こころとからだの健康管理」カテゴリーアーカイブ

こころとからだの健康(15) 脳を元気にする食と栄養素

「こころとからだの健康(10)脳に良い食品、期の需性食品とその成分」の改訂版である。
 脳は大脳、間脳、脳幹および小脳から構成され、心身(こころとからだの働き)の司令塔である。とくに、大脳皮質は感覚・運動の統合、意志、創造、思考、言語、理性、感情、記憶を司り、前頭連合野は人間中枢とも言うべき重要な働きを行っている。脳を元気にするためには脳に必要な栄養素の摂取と適度な有酸素運動の実施および良い睡眠をとることが基本である。
 近年、アルツハイマー病やうつ病などの疾病が社会問題となっている。2015年、国際アルツハイマー病協会は認知症の新規患者数は毎年約990万人、2050年には1億3200万人に達し、現在(約4680万人)の3倍になると“世界アルツハイマー報告書2015”に発表した。高齢社会においてその数は急激に増加している。認知症には①アルツハイマー型、②脳血管性、③レビー小体型、④ピック病、⑤混合型、⑥その他などがあるが、この内、70%近くがアルツハイマー病であり、酸化ストレスが病気の進行に大きく寄与している。また、最近、疲労の原因は脳の眼窩前頭野で疲労感として自覚することによると言われ、これも酸化ストレスが関わっている。
 そこで、本論文では情報化・高齢化の時代に認知症やうつ病などの脳の障害を予防し、いつまでもイキイキした脳を維持するために必要な食品および有効成分について文献調査を行った。

Ⅰ.脳が元気になる食品
 人は美味しいものを食べると自然と笑顔となるが、これは脳が元気になったのではない。逆に、濃い味付けや甘いものなどは習慣化し、脳はじめ多くの生体機能にダメージを与えるので注意する。自らの健康は自らが守ることを意識し、脳に良い食品を意識的に摂取することが大切である。

Ⅱ.脳の活性化が期待される主な有効物質
 脳の機能保持には脳の構成材料、脳代謝に不可欠な栄養素および酸化ストレスに対する抗酸化物質の摂取を日常的に意識して摂取することが望ましい。抗酸化物質として、ポリフェノールは植物の色素や苦味の成分であり、アントシアン、タンニンやカテキンなどのタンニン類、ケルセチンやイソフラボンなどのフラボノイド類からなる。フラボノイドは植物に広く存在する色素成分でクロロフィルやカロチノイドと並ぶ植物色素の総称である。広義には赤、紫、青を発するアントシアニンもフラボノイドに分類される。フラボノイドを豊富に含んでいる食品としてはチョコレート、ココア、緑茶、紅茶、赤ワインなどが知られ、注目されている。
 これら抗酸化物質の作用としては活性酸素を除去し老化抑制、抗凝固、血圧降下、消臭、血管保護および血流増加、動脈硬化や心臓病の予防、免疫力増強、抗菌・抗ウイルス・抗アレルギー、血管保護、抗変異原性、発癌物質の活性化抑制など、多様な作用が推測されている。ビタミンC・E、クエン酸を含む食品と併用すると抗酸化作用の相乗効果を示す。
 なお、抗酸化物質についてはいずれも食品として摂取することが望ましく、サプリメントとして摂取する場合は過剰摂取による問題などがあり、十分に配慮することが大切である。(近藤雅雄:平成29年3月25日投稿)
内容の詳細をPDFに記載した。
PDF:こころとからだの健康(15)脳を元気にする食と栄養素2017.3.25

こころとからだの健康(14) 遊びから学ぶ幼児教育、子育て習慣および期待される人材

 この数十年の間に子育てに関する社会環境は大きく変化しました。核家族化や男女共同参画社会の進展など、例を挙げればきりがありません。そうした現代社会において最も懸念されるのは、子育てをする親が孤立してしまうことです。そこから多様な悲劇が起こるとも限りません。昔は大家族、そして近所に子どもの遊び場が沢山あり、親子ともども自然に地域コミュニティーが形成されていました。しかし、都市化と共にそうしたコミュニティーは徐々にその姿を消し、結果として子育てについて気楽に相談できる環境も減少しています。子育てには周囲のサポートが不可欠です。家族の協力は勿論のこと、地域社会の協力も必要です。どれだけ時代や社会環境が移り変わっても、「子どもは一人で育てるものではない」ことに変わりはありません。
 そこで、幼児教育の基礎と子育て習慣について考えました。現在、子育て中の保護者の参考になれば嬉しいです。(近藤雅雄:平成28年5月8日掲載)

幼児教育の基本~人間形成の基盤を成すこころの教育とは
 この地球上にて生を受けた人間は地球の恵みに感謝し、自然の恵みを大切にする。そして、自分自身を愛し、家族、友だちを愛し、社会、地球を大切にできる。そんな人間らしさと幸福感に満ちた環境にて子どもを育て、次代に繋いで行く。それが親の責任だと思います。子育て並びにヒトの本質はいつの時代も同じであり、それは「遊ぶこと」です。遊びの環境を設定し、育てるのが保護者の役割です。
 多様な遊びは様々な体験・体感を通して、生きるこころと力、いのちを大切にするこころ、他者を思いやるこころを学びます。これが人間形成の基盤を成すこころの教育であり、人としての基礎となります。
 そのためにも、「教育」を共に育むとした「共育」のこころを持つことです。父親、母親の育った環境とこれからその子どもが育つ環境では20年以上の隔たりがあり、それと共に成育環境は大きく変化しています。したがって、子どもの目線で子どもの育つ時代の環境にて子どもを育むことが大切です。
人の本質
遊びから学ぶ子育て
 人間には「言語的知性」「音楽的知性」「絵画的知性」「論理数学的知性」「身体運動的知性」「感情的知性」「社会的知性」という8つの知性があると言われています。これらの知性は就学前の4~5歳前後をピークとして形成されるもので、「遊び」によって育まれます。人間の知性、こころは脳の活動に直結していますので、就学前こそ、幼児教育に必要な多くの遊びや体験・体感によって、豊かな知性を育むことが重要で、それが成人になって一つまたは複数の知性が大きく育つ要因になります。
 多くの親が子どもの「教育」について悩んでいるようですが、子育てには迷いや不安はつきものです。難しく考える必要はありません。なぜなら、子どもの成長に最も必要なのは、この「遊び」だからです。とくに幼少期の教育は「遊びの場を用意してあげること」くらいに考えて丁度良いのではないかと思います。お父さん、お母さんはまず、子どもと一緒に遊んであげることから始めましょう。楽しそうな親の姿を見ると、子どもはもっと楽しくなります。そうすると図に示しましたが、好奇心・集中力が増し、さらに多くの事を遊びから吸収するようになります。それが創造力や自発性、課題発見力、さらには生きる力へとつながっていくのです。
 もちろん、親も子どもが遊ぶ中から学ぶことは沢山あります。よく言われることですが、やはり教育は「共育」、育児は「育自」なのです。ぜひ「子どもと」遊ぶ中で「子どもを」学んでください。学びに対する親の姿勢は、必ず子どもに受け継がれていきます。“共育の質の向上は人生の質の向上を担保する”ように子どもとその家族はそれぞれの道、人生に一つの目標・志を持ち、前向きに生きるこころを身に付けます。そして、“社会が求める人間力”が育まれます。
人間としての基礎力
社会が求める人材
 “社会が求める人間力”とは図に示しましたように、3つのパワーから成ります。これは社会・国家が求める人材であり、この基礎が幼児期の「遊び」から養われます。人間社会で生きる上で重要なこの3つのパワーとは、①前に踏み出す力(action power);すなわち、主体性を持って前向きに働きかける力、実行力、②考え抜く力(thinking power);すなわち、課題発見力、計画力、創造力、③チームで働く力(teamwork power);すなわち、発信力、傾聴力、柔軟性、状況把握力、起立性、ストレスコントロール力が身に付きます。これらの基礎力を身に付ける上で基本となるのが、以下に挙げた家族の子育て習慣です。

父親・母親の良い子育て習慣
1.家族の間で、朝起きたら「おはようございます」と言い、毎日挨拶を欠かさないようにしましょう。また、一日に最低一度は食事など団欒の時間を作りましょう。
2.家族は毎日きれいな言葉を使うように努力しましょう。子どもに「お前」「てめえ」「がき」などの汚い言葉で呼ばず、一人の人間として人格を尊んで名前で呼んでください。
3.家族はすべて一人ひとり、お互いに人として尊敬し合い、お互いが感謝のこころを持って接するように努力しましょう。
4.家族は一つの組織です。一人で頑張らないで家族で協力・分担して、日常的に楽しく笑顔を絶やさないよう前向きに生きる努力をしましょう。また、子育てを応援してくれる良い友達を複数持ち、コミュニティーを大切にしましょう。
5.子どものこころの痛みを自分のこころの痛みとして感じる「思い遣り」のこころを持ちましょう。また、子どもとのスキンシップによるコミュニケーションを大切にしましょう。
6.お互いを理解し合い、人の言うことをよく聞きましょう。また、何でも相談し合える環境を創るよう努力しましょう。これらが人間関係を形成していく上で大切になります。
7.子どもを泣かすより笑顔を引き出すように努力しましょう。子どもが病気でもないのに泣くのは、悲しいか、怖いかのどちらかです。子どもの気持ちを理解することが大切です。
8.子どもが良いことをしたときや、言うことを聞いたとき、頑張ったときなどは積極的にほめてあげましょう。叱りつけるよりもほめることを優先し、子どものやる気・意欲・能力を引き出すように努力しましょう。「教育」とは「引き出す」という意味でもあります。
9.自然に接する機会をたくさん作り、体験・体感を豊かに育てましょう。ノーベル賞学者など世の中の偉人と呼ばれる人のほとんどが、幼児期には遊びの多い自然の中で育っています。
10.「sense of wonder」という言葉があります。これは「不思議さや神秘さに目を見張る感性」を指し、子どもの教育に大変重要です。子どもは成長過程で様々な体験・体感を通して好奇心、自発性、創造力をからだとこころで育みます。

参考図書
近藤雅雄:子育てハンドブック、Tokyu Child Partners、東急グループ、2015
澤口俊之:幼児教育と脳、文春新書、2004
浜尾実:子どもを伸ばす一言、ダメにする一言、PHP文庫、2001
(近藤雅雄:平成28年5月8日掲載)

こころとからだの健康(13)目の病気の予防・対策に必要な栄養素と食品

 近年、スマホやコンピュータ、大画面テレビなどの急速な発展による生活環境の変化に伴って眼精疲労・ドライアイを自覚する人が増加すると共に白内障、緑内障、加齢黄斑変性などの失明に至る眼病が注目されるようになった。これら背景にはスマホやコンピュータの発展以外に高齢人口の増加と日常的なストレス、偏った食事、無理なダイエットなどによるビタミンやミネラル類の過不足など、栄養障害が考えられることから目の病気も生活習慣に関わる疾病と言える。
 目はこころとからだの健康維持に重要であり、目の病気は様々な行動の妨げとなるなど、日常生活への負の影響は計り知れない。疲れ目やかすみ目で悩んでいる人、スマホやパソコンなどで目を四六時中酷使している人や自動車やトラックのドライバー、飛行機のパイロットなどは一度自分の食生活を見直すことが大切である。普段の食事を意識して摂取する習慣を身に付けたい。食事で摂取できない時は視力回復のサプリメントや緑黄色野菜、果物などを積極的に摂りいれることも考えたい。
 世界の中でも日本人の視力低下は著しく、最近の調査では約83%の人がメガネかコンタクトを使用し、近視の低年齢化が問題となっている。目に関することわざは多数あるが、その中で「目は心の鏡」「目は人の眼(まなこ)」と言われるように、目はこころとからだの入力部位であり、こころとからだを映し出している。目は生体すべての感覚情報の約80%を占めると言われ、生体に入る情報は目に依存していると言える。
 人間において、視力が形成されるのは生まれてから後天的に徐々に発達し、5~7歳位までに完成すると言われている。したがって、この期間における目のケアーにはとくに十分に注意したい。また、目は12~13歳頃から老化が始まると言われている。生涯において目を大切にするこころを持って、目の健康に気を配り、食環境と同時にストレス解消の方法を自分なりに考え、美しい目を保持したいものである。
 本稿では目の病気の予防・対策に必要な栄養素・食品について調査を行った。論文の内容はⅠ.視覚と目の病気(1.視覚の性質、2.目の病気、3.失明の原因となる疾患)、Ⅱ.眼病の予防に良いとされる栄養素と食品(1.眼精疲労・ドライアイに良い栄養素、2.近視抑制に良い栄養素、3.白内障、加齢黄斑変性などに良い栄養素、4.抗酸化物質の機能、5.ブルーベリーは目が良くなる食べ物の代表)、Ⅲ.眼に良い栄養素(1.抗酸化物質、2.ビタミン類、3.ミネラル類、その他)からなる。
 内容詳細は以下のpdfを参照されたい。(近藤雅雄:平成28年2月8日掲載)
こころとからだの健康(13)眼の病気の予防・対策に必要な栄養素{pdf}

こころとからだの健康(12)生体防御機構と免疫システム 

 こころとからだの健康管理には日常的に免疫力を強化することが重要であり、それによって、QOLの向上並びに健康寿命の延伸を図ることが可能となる。
 免疫とは疫病から免れると書くが、正しくは、自己と非自己(異物)を識別し、非自己を排除することによって生体の恒常性を維持しようとする防御システムであり、自然免疫と獲得免疫から成る。一般的には、主に後者の感染症予防的な意味合いが用いられ、病原微生物などの異物が体内に侵入した時の生体防御システムとよく言われる。しかし、現代社会においては、免疫機能を低下させる要因として、各種生体内因子および生体外因子が関与し、これら要因によって体内で発生する活性酸素によるストレス(酸化ストレス)が免疫の機能、すなわち、生体の機能を低下させることが明らかとなった。免疫機能の低下は感染症、生活習慣病、がんなどのさまざまな疾患の発症と強く関係していることから、免疫強化によってこれら疾患の予防が図られる。
 ここでは、免疫の中心となる血液中の白血球細胞群を中心とした生体の防御反応(感染防御)について紹介する。以下のpdf参照。(近藤雅雄:平成27年10月21日掲載)
こころとからだの健康(12)生体防御と免疫システム

こころとからだの健康(11)ホメオスタシスと生体リズム 

 生活習慣が乱れると生体のリズムが乱れ、こころとからだに何らかの異常が生じる。逆に、こころとからだに異常が起こると生活習慣も乱れてくる。このことから、生活習慣および生体のリズムは心身の健康にとって大変重要であることが理解できる。
 さて、現代人の祖先は約500万年前にチンパンジーとの共通の祖先から分かれ、その後、独自の進化が行われてきた。この長い期間で、人類は様々な環境に適応・順化しつつからだの構成とその機能が獲得されてきた。
 生体が外部環境の変化に対応して生存を図ることを生体の適応といい、環境因子の長期にわたる変化に対して起こる生体の変化を順化という。これらのしくみは視床下部を中心とした体温、血圧、呼吸、摂食、血糖、免疫など多数の調節機能に関与するプログラムによって生体内のすべての器官が協調的生理過程を維持しながら、より安定状態を保つように進化してきた。その結果、現代の環境に適応しつつ生体の内部環境の恒常性(ホメオスタシス; homeostasis、同一の(homeo)状態(stasis)を意味するギリシア語からの造語)を維持してきた。
 ここでは、ホメオスタシスと生体リズムについての概念の確立と、その経緯を延べる。以下のpdf参照。
(近藤雅雄:平成27年10月21日掲載)
こころとからだの健康(11)ホオスタシスと生体リズム

こころとからだの健康(10)脳に良い食品、機能性食品とその成分

 脳は大脳(皮質、辺縁系、基底核)、間脳(視床、視床下部)、脳幹(中脳、橋、延髄)および小脳から構成され、心身(こころとからだの働き)の司令塔である。特に大脳皮質は感覚・運動の統合、意志、創造、思考、言語、理性、感情、記憶を司る人間としての最も重要な器官であり、その中でも前頭連合野は人間としての中枢とも言うべき、様々な重要な働きをし、哺乳動物の中では一番重たい。脳は骨格筋、肝臓に次いで基礎代謝量が高く、多くの栄養素を必要としているため、栄養の摂取バランスの異常や不足は脳の機能にダメージを与え、こころとからだに様々な影響を与える。その代表的なものとして、近年、アルツハイマー病やうつ病などの疾病が大きな問題となっている。2012年の世界保健機関の報告によると、認知症患者は毎年770万件増加し、その数は世界中で3,560万人と推定されている。これが2030年までに倍増、2050年までに3倍以上(1億人以上)になると予測されている。認知症には①アルツハイマー型、②脳血管性認知症、③レビー小体型認知症、④ピック病(前頭側頭型認知症)、⑤混合型認知症、⑥その他などがあるが、この内、70%近くがアルツハイマー病という。
 そこで、認知症やうつ病などの脳の障害を予防し、脳(こころとからだの司令塔)の働きをよくする食品および有効成分について文献調査を行い、こころとからだの健康に役立つ資料とした。
掲載した食品および機能性物質は以下の24食品、24物質であり、その詳細はpdfに掲載した。

1.脳(アンチエンジング)の活性化が期待される食品
 亜麻の種(亜麻仁油)、イチョウ葉、オリーブオイル、カワカワ、くるみ、ココア、コーヒー、魚、ザクロ、センテラ(ゴツコーラ、ブラーミ、ツボクサ)、SOD様作用食品、セイヨウオトギリソウ、セイヨウカノコソウ、ダークチョコレート、納豆、ニンニク、ビルベリー、ブルーベリー、ほうれん草、豆類、松葉、ムール貝、ヨヒンベ(ヨヒンビン)、緑茶の24食品。

2.脳に良いとされる機能性物質
 アスタキサンチン、アントシアニン、イソフラボン、カテキン、γ‐アミノ酪酸(GABA、ギャバ)、ギンコライド、グルタチオン、コエンザイムQ10、サポニン、ジメチルアミノエタノール、食物繊維(不溶性食物繊維、水溶性食物繊維)、タウリン、テアフラビン、テアニン、DHA、トリプトファン、ビフィズス菌、分岐鎖アミノ酸(BCAA)、フェルラ酸、ホスファチジルセリン、ポリフェノール、フラボノイド、メラトニン、レシチンの24物質。
 原稿は以下のpdfを参照されたい。(近藤雅雄:平成27年10月6日掲載)
こころとからだの健康(10)脳に良い食品、機能性食品

こころとからだの健康(9)治療と治癒

 生体には様々なバイオリズムがあり、そのリズムの乱れは、脳の視床下部を中心とした体内の恒常性維持機能(これをホメオスターシスという)によって常に無意識的に自己診断、修復、再生の3つの機能が働き、健康状態に戻そうとする治癒力が働いています。
 健康とは完全にバランスの取れた状態であり、これが崩れたときに健常な状態に戻そうとします。この勢いは人為的に作用させることが可能であり、それは治療によって成すべきです。治療と治癒との関係は、治療は受身的であり、病を外部から叩くのに対して、治癒は能動的であり病を内部から除去することを指します。

1.医学誕生における2つの神話
1)医神 アスクレピオス(Asclepius)
 病気の治療は基本的に抗医学であるというのが現在西洋医学思想の根本であり、病気のプロセスを内部に押しやるという本質的に対抗的・抑圧的な医学です。

2)健康神 ヒュギエイア(Hygeia)
 治癒力の強化(自発的治癒、spontaneous healing)は東洋医学をはじめとした西洋医学以外の伝統医学の根本思想です。この思想は現在の西洋医学の一分野である衛生学に見られ、衛生学を健康神の考えを取り入れHygieneと命名されましたが、現代の衛生学は疫学や中毒学が主流であり、ヒーリングシステム(治癒系)、すなわち、自己診断、修復、再生の機序解明に関する研究はこれまであまり行われてきませんでした。また、衛生学は予防医学としての代替、補完、相補医療の領域が重要と思われますが、広く公衆衛生学という見地からすれば、医学部のみで究明できるものではなく、理工学、人文科学、家政学、栄養学、人間科学など多領域に渡る学際的研究分野であるべきです。

2.主な伝統医療 
 日本には貝原益軒(1630~1714)の「養生訓」が有名ですが、明治時代以降医師の権力が著しく増大し、西洋医学一辺倒となっていきました。一方、世界では、アーユルヴェーダ医学、鍼療法、バイオフィードバック、ボディーワーク、中国医学、カイロプラクティック、イメージ療法、生薬医学、ホリスティック医学、ホメオパシー、睡眠療法など多数が知られています。このうち、よく知られているのがインドの伝統的医学であり、ユナニ医学(ギリシャ・アラビア医学)、中国医学と共に世界三大伝統医学の一つでるアーユルヴェーダです。サンスクリット語で長寿の知恵と言います。問診、触診、脈診など患者の様子を細かく観察して診断し、食事療法、薬草療法(生薬、動物薬、鉱物薬)、スチームバスやオイルマッサージなどがあり、インドの庶民の医学となっています。

3.ボブ・フルフォードの教え 
 フルフォードの医学は病気を抑圧するのではなく、からだに備わっている潜在的な治癒力の発現を助長する、非侵襲的な医学であり、古代ギリシャの医師であったヒポクラテスの2大訓戒「①Primum non nocere:傷つけてはいけない、②Vis medicatric nature:自然治癒力を嵩めよ」を遵守し、「①からだは健康になりたがっている、②治癒は自然の力である、③からだはひとつの全体であり、全ての部分は1つに広がっている、④こころとからだは分離できない、⑤治療家の信念が患者の治癒力に大きく影響する」の五つの知恵を実践した。このフルフォードの教えについてはアンドルーワイル著の「癒す心、治る力」は、「自発的治癒とは何か」、「8週間で甦る自発的治癒力」の2冊からなる書物に記載されています。医師をはじめとする治療家には一度は必読されることを望みます。
参考文献:①アンドルーワイル著、上野圭一訳:癒す心、治る力、角川書店、1995年。
(近藤雅雄:平成27年9月2日掲載)

こころとからだの健康(8)肥満対策

 肥満とは単に体重が多いということではなく、脂肪量(中性脂肪)が過剰に蓄積した状態をいい、脂肪が増量している組織および場所(分布)によって皮下脂肪型(下半身型、洋梨型)肥満と内臓脂肪型(上半身型、りんご型)肥満に分類されます。生活習慣病との関わりがあるのは内臓脂肪型肥満です。
 肥満発症の原因は①食べ過ぎ、②誤った食事パターン、③運動不足、④遺伝、⑤熱産生機能障害などが挙げられますが、生活習慣による影響が多いことが分かっています。

1.肥満のメカニズム
 肥満のメカニズムの研究は1994~1995年に肥満の遺伝子およびその受容体遺伝子などが相次いで発見され、漸く肥満のメカニズムの概要がわかってきました。ヒトの体重は身長に対して設定されたように遺伝子によって食欲や消費エネルギーが調節されています。その調節には主に①レプチン(白色脂肪細胞から内分泌される蛋白質で摂食中枢を抑制する。すなわち、もう食べなくても良いという信号を脳に伝える。レプチンとはギリシャ語で“やせ”の意味です)、②レプチン受容体(視床下部の摂食中枢に存在する)、③β3アドレナリン受容体(エネルギー倹約遺伝子)、④脱共役蛋白(UCPファミリー;ミトコンドリア内膜に局在する蛋白で、ATP生産を伴わずに熱産生を行う)などが関与し、これらの遺伝子の異常と様々な環境要因が肥満を発症させる原因となります(肥満に関連した遺伝子は約70種類存在するという)。
 近年、急速に肥満者が増加(とくに小児の肥満が多い)し、社会問題となっていますが、その原因は過食や運動不足などが考えられます。

2.小児肥満の対策
 小児肥満の問題点として、①成人肥満への移行、②生活習慣病の発現、③いじめの対象となるなどがありますが、これらの対策として、こころの教育が最も大切です。小児肥満は、①家族、学校での教育(共育)、育児(育自)、②食生活改善、③糖質、脂質の摂取量を減らす、④積極的に運動を奨励する、⑤ダイエットの自重などによって予防することができます。

3.食事と健康
 こころとからだの健康を堅持していくために最も重要なのが食です、日頃から食に対する考え、興味を持ち、栄養についての正しい知識を身に付けたいものです。
 栄養は生命を維持するために必須な行為であり、その目的は生体機能の調節、生体組織の修復・再生、体温生産およびエネルギーの獲得などです。栄養素の摂取が十分であるかないかは、年齢に適した発育(身長・体重)、日常作業に十分見合った体力(作業能力)、病気に対しての抵抗力(免疫力)、などによって栄養状態が判定されます。
 これらの栄養状態が適正であるためには栄養素の過不足がないようにバランスよく食事摂取することが重要です。特に、食事は日常の生活習慣に欠かせない現象であり、生活習慣と深くかかわる病気の予防や改善のためには、毎日の食生活、食事に気を配ることが重要です。

4.肥満を誘発する原因が氾濫
 近年、24時間営業のコンビニエンスストアで外国の食材、加工食品、健康食品が氾濫し、気安く購入できることから需要が急増しています。しかし、これらの食品には一時のファッション的な、科学的裏づけのないものが多く出回っています。また、外食産業が発展し、今や欧米と同じように日本人の食生活並びに健康管理は個人に委ねる時代となりましたが、その結果、日本人の肥満人口が増加し、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病が蔓延することとなりました。

5.太らないための10か条
 肥満は①生活習慣病に直結する、②免疫力が低下する、③動きが鈍くなる、④息切れがするようになる、⑤やたらに汗をかく、⑥寿命が短くなる等、デメリットが多く、メリットがあまりありません。私も、青年期に56㎏であった体重が、中年期には過食と運動不足によって70kgと過体重となり、様々な生活習慣病を発症すると共に、先に挙げたデメリットが出てきました。そこで、健康について意識するようになり、これまでの生活習慣、特に食に対する意識を変え、日本人本来の日本型食生活に変えてから体重が減少し、現在は青年期の56㎏に戻すことに成功すると同時に生活習慣病もなくなりました。以下に、私の経験に基づき作成した太らないための条件を挙げます。

太らないための10か条
1)自分の体質を知る
2)1日3食、時間をかけて楽しくいただく
3)食塩、脂肪類は控えめに
4)刺激物、甘物、アルコール類などの嗜好品は控えめに
5)毎日野菜、海産物を多く食べる
6)寝る2~3時間前までに食事を終える
7)1日30分以上の運動(有酸素運動、徒歩1万歩)を行う
8)からだをこまめに動かす
9)体重計に乗る習慣をつける
10)入浴中は腹式呼吸を行い、ストレス解消を図る

6.健康度に対する健康指数
 標準体重は身長(m)×身長(m)×22によって、また、肥満度(BMI:体格指数)は体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)によって求められます。評価は、BMI 18.5~25が正常で、18.5以下がやせ、25以上が肥満です。やせすぎの場合も病気の罹患率が高く、BMI=22が最も病気の罹患率が低いと言われています。
(近藤雅雄:平成27年8月30日掲載)

こころとからだの健康(7)摂食障害

摂食障害 拒食や過食などの摂食障害は年々増加の傾向にあります。その病因は成熟恐怖や家族問題などの心理的要因(心因説)、摂食調節因子異常などの生物学的要因(身体因説)、ダイエット流行などの文化・社会的要因(文化・社会因説)などが考えられ、また、これらの要因が相互に関連しあって発症する多元的モデルが広く受け入れられています。
 一方、拒食と過食は相反するもののように捉えがちですが、拒食症から過食症に移行するケースが約60~70%出現し、「極端なやせ願望」あるいは「肥満恐怖」などが共通し、病気のステージが異なるだけの同一疾患と考えられています。

1.拒食症(神経性食欲不振症、神経性無食欲症)
 とくに若年層(思春期)の女性に多く、また、先進国に多いことから文化的要因も含まれていることが推測されます。
 この病気は体重増加への強い恐怖心を持つものが多く、その発症には第2次性徴期における特有のこころとからだの成熟のアンバランスからくる不安定な心理状態が関与しているといわれています。症状としては、女性の場合は拒食のために体重減少(標準体重の-20%以上)、無月経、性ホルモン低下、糖質コルチコイド(ステロイドホルモン)上昇などを引き起こし、「うつ」に移行することもあります。また、時には隠れ食いをしては嘔吐を繰返すこともあります。重症例では死亡することもあります。

2.過食症(神経性大食症、神経性過食症)
 過食症の場合は1週間に2回以上ヤケ食いやドカ食い(俗に週末過食症候群などと言われる)が見られ、結果的には肥満(単純性肥満)となりますが、体重増加を止めるため食べたあと吐くこともあります。原因は不明ですが、認知行動療法(体重と自己評価)や抗うつ剤が効く場合もあるということです。
 拒食症や過食症はこころの病が中心であることは間違いなく、その治療には、体重を調節するだけではなく、摂食障害についてよく理解し、ストレスとなる原因を早期に発見、その対処を考えることがなによりも大切です。
(近藤雅雄:平成27年8月30日掲載)

こころとからだの健康(6)ストレスと心身の障害

ストレス 現代社会はストレスに満ち溢れ、社会生活上、学校、会社、家庭内などでよく遭遇する不安、悲しみ、失望、恐怖、また、突発的な事件に巻き込まれたり、大きな災害に遭遇したりなど、後天的にこころが傷害されることが多く見られます。これは日本が抱える課題の一つである自殺者の増加と決して無縁ではありません。
 こころが健康であるということは、感情(気持ちや気分)と精神(理性)が健全で、社会と調和した生活を営んでいる状態と言えます。このような状態から外れるとこころの健康に異変が生じ、やがて「こころの病」へと進展します。
 ストレスが原因で起こる「こころの病」の代表が「心身症」「神経症」「うつ病」ですが、これらは関連している部分も多く、厳密に区別できないことがあります。この中で、「うつ病」はこころの風邪と言って誰でもなる病気ですが、年々患者数が増加し、放置すると自殺へと進展するので、予防医学上早期対策が望まれています。
 一方、からだの疲労がこころの疲労に移行する「累積疲労」が知られています。また、「慢性疲労症候群」も知られていますがこれらこころとからだの疲労には必ずその原因が存在します。まずは、睡眠時間を十分に確保し、成長ホルモンの分泌を高め、疲れを解消してから、疲労の根本となる原因について相談し、早めに除去または対策を講じることが必要です。

1.心身症
 心身症はどの年齢層でも発症しますが、特に働き盛りの中高年齢者に多く見られ、こころの過度の負担(心理的、社会的ストレスが過剰に加えられた状態)が、内臓諸臓器に器質的ないし機能的障害となって現れる病気を言います。例えば、胃・十二指腸潰瘍、過敏性大腸炎、神経性狭心症、自律神経失調症、円形脱毛症、睡眠障害、片頭痛、高血圧症、糖尿病、気管支喘息、更年期障害、性機能不全症、メニエール症候群、単純性肥満、慢性関節リュウマチなど多くの病気が関連し、ヒトによって病状は様々です。心身症はストレスとうまく付き合うように工夫し、早めに病気の原因を取り除くことによって、様々な病気の発症を未然に防ぎたいものです。

2.神経症
 神経症は性、年齢に関係なく発症しますが、特に10歳代後半から30歳代にかけて起こりやすい病気です。神経症の発症には心理的・社会的ストレスが大きく関与し、精神・神経症状として現れるもので、一般にノイローゼと言われています。心身症と異なり、内臓諸臓器には異常が認められません。また、躁うつ病や統合失調症のような内因性の精神病と異なって幻覚や妄想は見られません。
 神経症には①絶えず漠然とした不安感を持つ不安神経症(パニック障害)、②ささいな病状でも重病と思い込む器官神経症(心気症)、③自分の意思に反してまるで強迫観念に取り付かれたようにある行為や考えから抜け出せない強迫神経症、④対人恐怖や赤面恐怖、異性恐怖などの恐怖症、⑤健忘状態になったり、人柄が急に変わったり、無表情になったりする精神的症状および座れなくなるなどの運動麻痺や物が見えない、耳が聞こえないなどの知覚麻痺が起こり、これがヒステリーとなって現れることがあります。これらの根底には不安が共通して見られますので、不安となる原因を除去または考え方を改めることが早期治療につながります。

3.うつ病
 うつ病は近年増加傾向にあり精神心理的、社会的ストレスが発症や増悪に深く関与する病気で、脳の心身症とも言われています。発症年齢は時代と共に低年齢化し、20歳から50歳代で発症し、女性の方が男性に比べ約3倍高く、我が国の自殺増加との関係からもその対策が急がれます。女性では産褥期や更年期に比較的発症頻度が高いと言われています。
 うつ病の発症機序は不明ですが、こころとからだを活性化するセロトニンやノルアドレナリンといった脳内神経化学伝達物質の減少によって引き起こされると考えられています。したがって、薬物療法としてSSRI(選択的セロトニン取り込み阻害薬)を投与し、シナプス内セロトニン濃度を増やすための療法が中心となります。診断基準としては、米国精神医学会が作った診断マニュアルやWHO(世界保健機構)が作ったものがあります。
 表に示した様に、うつ病の症状は神経症や心身症とうつ病と神経症似た点も多く見られますが、生きる気力がなくなり、こじらすと自殺につながることが特徴です。うつ病患者の自殺率は高く、患者の14~37%が自殺企図し、15~25%が自殺する。合併症として不安障害、アルコール・その他の薬物乱用、社会恐怖、人格障害、摂食障害などが知られています。うつ病の場合は薬(抗うつ剤)や休養をとり、安心(癒し)を与え、治る病気であることを認識することが重要であり、励ましや叱責は本人の気持ちを追いつめることになり逆効果となります。予後は良好ですが、患者の約20~30%は慢性化すると言われています。
(近藤雅雄:平成27年8月30日掲載)

こころとからだの健康(5)右脳と左脳を知る

1.男と女の脳の違い
 男性の脳重量が1.45㎏前後に対して女性は1.25~1.35㎏ですが、この理由はよくわかっていません。脳の機能からすると男性は主に右脳を使っているのに対して、女性は右脳と左脳の両方を使っていると言われます。このことは、人間の誕生以来、男性は家族を養うべく食糧を獲得しなければならないため、筋肉運動、推理能力、空間認識などを機能とする右脳が発達し、女性は子孫を残し、愛情を持って育てるべく持久力、語学能力、言語能力、計算能力、書字能力など育児を司る左脳と、本能的に子どもを外敵(環境)から守る右脳をうまく使って発達してきたと思われます。この違いが脳の進化・発達に影響を与え、性差による右脳と左脳の違いとなって現われたものと思われます。すなわち、胎児期に男性ホルモン量が多いと右半球の成長が早くなり、左半球の成長が遅くなって、男性は右脳が発達してきたと考えられます。

2.大脳皮質前頭連合野働き
 脳は大脳(皮質、辺縁系、基底核)、間脳(視床、視床下部)、脳幹(中脳、橋、延髄)、小脳からなりますが、人では他の哺乳動物と異なって大脳皮質が異常に大きく発達し、知的な活動をコントロールできる機能が発達してきました。この大脳皮質については、①全ての人が同じ数の神経細胞(約140億個)を持つ。②心身(こころとからだの働き)の司令塔である。③感覚、運動の統合、意志、創造、思考、言語、感情の中心となる。④成長に従って発達し、ゆっくり退化する。⑤1日、週、月、四季、消化、ホルモンの各リズムが存在する。⑥心身の疲労を回復し、記憶に役立つ睡眠のリズムが存在する。⑦男と女との違い等、脳の中で最も重要ですが、その中でも人間として最も大切なのが、前頭連合野です。
 この前頭連合野は思考、言語、理解、理性など人間としてのこころの働き(精神活動)の中心となっていますので、人としての「こころの中枢」と言えます。哺乳動物では、前頭連合野の重さはヒトが約400g(脳重量の約30%)に対してチンパンジーは約70g(17%)です。さらにサル、イヌ、ネコでは、各々脳重量の12%、6%、2~3%しかありません。笑いは進化の証と言われますが、地球上の生物の中で、笑う動物は前頭連合野の多い人とチンパンジーだけです。さらにチンパンジーよりも大きく前頭連合野が発達した人は言語の機能を獲得し、自分自身に関する情報を意識的に保持しつつ組み合わせて(自己意識)、自分自身をコントロール(自己制御)することが可能ですので、「人間力の中枢」とも言えます。

3.右脳と左脳の違い
 人の言語機能の約90%は左半球にあり、大脳半球左右差の典型例と言えます。言語機能から見ると、左半球は言語半球あるいは優位半球と言われています。この言語に関しては左の前頭葉にブローカの「運動性言語中枢」があり、側頭葉にウェルニッケの「感覚性言語中枢」があります。両者はお互いに連絡し合って生命の司令塔として機能しています。例えば、運動性の言語中枢に障害をあると会話が出来なくなり(運動性の失語症)、感覚性の言語中枢に障害があると相手の話す言葉や書かれた文字の意味がわからなくなる(感覚性の失語症)ようになります。
 左脳は言語のほかに図に示したように計算、書字など分析的、抽象的、論理的な機能が多いのに対して、右脳は空間的知覚や情操的な音楽などについての機能を持ち、言葉で表現できない直感的な理解に関与すると言われています。。左脳と右脳
 したがって、左脳は生後に獲得される言語、計算、書字、記憶などを司り、右半身の感覚と運動を支配します。一方、右脳は芸術脳と言って、音楽や絵画、空間認識、非言語的な概念を司り、左半身の感覚と運動を支配します。この左脳と右脳は約2~3億5000万の神経線維を含む脳梁で連絡しています。
 古来より、人間の知恵として、「しわの一番多い手の掌を左右合わせることによって幸せになる」とよく言い伝えられてきましたが、まさに人間はうれしい時、感謝の意を表する時に手を合わせたり、手をたたいたりします。この現象は、脳が活性化し、喜んでいることを反映しています。つまり、左脳からの情報が右脳に移動し、またはその逆が起こり、左右の大脳皮質が猛烈に活動していることを示しています。
 したがって、左脳に入ってきた様々な情報を右脳に連絡するためには左手と右手を合わせることで両方の脳が発達することが考えられますので、毎日欠かさず朝の起床時にいのちに対する感謝を込めて、寝る前に一日の生活・行動への感謝を込めて、そして食事の前後に生きる力を頂くことへの感謝を込めて手を合わせる習慣を身に付けてはいかがでしょうか。
(近藤雅雄:平成27年8月26日掲載)

こころとからだの健康(4)男女の寿命差

 介護の必要がなく健康に生活できる期間を「健康寿命」と言いますが、平成25年(2013年)の日本人の健康寿命は男性71.19歳(同年の平均寿命は80.21歳)、女性74.21歳(同86.61歳)でした。平均寿命からすると女性の方が男性よりも約6年長く、健康寿命は女性の方が約3年長い。しかし、介護を要する期間は男性よりも女性の方が約3年長いという結果でした。
 健康寿命の延伸とQOL(生活の質)の向上を図るためには、健康増進の3原則である栄養、運動、休養を生活習慣にうまく取り入れることが大切です。しかし、仕事を抱えた男性はなかなか困難で、惰性になりがちですが、健康に対する意識改革が必要です。一方、女性は介護を必要とする期間が長いことから、老後自立できるような工夫を早期に講じることです。

1.男女の寿命の違い
 男女の違いはY染色体の有無で決まります。性を決定する遺伝子であるY染色体上のSRY(Sex-determining region on the Y chromosome)は男性ホルモンであるテストステロンを生産し、男性生殖器への分化や男性の性格形成を促進すると言われています。例えば、染色体(XX)は女性でありながら性格が男性の場合は男性ホルモンが胎児期の脳に入った場合に起こり、反対に染色体(XY)は男性なのに男性ホルモンが脳に入る量が少ない場合は女性の性格になるといった、いわゆる性同一性障害となることが知られています。
 さて、世界中の国において男性の方が短命です。その理由は、①男性は免疫の中枢である胸腺(免疫器官)の萎縮が早い、②筋肉量が多いため基礎代謝量が高い、③染色体の違い(Y染色体は傷つくと回復しない)等が挙げられます。男性は、一般的に生活のリズムが不規則、仕事によるストレス、不適切な食生活(偏食が多い)などによる生体リズムの乱れや筋肉をたくさん持つことから、女性に比して酸素の摂取量が多く、それだけ多くの活性酸素を発生する。これが酸化ストレスとなって免疫力の低下、病気や孤独に弱い、デリケートである等の理由によって短命となると言えます。したがって、男性は日常的にビタミンA、C、Eやポリフェノールといった抗酸化・免疫増強物質を摂取し、ストレスとうまく付き合う生活習慣を身に付ける等、酸化ストレスからの防御が必要です。

2.夫婦の寿命の差
 長年、夫婦が幸せに暮らし、ある日どちらかが先に亡くなった場合を想定します。もし、夫を亡くした妻は1年位落ち込みますが、それ以降は、のびのびと暮す場合が多く見られます。逆に、妻に先立たれると5年寿命が短くなり、離別するとさらに10年寿命が短くなるそうです。また、50歳からの平均余命は、妻のいる男性では約30年なのが、妻のいない男性は約21年と短い。さらに、60歳以上の自殺による死亡者数は離婚した男性が妻のいる男性に比べ46倍も多いと言われています。
 結婚は夫婦それぞれのこころとからだの健康に大きく影響し、特に、男性は配偶者・家族の存在の恩恵を強く受けます。男女ともに健康寿命と平均寿命をまっとうし、介護の必要のない生活を送るのが理想的な寿命と言えます。
 夫婦が幸せに暮らしている姿はだれが見ても微笑ましいものです。夫は妻を、妻は夫を、お互いに理解し、末永く幸せに暮らす方法を若い時から考えていきたいものです。
(近藤雅雄:平成27年8月26日掲載)

こころとからだの健康(3)12か条

 生活習慣病、感染症、癌等に罹患しない丈夫なからだ作り、ストレスを溜めないこころの健康作りが各個人、社会に求められています。個人ならびに集団社会が惰性的であったり、依存的である場合、あるいは個人が身体を動かさなかったり、偏食、喫煙、薬に頼るようなことになると、生きがいを持たない、暗い性格(キレ易い、悲観し易いなど感情の変化が著しい)を持ったヒトが多くなり、社会全体が非活動的・非生産的になるばかりでなく、医療費の高騰を招きます。個人においてはストレスを溜め易く、不定秋訴→籠もり易い→病気(こころとからだの病気)によって健康寿命をはやめる結果となります。
 こころとからだの健康には日頃から報恩、感謝の気持ちを抱くこと、いのちの尊さを理解すること、愛情を持つこと、ストレスを貯めないで前向きであること、目標(夢、志)を持つこと、自然のリズムを大切にすることなどが重要です。これらはすべて酸化ストレスを少なくし、免疫能を増強させ、こころとからだを軽くし、毎日がウキウキと生きがいの満ちた生活となり、人生を楽しく、また素晴らしいものにしてくれます。
 そこで、私の考える健康増進の処方箋として「こころとからだの健康」12か条を以下に挙げました。

1.栄養(バランスの取れた食生活:団欒、育自、共育、神経・内分泌・免疫機能の維持)
 厚生労働省から提出されている食事摂取基準には年齢に応じた栄養素の摂取が記載されています。第一次・第二次性徴期、青年期、中高年齢期には栄養のバランスを考えた食事摂取が重要であることは言うまでもありませんが、特に中高年齢期になると基礎代謝が低下しますので、カロリーの過剰摂取は肥満につながります。肥満はメタボリック症候群と直結しますので、高血圧症、糖尿病、脂質異常などの生活習慣病のリスクが高まります。また、過剰な食事制限(ダイエット)は生体のリズムの乱れにつながり、若い女性では月経困難症、貧血、感染症など多様な疾病の原因となります。したがって、バランスのとれた食生活が大切です。さらに、食事摂取時には団欒が大切です。食事を通して家族、友人などの人間関係を形成するこの上ない貴重な時間となります。家族であれば、育児(自)、教(共)育の時間となり、食事時間のリズムを遵守することによって、神経・内分泌・免疫の各機能が適切に働くだけでなく、食及び他者への感謝の気持ちを持ち、ストレス解消に役立ちます。

2.運動(身体を動かす:神経、循環、免疫機能の増強)
 人は動物です。動物は動く物と書きます。筋肉は第2の心臓とも言うように、適度な筋肉をつけることが大切です。とにかく身体を動かすこと。運動は定期的に3メッツ以上の強度の身体運動を毎日1時間は行いたいものです。運動によって、脳や筋肉が喜び(心身一如)、循環機能を高めるだけでなく、こころもすっきり、免疫力も高まり、まさにこころとからだのアンチエイジングに繋がります。糖尿病や心臓疾患などの基礎的疾患を抱えている場合は医師の指導に従ってください。

3.休養(疲れる前に休む:脳と全身筋肉の機能保持)
 思春期以降、1日約90分の時間のリズムがあります。90分前後仕事をしたら、10分前後の休息をとることが大切です。すなわち、疲れる前に休むことが大切で、疲れ果ててしまってからの休養は回復力が悪く、健康を取り戻すのに多くの時間がかかります。
 睡眠においても約90分のリズムがあります。就寝してから深い睡眠のノンレム睡眠が現れ、約90分後に浅い睡眠のレム睡眠が出現します。レム睡眠というのはREM(rapid eye movement)と言い、寝ていながら筋肉は弛緩(脱力症状)していますが、眼球が動いている状態で、この時に夢をみます。また、歯ぎしりをしていたり、寝返りを打っていたり、寝言を言っていたりする時の睡眠で、逆説睡眠といって体の睡眠を指します。一方、ノンレム睡眠は脳の睡眠(徐波睡眠)と言って、筋電図は動いていますが、眼電図はプラトーとなっています。この時に成長ホルモンなどが分泌され、生体がリセットされます。成長期の子どもは寝る子は育つと申しますが、まさに成長ホルモンの分泌が高まります。
 一日のスタートとして、目覚めは重要です。朝起きるときにはレム睡眠時の浅い睡眠時に目覚まし時計などを設定して起きると快適な朝を迎えることができます。逆に、深い睡眠のノンレム睡眠時に起きたりすると、一日中頭が働かないなど、不愉快なことが多々起こります。さらに、この2つの睡眠は記憶力にも関与していると言われていますので、良い睡眠を心がけるようにしたいものです。このように、良い睡眠を取ることは脳と全身筋肉の機能が改善し、こころとからだがスッキリします。

4.体質を知る(遺伝子・環境因子相互干渉作用)
 米国などの他の先進国に比べて日本は島国として、また長い間鎖国を通して比較的単一民族にて長年種族を保存してきました。すなわち、日本国民は比較的純粋培養され、遺伝子による影響はその血筋(家族・親戚)に左右されることが推測されます。
 自分の家族親戚(血筋)の中に癌や高血圧症、糖尿病、脂質異常症、肥満などがあれば、その体質を受け継いでいると考え、「生活習慣を考える」または「見直す」必要があります。もしも、大腸癌が家族にみられれば、大腸癌の体質を受け継いでいると考え、食物繊維や抗酸化食品の積極的な摂取やストレスに対する対処によって病気を予防できます。また肺癌の血筋であれば喫煙を止め、また副流煙(受動喫煙)や大気汚染からからだを守り、抗酸化食品を積極的に摂取するなどして病気を予防することが可能です。これを遺伝子―環境因子相互干渉作用と呼んでいますが、遺伝子の働きには生後の環境因子が最も大切であることを意味しています。
 一方で、近年生殖工学が進展し、匿名の第三者の卵子からの体外受精などによって誕生した人については遺伝的な背景に対する情報が少なく、体質について考えることは困難です。今後さらに増加する傾向にありますが、この場合には自身の「からだからのサイン」を修得し、自分なりの健康法を身に付けると、よい結果につながるでしょう。

5.危険因子からの予防(自己防御:遺伝的素因、食生活、アレルギ-、タバコなど)
 「体質を知る」ことと共通しますが、ここでは体質とは異なって、人間として、日常生活の上で必要な対処について延べます。例えば夏の猛暑の中を活動したりすると熱中症のリスクが高まりますが、そのようなときに水分、塩分の補給を怠らず、また帽子などを被ることによって熱中症からの予防できます。同じように紫外線等の環境因子だけでなく、食べ物などの生活因子等、経済・産業・文明の発展に伴って、健康を脅かす多くのリスク因子が満ち溢れていますが、これらのリスク因子からの予防、すなわち自己防御が現代社会に住む私たちにとって大変重要です。

6.からだからのサインを習得する(早期診断:感染症、遺伝病、癌、生活習慣病の予防)
 妊娠可能な女性は排卵後、基礎体温が上昇します。これと同じように、体内に異物が侵入したり、異物が発生したりすると熱が出ます。これらはすべて、からだからのサインを意味していますので、これを早く自覚することによって、その場への対応が可能になります。特に後者の場合に、熱が出たからと言って無理をすると、本来すぐ治るべきものが病気となって長い間寝込むことになります。からだは異常を起こすとすぐに何らかのサインを体に伝えます。そのサインを修得し、早目に対処することによって、自然治癒力が増して、感染症、遺伝病、癌、生活習慣病、ストレス病等の予防につながります。

7.環境の向上を図る(生活・社会環境の改善、ストレス解消、スローライフなど)
 こころとからだの健康は自らが考え保持し、常に最適な状態を維持しなければなりません。すなわち、自分の体は自分で守ることが、今求められています。例えば、アレルギー体質であれば、体質を改善すべく、生活環境・習慣を見直し、自分に合った環境の向上を図ることによって、多くのことが改善されます。そのような努力が日々必要であるという意味です。環境の改善によって、また新たな問題が出てきた場合は、あきらめないで再度検討することが重要で、自分自身が納得するまで、前向きに健康を意識して生活・社会環境の改善に取組むことが大切です。人間環境についても同じで、十分にコミュニケーションを取り、環境の向上を図ることによってストレス解消が果たされます。

8.自然との対話(自然環境との融合、マイナスイオン、アロマテラピー、音楽など)
 日本は木造建築の中に3世代が住むのが通常でしたが、戦後のコンクリート住まいの中に少数住む共稼ぎ夫婦といった核家族や一人住まいが進展し、家族のコミュニケーションも少なくなりました。このような無機的な住まいの中に観葉植物や木製の家具、またはペットとして小鳥や金魚などの生物をコンクリート部屋の中に同居することによって、私たちと同じ遺伝子を共有することができます。そのことは、自然環境との融合を意味し、遺伝子同士の不可思議なコミュニケーションが起こり、気分が楽になったり、ストレスが解消されたりすることがあります。私たち自然界に住むすべての生物はすべて共通の遺伝子を持ってそれぞれの種族が保存されています。したがって、本来自然の中で済むことが一番の快適環境ですが、産業の発展と同時に私たちの身の回りにはプラスチックやコンクリートなどの無生物が生活環境に満ちあふれております。そのような中にあって、ちょっとした自然環境の融合がストレス解消に大きく役立つことがあります。

9.生きがいを見出す、夢を持つ(趣味、家庭、仕事等将来設計、希望、明日に向かって)
 人生50年の時代から80年の時代に突入している。女性でいえば、更年期以降30年以上の平均寿命を要している。少子化、核家族化の今日、幼児期、学童期、思春期、青年期、成人期、中年期、高齢期といった、それぞれのライフステイジにおいて、生きがいや夢を持つことが大切な時代に突入しています。生きがいや夢を持つことによって当面の目標が設定され、明日への希望が出てきます。とくに男性の定年退職後の生き方においては、ボランテア活動などをすることによって、いつも教育(今日行くところがある)と教養(今日用事がある)を心がけ、人のために自分が必要であると思うことと毎日目的を持つことが一番の生きがいとなることでしょう。

10.自信を持つ、前向きである(免疫、こころの機能維持)
 生きがいを見出す、夢を持つとも共通していますが、ここでは、とにかくも一歩前に進むことが大切であることを言っています。前に進めば、必ず結果がついてくる。結果が出れば、自信につながり、次の行動への対応が可能となります。それを繰り返していると、生体の機能は前向となり、自然治癒力も向上し、ストレスもよい方向に働き、免疫力も向上し、こころの機能維持につながります。成功体験がないからと言って、自信を喪失しないで、身近なことから一歩一歩前に踏み出していく力が必要です。そうすれば、いつの日か、自信へとつながり、必ず、成功体験を獲得し、大きく前進する力となります。

11.概日リズムを守る(約1日のリズム、バイオリズム、睡眠リズムなど)
 地球における生命の誕生以来、生命は太陽のリズムに従ったいのちのリズムが獲得されてきました。すなわち、地球には時間や周、月、季節の各リズムがあるように、生体にも同じ時間的な体内リズムがあります。1日のリズム(これをサーカディアンリズム(Circadian rhythm, 概日リズム)という)には食生活(摂食)のリズム、睡眠のリズム、自律神経のリズム、免疫のリズム、内分泌のリズムなどがあり、生体の機能維持にとって重要な働きとなっています。したがって、これらのリズムを知り、生活にメリ・ハリをつけることが大切です。生活のリズムが崩れると生体のリズムも崩れ、何らかの病気となってあらわれてきます。

12.感謝の気持ちを持つ(健康への感謝とこころへの感謝)
 いのちに対する感謝、家族への感謝、仕事に対する感謝、人間関係に関する感謝など人間としての基本を考えることです。この世の中は自分を取り巻く環境が日々変化しています。そんな中で、言葉の使い方が最も大切です。こころは言葉の影響を最も受け易いため、日常的に前向きな、きれいな言葉を使うよう心掛けるようにすれば、一日が大変充実して、楽しくなります。
(近藤雅雄:平成27年8月12日掲載)

食生活と栄養と食育

戦後70年における「住」「食」環境の変化がもたらしたもの
 戦後の経済や生活環境の発展は言うまでもないが、ここではとくに生活の根本的な「住」と「食」との部分での変貌について展望する。
 戦前までの日本は3世代や4世代が同じ屋根または敷地内に住むという大家族社会が当たり前で、「家」という継承の体制が確立されていたが、戦後は、核家族政策によって居住空間が細分化し、アパートやマンションあるいは小スペースの一戸建て住居が乱立し、少数家族あるいは単身世帯が確立、これが現在、定着するようになった。そして、代々引き継がれてきた様々な伝承が時代とともに薄れ、集団から個人の社会へと変化した。
 とくに、食生活の面からみると日本が長い年月を通して形成してきた日本型食生活から、西洋・中国・東南アジアなど世界中の料理、ファーストフードやいわゆる健康食品というものを自由に取捨選択できる豊かな自由型食生活へと変わり、いつでも食べたいときに好きなものが食べられる時代となった。
 このように「食」と「住」という根本的な部分での生活様式を大きく変え、先進国の一員として競争・発展してきたが、逆に、今日では、日本は世界で最も自殺率の高い国となると共に国家や組織、家族など様々な環境に対して無関心な国民が増加している。また、貧富の差が増し、少子・高齢化という少数単位での生活環境がからだとこころをますます脆弱化している。

次代をになう乳幼児・子どもの生活・行動の変化
 近年の核家族・少子化に伴って就労女性が増え、育児休暇などの問題が噴出するようになったが、現実は育児休暇をとることは難しく、そこで託児所や保育園が急増するようになった。しかし、最近の厚生労働省研究班の調査では「保育園で過ごす時間の長さは子どもの発達にほとんど影響せず、家族で食事をしているかどうかが子供の発達を左右する」という結果(とくに乳児期に神経細胞が急激に増殖するため、この時期に正しい栄養や生活環境を獲得しておかないと神経回路の形成に影響が出るといわれる)を報告している。
 子どもたちはといえば、親を含めた社会の期待が学力中心の過保護社会へと変化し、塾通いをする一方で、狭い居住空間に閉じこもってコンピューターゲーム、テレビ、マンガに夢中になり、からだを動かさない生活やレトルト食品、コンビニ食品を摂取するという生活様式が定着し、子どもの知力、体力、運動能力の低下が問題となっている。
 さらに、最近の子どもおよび若者は感動することおよび感動して涙を流すことが少ないと言われている。涙はこころから湧き出てくる体液であり、他の動物では見られない人間としての特有の生理現象である。涙を流すことによって心が洗われるとよく言うが、最近のTVでも現在の人間模様を反映してか、一過性の虚楽を求めるものやお笑いが蔓延し、涙を誘うドラマなどがきらわれ、少なくなっている。
一方、このような現状が生じているにもかかわらず、国家を挙げてIT化が推奨され、幼児教育からコンピュータが導入され、小学生でも携帯電話を持っているように、IT関連ツールは日用必需品となり、「孤立」、「エゴ」が蔓延し、デジタル型からアナログ型に移ろうとしている。読書の方はと言えば既に漫画時代といったアナログ型が定着している。食生活の面では「孤食」が定着しようとしている。
 こうした現実は、とくに次世代をになう子どもたちの体力の低下、書字能力の低下、計算能力の低下、記憶能力の低下、対人技術の発達の遅れなどが起こり、日本および地球の発展・未来において計り知れないほどの損失が生じるという危惧感を抱く。子どもは成長につれて知力や体力も自然とついてくるという錯覚を捨てるべきである。

「食育」の重要性
 そこで、上記した諸問題を真摯に受け止め、改善の方向性を探ると、最も基本的で緊急を要する課題は乳幼児期からの「家族」としての食生活のあり方である。すなわち、育自・共育の精神を持って正しい食生活をすれば健全な家庭生活を送ることができる。しかし、食生活のあり方を一歩間違えれば生活習慣病や摂食障害などの精神障害をまねき、さらにこれが遺伝的体質として次世代へも引き継がれかねない。
 こうした中、食と栄養の専門家である服部幸應氏は「食育」と言う言葉を流行させ、次の日本を作っていくためには「食育」がいかに大切であるかについての教育活動を展開し、2007年食育基本法の制定に貢献した。そこには「食育」に対する強い信念が伺えられる。
 一般に、現代人は、食に対しては好きなものを好きなときに、あるいは今あるもの(または残り)を取り寄せて食べているのが実情であり、食あるいは栄養に対する科学的な知識は殆ど持ち合わせていないのが現状である。私たちは、食を通してからだとこころの成長が図られることを忘れてはならない。団欒のある楽しい食生活やおいしい食べ物を摂取した時の自然と笑みがこぼれる幸福感を忘れてはならない。すなわち、「食育」は「職育」であり、幼児期であれば正しく成長するために、子どもであれば、知識を学習するために、大人であれば、それぞれの任務・責任を遂行するために、つまり生涯についての重要な営みである。

生活にリズムをつける
 例えば、エネルギーの貯蔵組織である脂肪細胞が増殖する時期にはリズムがあり、生涯において3回存在する。最初は、妊娠末期3ヶ月の胎児期で、この時期に母胎内から外界に出るために必要なエネルギーを蓄えることが出来るように脂肪細胞数が増える。2回目は生後1年以内の乳児期で、この時期に誕生と同時に外界において生存、成長していくために必要な脂肪組織を作り上げる。そして第3回目は思春期である。これらの時期に生活のリズムが乱れ、過食すれば当然脂肪細胞の数は増え、肥満となり、生体のリズムは乱れる。一度増殖した脂肪細胞は生涯減少しない。
 私たちの住む地球には時間や周、月、季節の各リズムがあるように、生体にも同じ時間的な体内リズムがある。1日のリズム(これをサーカディアンリズム(概日リズム)という)には食生活(摂食)のリズム、睡眠のリズム、自律神経系のリズム、免疫のリズム、内分泌のリズムなどがあり、生体の機能維持にとって重要な働きとなっている。したがって、これらのリズムを知り、生活にメリ・ハリをつけることが大切である。生活のリズムが崩れると生体のリズムも崩れ、さらに生体恒常性維持機能(これをホメオスターシスという)が崩れ、病気となる。

いまこそ「食生活」の見直し、教育・学習が必要であり、この期を失うと未来への損失は計り知れないものとなる
 生命維持において最も基本的で根本的なものが「食」であり、正しい食生活を維持・継続することによって生体のリズムが構築され、知識や技術の向上が図られる。さらに、健全なからだや精神(感謝)という個人レベルの健康だけでなく、健全な社会が構築され、延いては国家が元気となる。
 まさに、「知識の消化吸収は人生最大の栄養素となり、多くの知恵を生み出す」ように、健全な食生活から得られるものは計り知れない。すなわち、「食生活と栄養」に対する知識を得ることによってからだとこころを大切にし、団欒などから知恵を引き継ぎ (親からの伝承など)、生きる術として大切な善悪の判断、感謝する素直なこころを持つ。さらに、前向きに生活の工夫を行う知恵などを持ち、将来を夢見るこころを持つようになる。そしてこれらの習得が「自由」なこころで「正当性」、「責任」を持って、「平和 (社会)」に貢献できる体力とこころを持つようになる。これがさらに、次の世代に引継がれていく。(近藤雅雄:平成27年8月1日掲載)

こころとからだの健康管理(1)

~正しい栄養素の摂取と言葉~

1.健康とストレス

 半世紀以上も前にWHOが「健康とは身体的にも精神的にも社会的にも完全に健康な状態をいう」と定義し、「社会的健康」の重要性を示しました。この社会的健康とは、最近よく耳にする「人間力」で言えば、「共助」の精神に当たります。8つの知性(言語、音楽、空間、絵画、論理数学、身体運動、感情、社会)では「社会的知性」に当たります。また、自我(自己意識、自己制御)における「自己制御」に当たります。
 しかし、社会的健康、すなわち徳育(道徳心)については、現代の少子・核家族社会・個人情報保護法などによって家族制度や地域社会が急速に変化し、人間の人格形成にかかわる若い時代に学習(躾)されないまま大人になっていくようです。また、家庭や地域社会の中での人間関係が希薄化すると共に、長期間にわたる激しい経済情勢の中で、企業における雇用管理も大きく変化して来ています。これらの結果が、現代人に様々なストレスとなって心身に影響を与えていると思われます。事実、心身の健康について不安を持っている成人が3人に一人いるとも言われています。現代社会では「自己管理」と「社会的知性」がいかに重要であるかがわかります。

2.こころとからだの栄養素

 「自己管理」については、心身の健康管理を怠ると摂食障害などを起こし易くなり、これが病気の原因作り、その病気をさらに増悪させる要因となります。したがって、栄養学的な知識を持つことが重要です。健康寿命の延伸とQOL(生活の質)の向上を目指して、栄養に関する多様な研究が行われていますが、栄養素の過不足が心身の健康に大きく影響を与えることは明白です。
 例えば、チロシンやトリプトファンなどのアミノ酸や葉酸、B12、Cなどのビタミン、銅、鉄などのミネラルの不足は、慢性疲労、頭痛、集中できない、イライラする、学習・精神障害など様々な病気の素因と関係してきますので、このような成分の生理作用およびこれら栄養成分がどのような食品に含まれているのかを知ることが大切です。

~知識の消化吸収は人生最大の栄養素となる!~

 最近、特に若い人の免疫力・体力が低下し、これが心身の病気と関係していると言われます。その原因の多くがストレスに対する適応力の低下(コミュニケーション能力の低下など)と栄養学に対する無関心にあると思われます。生命現象はすなわち栄養現象ですが、生理学的に最も重要なのが免疫力です。免疫力は適正な栄養現象によって獲得されます。
 しかしながら、その免疫力については、スキャモンの発達曲線からも明らかなように、11歳頃をピークとして、免疫中枢である胸腺の萎縮が始まり、その萎縮の原因が多くのストレスやエイジングによって発生する活性酸素によることが最近の研究によって明らかになってきておりますので、如何に体内に多くの活性酸素を発生させないか、また活性酸素を除去させる方法が注目されています。
 その一つの方法としてポリフェノールなどの抗酸化物質や抗酸化ビタミンおよび免疫や抗酸化に関わるミネラル類(亜鉛、セレン、銅、マンガン、鉄など)を日常的に摂取することがあげられます。こころとからだの健康管理の上でも、自分自身が摂取する栄養素をしっかりと意識することによって、体力、健康力に自信を持ち、前向きになれます。
 そして、ストレスを前向きにとらえ、しっかりと自分自身に必要な良質の栄養素を摂取すれば免疫の機能も高まり、心身一如、こころもからだも元気になります。
 次に、社会的健康において最も重要な感謝するこころとからだについて述べます。

3.感謝するこころとからだ

 人間が他の哺乳動物や生物と異なっている決定的な要因は、大脳の前頭葉にあります。前頭葉は人間が400gでチンパンジーが70gです。人の脳の約30%が前頭葉です。猿は12%、犬が6%、ネコが2~3%、ネズミは0%でもわかるように、前頭葉は人間においてのみ大いに発達し、人としての思考、知性、言語、理解、理性など精神活動の中心を司る中枢です。すなわち、「こころの中枢」とも言えます。この前頭葉の働きにおいて、最も脳の活動に影響を与えるのが言葉です。良い言葉を使うと、免疫の機能(生体防御機能)、内分泌機能(成長・発達・代謝機能)、神経機能(自律神経機能、善悪の判断、理性)などの情報連絡系が活性化され、自然治癒力が高まります。言葉そのものが私たちの健康・人生を創っていくといってもよいでしょう。

~言葉は人間の原点であり、こころとからだを健康にする最大の栄養素である!~

 「はじめに言葉ありき、言葉は神と共にあり言葉は神である」と聖書にも出ています。また「言葉は天地(あめつち)を動かす」と古今和歌集に出ています。紀貫之は「力をも入れずして天地を動かし目に見えぬ鬼神をもあわれと思わせ、男と女の仲をも和らげ、猛き武士(もののふ)の心をなぐさむるは歌なり」と言っています。歌とは言葉のことです。言葉には力があります。ドイツ医学はムンドテラピー(ムンテラ)(mund(独):口、言葉の意)を重視しています。すなわち、ムンテラとは「言葉による治療」を意味します。診療や看護には必ず言葉を添えています。日本では適当に症状を説明する位のことしか理解されていませんが、本当は言葉の力による元気づけを意味しているのです。
 言葉を話すのは人間だけであり、人類の発展に大きく貢献し、書物となり永遠と続きます。言葉は、地球の平和と環境保全にも深く関わります。こころは言葉の影響を最も受けやすく、威圧的な言葉、汚い言葉、人の悪口、否定的な言葉を使うのを止め、笑顔で、プラスの言葉を口にしていけば、自分のこころも相手のこころもとても心地よい状態になるはずです。言葉には魂があります。

 一つしかないいのちであれば、人生を感謝と喜びに満ち、明るく、おおらかにプラス思考で生きて行きていくことによって健康寿命は全うできるものと思います。

(近藤雅雄:こころとからだの健康管理(1)、2015年6月5日掲載)

 

 

こころとからだの健康(2)~中高年齢者の免疫強化によるアンチエイジング~

1.はじめに

 介護の必要がなく健康的に生活できる期間を「健康寿命」と言いますが、平成25年の日本人の健康寿命は男性71.19歳(同年の平均寿命は80.21歳)、女性74.21歳(同86.61歳)です。女性の方が介護期間は長くなっています。そこで、中高年齢女性の健康寿命の延伸とQOL(生活の質)の向上を図るには、適切な食生活と運動の習慣等、酸化ストレスからの予防によって目標が達成できます。

2.男女の寿命の違い

 世界中の国において男性の方が短命です。その理由は、①男性は免疫の中枢である胸腺の萎縮が早い(酸化ストレスにかかりやすい)、②基礎代謝量の違い、③染色体の違い(Y染色体は傷つくと回復しない)等が挙げられます。したがって、男性は筋肉量が多く、免疫力が弱い、偏食も多く、デリケートであり、孤独に対して弱いのに対して、女性は免疫力が強く、ストレスに強い。すなわち、男性の方が不適切な食生活や筋肉をたくさん持つことから、酸化ストレスによる免疫力の低下が著しく、その結果、短命であると言えます。

3.免疫強化とアンチエイジング

 筋肉(骨格筋、心筋、平滑筋)は24時間活動を行っていますので、それだけ酸素の需要が多い。すなわち活性酸素の生産量も多くなります。そこで、生体は活性酸素を分解する酵素SOD(スーパーオキシドデスムターゼ)、GPx(グルタチオンペルオキシダーゼ)等を進化の過程で獲得してきましたが、これにはエイジングがあり、40歳前後から酵素活性が著しく減少します。そこで、これら活性酸素を分解する酵素の代替作用のある抗酸化栄養素の摂取、適度な運動、休養が大切になります。そして、免疫にとって重要な臓器である胸腺は活性酸素によるダメージが大きいことが分かっています。12歳頃をピークとして胸腺は萎縮してきますが、その後の萎縮のスピードは活性酸素の発生量が多い男性の方が早い。したがって、免疫強化には抗酸化食品を積極的に摂取することが望ましいのです。

4.活性酸素除去方法(抗酸化は抗加齢・免疫強化につながる)

 抗酸化食品の摂取、適度な運動(手足を動かす)、疲れる前に休むことが重要です。抗酸化・免疫に関わる食品としてはビタミンA,C,E,B6、フラボノイド類、亜鉛、マンガン、銅、鉄、セレン等を多く含む食品が挙げられます。これら栄養素を含む野菜(目安量1日350g)、果物(目安量1日200g)、豆類、良質のタンパク質の摂取、特に、運動後は十分に摂取することが大切です。

5.健康食品としての5-アミノレブリン酸(ALA)

 健康食品には①表示の問題、②過剰の問題、③摂取方法の問題等があり、十分に情報を得てから摂取する必要があります。一方、最近、生体物質である5-ALAが新機能性アミノ酸として貧血予防、運動・代謝機能の亢進、抗酸化、免疫増強、美容などのヘルスケアー領域、脳腫瘍の診断・治療をはじめ多くの疾患の予防・治療などのメディカルケアー領域で、各々注目されています。この5-ALAの大量生産が可能となり、中高年齢者の皮膚の若返りや育毛効果等も期待されます。

6.運動はこころとからだのアンチエイジング

 人は動物です。動物は動く物と書きます。筋肉は第2の心臓ともいうように、適度な筋肉をつけることが大切です。運動は定期的に3メッツ以上の強度の身体運動を毎日1時間は行いたいです。運動によって、脳や筋肉が喜び(心身一如)、循環機能を高めるだけでなく、こころもすっきりし、まさにこころとからだのアンチエイジングにつながります。休養は良い睡眠をとりストレスを貯めない工夫が大切です。そして、言葉の使い方も大切です。こころは言葉の影響を最も受け易いため、日常的に前向きな、きれいな言葉を使うよう心掛けましょう。

こころとからだの健康
1.栄養(バランスの取れた食生活)
2.運動(身体を動かす)
3.休養(疲れる前に休む)
4.体質を知る(遺伝子・環境因子相互干渉作用)
5.感謝の気持ちを持つ
6.生きがいを見出す、夢を持つ
7.環境の向上を図る
8.危険因子からの予防(自己防御)
9.自然との対話(自然環境との融合)
10.からだからのサインを習得する(早期診断)
11.自信を持つ、前向きである
12.概日リズムを守る
(出展:近藤雅雄著:健康のための生命の科学、2004)

7.こころとからだの健康

 こころとからだの健康には日頃から感謝の気持ちを抱くこと、いのちの尊さを理解すること、愛情を持つこと、ストレスを貯めないで前向きであること、目標(夢、志)を持つこと、自然のリズムを大切にすることなどが重要です。これらはすべて酸化ストレスを少なくし、免疫能を増強させます(表参照)。(近藤雅雄:女子体育4・5Vol.57-4・5,p70-71, Apr.May 2015, JAPEW)