は呼吸器障害などの過剰症がみられる。

13.モリブデン(Mo)
 キサンチン酸化酵素、フラビン酵素、アルデヒド酸化酵素の補因子として機能する。食生活が原因の欠乏症は知られていない。モリブデンを過剰に摂取すると銅欠乏症を発症する。
(近藤雅雄:必須ミネラル、2015年7月8日掲載)

ビタミン(水溶性)

1.ビタミンB1(チアミン)
生理作用:ビタミンB1は糖質が体内で代謝されるときに必要な酵素の補酵素として作用している。食物から摂取された糖質はグルコースに変えられ、血液中を血糖(グルコース)として運ばれ、各臓器で利用される。このグルコースを完全に燃焼し細胞内でエネルギーに変えるには、解糖系、TCA回路、呼吸鎖などの経路が必要である。この解糖系とTCA回路を結ぶ酵素にピルビン酸デヒドロゲナーゼがあり、この酵素の反応には補酵素としてチアミンにリン酸が結合したチアミンピロリン酸が必要である。
欠乏症:糖質が多い食生活の場合にビタミンB1が欠乏すると、脚気(多発性神経炎、浮腫)やウエルニッケ脳症(精神障害、運動障害、眼球運動麻痺)を起こす。

2.ビタミンB2(リボフラビン)
生理作用:ビタミンB2は生体内ではフラビンモノヌクレオチド(FMN)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)として存在している。両者は多種類の酸化還元酵素に固く結合して存在するが、これらの酵素はフラビン酵素として知られ、生体内の酸化還元反応に関与している。また水素伝達系の構成員として水素の運搬をする。すなわちビタミンB2は糖質、脂質、タンパク質からエネルギー(ATP)の生成に関与している。
欠乏症:口角炎、舌炎、皮膚炎

3. ビタミンB6(ピリドキシン)
自然界にはビタミンB6の作用のある物質としてピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミンの三つの型がある。生体内ではリン酸エステルとして存在しており、ピリドキサールリン酸(PLP)が活性型である。
生理作用:PLPは酵素の作用でアミノ酸と結合して、アミノ酸の代謝に広くかかわっている。したがって、タンパク質の摂取が多くなると、ビタミンB6の必要量が増加する。
欠乏症:ヒトでは腸内細菌によってビタミンB6が合成されることもあり、欠乏症は起こりにくい。欠乏が起これば皮膚炎、貧血を起こす。

4.ナイアシン(ニコチン酸、ニコチン酸アミド)
ニコチン酸とニコチン酸アミドを総称してナイアシンという。体内ではリボース、リン酸、アデノシンと結合してニコチン酸アミド・アデニン・ジヌクレオチド(NDA)あるいはニコチン酸アミド・アデニン・ジヌクレオチド・フォスフェート(NDAP)として存在し、補酵素として作用する。
生理作用:NDAおよびNDAPは多くの脱水素酵素の補酵素として水素の伝達反応に関与し、糖質、脂質、タンパク質の代謝に広く関与している。
欠乏症:ペラグラ(皮膚炎、下痢、中枢神経症状)、口舌炎、胃腸病

5.パントテン酸
パントテン酸は補酵素コエンザイムA(CoA)の構成成分である。
生理作用:体内でパントテン酸は補酵素であるCoAとなり、脂肪酸の分解と合成など広範な代謝にかかわっている。
欠乏症:動物がパントテン酸欠乏になると、成長障害、皮膚炎等などが起きることがある。ヒトでは腸内細菌がパントテン酸を合成するので欠乏症はあまりみられないが、重症の栄養失調症では手足の麻痺や疼痛がみられる。

6.ビオチン
ビオチンは酵素タンパク質と固く結合してビオチン酵素を形成している。
生理作用:ビオチンは代謝過程で生成する二酸化炭素を糖質や脂質に固定するピルビン酸カルボキシラーゼやアセチルCoAからマロニルCoAカルボキシラーゼなどの補酵素として重要な役割を果たす。
欠乏症:ビオチンは腸内細菌によって合成され吸収利用されるので、通常の食生活では欠乏することはない。しかし生卵白を大量に食べると、卵白中のアビジンという糖タンパク質とビオチンが結合して吸収を阻害するため、欠乏を起こすことがある。卵白を加熱するとアビジンの作用は消失する。ビオチン欠乏では、皮膚炎、筋肉痛、食欲不振、悪心などの症状を呈する。

7.葉酸(フォラシン)
ホウレンソウから抽出した成分が乳酸菌の増殖に有効であることが見出され、葉酸と命名した。
生理作用:葉酸の活性型であるテトラヒドロ葉酸は、1炭素原子の転移反応の補酵素として作用する。たとえばグリシンからのセリンの合成、核酸塩基の合成、コリンの合成、ヘモグロビンのポルフィリン核の合成などに関与している。
欠乏症:葉酸が欠乏すると巨赤芽球性貧血となり、さらに口内炎、舌炎、下痢などの症状を呈する。

8.ビタミンB12(コバラミン)
分子中にコバルトを含むのでコバラミンとよばれる。生体内では補酵素型であるアデノシルコバラミン、メチルコバラミン、ヒドロキシコバラミンとして存在する。
生理作用:生体内での補酵素作用としてはメチル基、転移反応、核酸の合成、アミノ酸や糖質の代謝に関与している。
欠乏症:ビタミンB12は赤血球の成熟に関係があり、欠乏すると悪性貧血を起こす。しかし腸内細菌が合成するので、一般的に欠乏症は起こりにくい。

9.ビタミンC(アスコルビン酸)
ビタミンCにはアスコルビン酸(還元型ビタミンC)とデヒドロアスコルビン酸(酸化型ビタミンC)がある。アスコルビン酸は酸化されるとデヒドロアスコルビン酸となるが、この物質は還元されるともとのアスコルビン酸に戻る。ビタミンCは体内に広く分布しているが、摂取量が多くても体内の貯留量はそれほど増えず、尿中に排泄される。
生理作用:アスコルビン酸の強い還元力で下記のような生体内の種々の酸化還元反応に関与して、アスコルビン酸はデヒドロアスコルビン酸になる。
① 過酸化脂質の生成抑制、ビタミンEの作用を増強。
② 肝臓の解毒物質の代謝に関与。
③ コラーゲン(結合組織タンパク質)の生成に関与。
④ 副腎皮質ホルモンの合成に関与。
⑤ フェニルアラニン・チロシン代謝に関与。
⑥ 鉄の吸収促進。腸管内での吸収を高める。
⑦ 発ガン物質であるニトロソアミンの生成抑制。
欠乏症:ビタミンCの欠乏により、結合組織のコラーゲンの生成が不足し、毛細血管が損傷しやすく、歯ぐきや皮下の出血が起こる。そのような症状を壊血病という。また小児では骨の形成不全がみられる。

ビタミン(脂溶性)

1.ビタミンA(レチノール)
 ビタミンAは動物性食品に含まれるレチノールと、植物に広く分布するプロビタミンAであるカロテノイド類が存在する。カロテンには3種類あるが、食品中にはβ-カロテンがもっとも多く、しかもビタミンA効力がもっとも高い。
生理作用:①眼の網膜にある視覚を司る物質であるロドプシンの構成成分となっている、②上皮組織における粘膜の糖タンパク質の合成に関与し、機能を維持している、③成長促進、細胞増殖と分化の制御、免疫機能の維持に関与している。
欠乏症:ビタミンAが不足すると、ロドプシンの生成が低下するため、暗いところで物を見る機能が遅れ、夜盲症となる。上皮細胞の角質化が起こり、皮膚、粘膜の乾燥により、細菌感染に対する抵抗力の低下がみられる。
過剰症:過剰に摂取すると肝臓に蓄積されて、急性の脳圧亢進症、慢性では成長停止、関節痛、脂肪肝などがみられる。

2.ビタミンD(カルシフェロール)

 天然には植物起源のビタミンD2と動物起源のビタミンD3があり、両者の生理活性はほぼ同じである。紫外線照射によりビタミンDに変化するものをプロビタミンDといい、ビタミンD2はきのこなどに含まれるプロビタミンD2から、ビタミンD3は動物の皮膚に含まれるプロビタミンD3から生じる。
生理作用:ビタミンDは体内で活性型に変えられ、カルシウムの吸収や骨への沈着、骨からのカルシウムの動員を司っている。このカルシウムの代謝は種々のホルモンも関与している。
欠乏症:幼児期に不足するとくる病、成人では骨軟化症を引き起こす。
過剰症:食欲不振、体重減少が起こり、血中カルシウム濃度が高くなるので腎臓、心臓、動脈にカルシウムが沈着し、動脈硬化や腎不全を起こす。

3.ビタミンE(トコフェロール)
 ビタミンEは天然には8種類あるが、重要なのは生理活性がもっとも高いα-トコフェロールである。
生理作用:ビタミンEは抗酸化作用(酸化防止作用)が強く、多価不飽和脂肪酸が酸化されるのを防ぐ作用がある。細胞内にはビタミンEの大部分が生体膜に組み込まれて存在しており、ビタミンEは抗酸化作用を通して生体膜を正常に保つ作用をしている。
欠乏症:ビタミンEが不足すると、血漿のビタミンE濃度が低下し、細胞膜が破壊されやすくなり、赤血球が溶血しやすくなる。動物ではビタミンE欠乏により不妊症や筋肉の萎縮が起こることが報告されているが、ヒトでは明確ではない。
過剰症:明らかではない。

4.ビタミンK(フィロキノン)
 生理作用:血液の凝固にはプロトロンビンが必要であり、肝臓でのプロトロンビン合成にビタミンKが関与している。またビタミンKはビタミンDとともに骨の石灰化を促進して、骨形成に重要な役割を果たしている。
欠乏症:ビタミンKが欠乏すると血液中のプロトロンビンが減少して、血液の凝固を遅延させる。
過剰症:嘔吐、腎障害

サプリメントとは、利用にあたっての注意事項

サプリメントの名称は米国で1994年にできた栄養補助食品健康教育法(Dietary Supplement Health and Education Act; DSHEA)からきています。これは単にサプリメント法とも呼ばれていますが、この英語名「dietary supplement」を直訳したものに近いものです。それによると、ビタミン、ミネラル、ハーブ類、アミノ酸などの成分を1種類以上含む栄養補給のための製品で、錠剤、カプセル、粉末、ソフトゲル、液状など、通常の食品以外の形状をとるものはすべてサプリメントと呼ばれ、日本では「栄養補助食品」と訳されることが多い。

米国の健康補助食品
1.ビタミン類
2.ミネラル類
3.ハーブ類(漢方も含む)
4.植物性のもの(生薬類なども含む)
4.アミノ酸類
5.食事として摂取されているもの
6.濃縮されたもの
7.代謝産物
7.構成成分
8.抽出されたもの

 これは食事療法、運動療法、薬物療法にとってかわる物ではなく、健康リズムを回復または維持していくための補助的に利用すべき食品であり、摂取するタイミングや取りすぎには注意が必要です。
サプリメント(または健康食品)が国内で利用されている背景・目的として、
①現在の日本においては食の西洋化によって油脂や糖質などの高エネルギー食品が増える一方で野菜、雑穀類、穀物類など、また、食物繊維のような低エネルギー食品成分やミネラル、ビタミンといった微量栄養素を多く含む食品の摂取量の減少による補助として
②農薬や産業廃棄物による食品の質の低下による補助として
③土壌の劣化に伴う植物含有栄養素の減少や輸送手段の発達による品質の低下(未熟な野菜、果物の収穫による栄養素の不足)による 補助として
④養殖魚や養鶏で使われている抗生物質など人為的操作による品質の低下を補助するため
⑤健康志向
⑥合理化思想の浸透
⑦核家族の進展による食生活の貧困
⑧健康食品企業の加熱宣伝の効果
⑨人から勧められたり、人が使用しているとまねたりする
⑩スーパー、コンビニ、飲食店、ファーストフード店などの乱立
⑪疲労回復、精力増強などに即効性がある
⑫病気の予防や体質改善(肥満を含む)のため

などが挙げられます。こられの結果、家できちんと食事を摂らないで、手軽に健康を支える食品として、「いわゆる健康食品」といわれるものが氾濫していると思われます。健康食品と類似の名称として健康補助食品、健康栄養食品、栄養補助食品、ダイエタリ・サプリメント、健康飲料などがあり混乱していますが、健康食品に対する明確な定義はありません。

サプリメント利用にあたっての注意事項!

1.サプレメント利用にあたっては十分な情報を得て、ご自分の判断にて選択してください。
2.ここに記載したサプレメント(アカサタナ・・・順)が健康食品に含まれているとしても、その安全性・有効性が十分であるとは限りません。
3.これらの情報には動物実験結果のものもありますので、有効性については、ヒトを対象とした研究情報が重要です。また、人によって、体調によって、服用する医薬品によって、さらに食べ物によってその効果は異なりますので、健康食品を摂取する場合は十分に注意してください。
4.何らかの病気を持っている方は、健康食品を摂取する際には医師へ相談してください。摂取して、もし体調に異常を感じたときは、直ちに摂取を中止して医療機関を受診してください。
(近藤雅雄:サプリメントとは、2015年6月17日掲載)

日本型食生活と健康

平成17年10月5日、虎の門パストラル(東京)にて第6回健康食品フォーラム「『食育』と健康食品」(主催:財団法人医療経済研究所・社会保険福祉協会、後援:内閣府、厚生労働省、農林水産省、文部科学省)をテーマに基調講演が行われました。その内容を一部修正して、掲載しました。

講演内容は、現代の健康問題を日本人が古来から獲得してきた「日本型食生活」の観点からとらえなおすとともに、日本型食生活が欧米型の食生活と比べてどう優れているのか、さらに高齢者に対する食育啓蒙が食育全体に及ぼす効果に関する介入試験の結果をご紹介し、最後に健康健康フォーラム0510食品の現状と食育に関して、それぞれ科学的根拠を基に解説いたしました。
内容は、以下の順にそって解説いたしました。

1.生活の乱れが生む生体リズムの乱れ
  食育(社福協)1pdf 近藤
2.食育の教育的アプローチと環境的アプローチ
  食育(社福協)2pdf 近藤
3.抗酸化栄養素・魚介類の摂取が日本型食生活の特徴
  食育(社福協)3pdf 近藤
4.高齢者への食育・健康意識の啓蒙が食育の輪を広げる
  食育(社福協)4pdf 近藤
5.健康な身体の第一歩は生活リズムの構築から
  食育(社福協)5pdf 近藤

(近藤雅雄:日本型食生活と健康、2015年6月15日掲載)

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