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『難病 ポルフィリン症』に関する記事一覧

ALAを合成する酵素の新しい測定とその酵素のミトコンドリア内での様態

 ALAを生産する酵素、5-Aminolevulinate synthase (ALAS)活性の測定はsuccinyl-CoAとglycineを基質として測定されるのが世界的に広く知られています。このALASはヘム合成(ポルフィリン代謝)の律速酵素として最も重要な酵素です。肝性ポルフィリン症などのヘム合成系の酵素障害があるとALAS活性が増量してALAの生産を高めることが指摘され、ポルフィリン代謝異常で最も中心的役割を果たす酵素です。しかしながら、実際に肝臓のポルフィリン代謝障害を起こす晩発性皮膚ポルフィリン症の肝ALAS活性は増加しないことが広く知られ、この矛盾を説明することがこれまでにできませんでした。
 そこで、肝性ポルフィリン症患者の生検肝微量組織からα-ketoglutarateとglycineを基質としてALAS活性を測定した結果、succinyl-CoAとglycineを基質とした値よりもポルフィリン代謝をより反映していることが今回の実験によってわかりました。すなわち、肝ALAS活性の測定にはこれまでの方法と異なって、α-ketoglutarateとglycineを基質として測定した値の方がより肝性ポルフィリン症の病態を反映していることが示唆されると同時に肝ALAS酵素の作用機序がほぼ分かりかけてきました。
その内容は2015年9月の学術雑誌ALA-Porphyrin Scienceに掲載されました。以下のpdfで参照ください。(近藤雅雄:平成27年11月10日掲載)
肝ALAS porphyrin science,2015

ポルフィリン・ヘム代謝異常

 ポルフィリン症はヘム合成系酵素の遺伝的あるいは後天的障害によってポルフィリン代謝関連産物の過剰産生、組織内蓄積、排泄増加を起こす一連の疾患群である
 本症は1923年、AE.Garrodにより代表的な先天性代謝異常疾患の一つとして提唱されて以来、現在までに8病型が知られている。ポルフィリン代謝異常が肝細胞内で起これば肝性ポルフィリン症、骨髄赤芽球内で起これば骨髄(赤芽球)性ポルフィリン症と分類される。また、臨床的には急性の神経症状を主とする急性ポルフィリン症と皮膚の光線過敏症を主とする皮膚型ポルフィリン症に分類される。
 ヘムは細胞内のミトコンドリアと可溶画分に局在する8個の酵素の共同作業によって合成され、ヘモグロビン、チトクロ-ムーP450などのヘム蛋白の補欠分子族として、細胞呼吸や解毒機構などに関与する。ヘム合成の最初の酵素δ-アミノレブリン酸(ALA) 合成酵素(ALAS)には赤血球系細胞でのみ発現している赤血球型酵素(ALAS-E)と、肝臓等すべての臓器で発現している非特異型酵素(ALAS-N)の二つのアイソザイムが存在し、その調節には組織特異性がある。詳細は次のpdf(別冊日本臨牀 新領域シリーズNo.20、先天性代謝異常症候群(第2班)ポルフィリンーヘム代謝異常:概論、2012年12月20日発行)参照(近藤雅雄:平成27年8月27日掲載)

ポルフィリン・ヘム代謝異常

ポルフィリン症専門外来開設への思い

 平成27年6月26日(金)から毎月第4金曜日に島根県済生会江津総合病院の堀江裕(ほりえゆたか)名誉院長の高い志のもと、浜松町ビルディング(東芝ビルディング)1階の「芝浦スリーワンクリニック(望月吉彦院長)」内に日本で初めてポルフィリン症専門外来が開設されました。

堀江先生に感謝
 堀江先生とは「ポルフィリン症」という疾患を通して診断・治療などの共同研究だけでなく、学術研究会や患者会(さくら友の会)の創設・運営など、30年以上ご一緒させていただいている友人です。ポルフィリン症の指定難病や学術会議のシンポジウム開催などでよく国会議員の先生方への陳情にもご一緒させていただきました。
 今回はポルフィリン症の専門外来開設の準備および診療にご一緒させていただきました。堀江先生はポルフィリン症の名医としての知名度が高く、患者さんは先生の診療をぜひ受けたいと言って日本全国から集まって来ます。先生のお人柄なども重なって、皆様感謝の意を表して先生の診療を受けています。
 そのような中で、堀江先生の隣でポルフィリン症乃至その疑いのある患者さんの診断のお手伝いをさせていただいています。私にとって貴重な経験で、堀江先生とご一緒に、同じ目標をもってボランテアができることを大変光栄に思っています。

ポルフィリン症専門外来の診療にご一緒させていただいて
 患者さんはポルフィリン症の疑いなどとして不安そうにポルフィリンの検査データを持って診察室に入り、その場で堀江先生と共に検査データ並びに採取した尿や血液の中にポルフィリンが含まれているかどうかの蛍光判定等のお手伝いをさせていただいています。
 そこで感じることは、患者さんにとっては難病であるポルフィリン症の疑いと診断されて、今後どうして生きていけばよいのかなどといった不安、小さなお子様であれば、その子の将来に対する不安、育児の不安など、大変なストレスを抱えてこられる方がほとんどですが、堀江先生の的確な判断によって、ポルフィリン症の疑いと他院で言われてきた患者さん、あるいはお子様がその場にてポルフィリン症ではないと診断された時の感激に何度か遭遇致しました。また、ポルフィリン症と診断された方も、日常の生活習慣などの指導など的確な判断を下され、患者さんからは堀江先生から生きる力を頂いたと感謝し、診察室を後にします。

患者さんの殆どが誤診
 ポルフィリン症は皮膚型と急性型に分類されますが、どちらも非常に多彩な症状を示す疾患で、多くの医師が一つや二つの症状がポルフィリン症に類似している、あるいは尿または血液中のポルフィリンの数値が多少高い。と言ってポルフィリン症の疑いがある、またはポルフィリン症であるという診断が下されます。しかし、そのほとんど(90%以上)はポルフィリン症ではありません。しかし、ポルフィリン症を疑ってみることはポルフィリン症の早期診断に繋がります。早期診断が下されば、その後の対応によって健常者と同様の日常生活を送れる場合が多いことが分かっています。ポルフィリン症は診察する医師が正しい知識を持っていれば、確定診断にこぎつけることは可能であり、正しい指導によって患者さんのQOLが著しく高まることは確かです。

決定的な誤診例
 20年位前に、山口県で急性ポルフィリン症と診断された思春期の娘さんが、15年後、結婚して30歳となって子どもがほしいからと言って相談に来られたことがあります。そこで、検査した結果、ポルフィリン症ではありませんでした。明らかな誤診でした。その人にとって見れば、それまでの15年間、医師の診断・治療・指導を忠実に守り、大変な思いをして生活されて来たことを知って、医師の診断に対する責任を痛切に考えたことがあります。また、医師の指導が十分でなく、死の転帰をされた患者さんなど、誤診並びに不適切な診察を多く見てきております。

診療拒否例
 通常、ポルフィリン症の場合はその多彩な症状から確定診断されるのに長くかかることは多く知られています。さらに、患者さんのかかりつけの病院または大病院にはポルフィリン症を知る人はいないということで、診療を拒否される場合が多く存在します。さらに、ポルフィリン症の患者さんに対して、厄介な病気であるということで、あからさまに不愉快な態度をとり、病院から追い出そうとする医師がいることは真に残念ですが、事実です。医師はどのような病気の患者さんであろうと共に寄り添う姿勢が大切です。

今後の課題~医師へのお願いと後継者
 現在、ポルフィリン症の専門外来を通して、ポルフィリン症という稀少疾患について正しく診察して頂くよう、医師への啓発を含め、教育・研究活動を続けています。しかし、堀江先生も私も定年を迎え、高齢期になっていることから、今一番急ぐことは、ポルフィリン症研究の後継者を育てることです。
 今回のポルフィリン症専門外来の開設の大きな目的の一つは、指定難病であるポルフィリン症に対する研究者並びに医師の後継者が出てくることです。多くの医師に、堀江先生の活動に注目して頂き、ポルフィリン症に対する興味を持っていただきたいと願っています。この専門外来がいつまで続くか未定ですが、この専門外来の意義を理解し、稀少疾患を抱えた患者さんへの治療に対する高い志を持った医師が沢山出現してくることを切に願っています。
(近藤雅雄:平成27年7月29日掲載、新聞記事は下記のpdfを参照)

毎日新聞記事2015.7.24朝刊

 

健常人と難病患者

 現代人は遺伝子の異常を10個以上持って生まれてくると言われます。しかし、殆どの人が何の自覚症状もなく健康です。ところが、たった一つの遺伝子の異常が病気となって生まれてくる人もいます。これを先天異常といいますが、健常者と同じくこの世に誕生した大切な「いのち」です。人間社会において、いのちを大切にするこころは人としての基礎です。
 健康の反対が病気ですが、これまで健康であった人が、何らかの原因によって病気になった時に、初めて健康のありがたさを思い、誰もが二度と病気に罹りたくないと思うものです。そしてそれが実現できます。ところが、病気を持って生まれてきた人はどうでしょうか。患者さんは健康への願望、生きることへの願望、仕事への願望、いのちへの思いが、健康な人以上に強く、また、今日の人間社会に欠けている他者を理解し、思いやるこころ、家族・友人を大切にするこころ、いのちの尊さと感謝の気持ちを強く持ち合わせております。私たち健常者に足りないものを多く持ち合わせております。私たちは難病患者から実に多くのことを学びます。今の人間社会には、いのちを大切にするこころと、相手のこころの痛みを自分の痛みと感じる「思いやり」のこころ、そして信頼できる温かい人間関係の輪を作るこころといった人間としての根幹にかかわるこころが欠けつつあるのではないでしょうか。
 私は、これまでに多くの時間を費やして、先天異常の一つである「ポルフィリン症」の発症機序や診断・治療法について研究し、患者さんの立場に立った研究・教育活動をしてきました。この「ポルフィリン症」は、たった一つの遺伝子の異常が先天異常として出生後に発病する先天代謝異常症で、多彩な症状を診る難治性の稀疾患です。本症は、初期症状として消化器症状(腹痛、嘔吐、便秘等)や神経症状(運動麻痺や四肢知覚障害等)が前面に出る急性型と、皮膚の光線過敏症を主徴とする皮膚型がありますが、どちらも誤診や事故が後を絶ちません。
 しかし、今日においても、いまだに医師及び行政はこの病気に対する正しい知識を得ていないのが現状です。その結果、誤診による禁忌薬の投与などの誤った治療と十分な心身のケアーが得られず、毎年何人かの若い「いのち」を失います。患者さんにとっては根治療法が開発されない限りいつも時間がありません。
 「ポルフィリン症」は一度発症すると長期間の入院や高価な治療薬の投与が必要になります。そして何度も再発を繰り返し、その日を境に、太陽に当たれないとか、仕事がなくなる、一般的な薬が服用できなくなるなど、日常生活・社会生活に大きな障害を持ち、健常者には想像を絶する深刻なこころとからだの病を合併し、患者さん並びにそのご家族の辛苦は計り知れないものがあります。患者さんの中には17年間、入院生活を余儀なくされている方もおります。また、診断されずに突然に急逝したという話も聞きます。
 日本は経済大国、医療の先進国として、日本に住むポルフィリン症などの難病の患者さんが安心して生活し、先進医療が受けられるような、さらなる医療と福祉の充実が必要です。(近藤雅雄:健常人と難病患者、2015年7月12日掲載)

指定難病「ポルフィリン症」診断法の開発、患者発見に対する熱い思い

1.研究のきっかけ
 骨髄性プロトポルフィリン症の子どもの患者さんと28歳時に出会ってから約40年近く、ポルフィリン症の研究を行って来ました。私が研究を始めた1970年代、ポルフィリン症の診断技術は今とは異なってかなり未熟でした。ポルフィリンの測定は溶媒抽出法が主流で、測定に関わる試料の量は尿が50ml、血液は10mlを最低必要としました。しかも、測定できるのはウロポルフィリン、コプロポルフィリン、プロトポルフィリンの3種類でした。さらに、その3種類のポルフィリンはいずれも厳密に分離することができず、正確な量を知ることは困難でした。さらに、測定にはポルフィリンが光で分解することから、暗い実験室での分析が必須で、その時間は約1日を要しました。したがって、ポルフィリン症の診断には高度な技術、費用、時間がかかることから、殆ど国内では行われず、研究者もいませんでした。そのために、ポルフィリン症の診断は大変遅れ、病院外来においても診断できないため、病院を何カ所も変えたり、または誤診される確率が非常に高い病気でした。この病気は生後の生活習慣による光照射、ストレスや医薬品などの薬などによって発症・増悪するので、早期発見することが何よりも大切です。診断法の開発が急がれました。
ポルフィリン類

2.診断技術の開発
 そこで、これらの難点を一つひとつ解消するために、当時のポルフィリン標準物質を用いて、ポルフィリンの微量迅速測定法の開発を試みました。それは何よりも、ポルフィリン症の診断法を確立したいという熱い思いの下、各種分析法の検討に入りました。漸く、1970年代後半、血液、尿、糞便・組織中のポルフィリン類の分析法として、血液及び尿10μℓ、糞便・肝組織50mgといった微量試料を用いて、生体内に存在する全ポルフィリン類(約20種類あります)をほんの数10分で測定できる高速液体クロマトグラフィーを用いた画期的な自動微量迅速分析定量法を開発しました。この開発には、当時日本分光工業(株)の富田さん(故人)を中心に多くの分析の専門家の協力によって確立することができました。

3.遺伝性ポルフィリン症の確定診断
 我が国で初めて、ポルフィリン症の診断法の研究が行われると同時に、全国の医療機関からポルフィリン代謝異常が疑われた患者さんの尿、血液、糞便試料中のポルフィリンの分析依頼が殺到、もしくは全国医療機関に出かけて患者さんの試料を採取させていただきました。この1978年~2007年2月の約30年間に、総検体(試料)数は約5000に上り、ポルフィリン症の疑わしき患者数は1400例以上に上りました。この内、遺伝性ポルフィリン症として確定診断されたのは、以下の203例でした。

 その内訳は『先天性骨髄性ポルフィリン症11例(男性M=7例、女性F=4例)、骨髄性プロトポルフィリン症39例(M=29例、F=10例)、ALAD欠損性ポルフィリン症1家系6例(M=4例、F=2例 )、肝骨髄性ポルフィリン症2例(M=2例)、急性間歇性ポルフィリン症73例(M=11例、F=62例)、異型ポルフィリン症14例(M=2例、F=12例)、遺伝性コプロポルフィリン症14例(M=8例、F=6例)、ハルデロポルフィリン症1例(M)、晩発性皮膚ポルフィリン症43例(M=39例、F=4例)』です。

 これに、最大の恩師である浦田郡平先生(元国立公衆衛生院部長)、及び共同研究者の工藤吉郎先生(元聖マリアンナ医科大学教授)によって見出された遺伝性ポルフィリン症を加えると約250例になります。これら遺伝性ポルフィリン症については、1920年に日本で初めて報告されてから2010年までの約90年間に926例が報告されていますが、この内、我々が見出した患者数は実に27%に相当します。
 1970年~1990年代、ポルフィリン症研究は一部の志のある教授によって次々に発見され、ポルフィリン症研究に多大な貢献が成されました。中でも、野中薫雄先生(元長崎大学医学部教授)を中心としたグループは教授室に教授自ら分光光度計を設置し、光線過敏症で診察に来た患者さんの尿からポルフィリンを片っ端から測定され、その結果、合計約50例の骨髄性プロトポルフィリン症(EPP)と晩発性皮膚ポルフィリン症(PCT)を発見し、患者の治療法の研究を行っていたと聞いています。また、佐々木英雄先生(元山形大学医学部教授)を中心としたグループは教授自ら東北を駆け回って、遺伝性コプロポルフィリン症(HCP)を発見し、我が国のHCPの殆どが先生らによって発見されました。

4.その他のポルフィリン代謝異常症の診断
 一方、遺伝性のポルフィリン症ではありませんが、ポルフィリン代謝異常症の疑いによって医療機関から検査依頼された疾患として、『鉄欠乏性貧血症15例(M=0例、F=15例)、Dubin Johnson症候群25例(M=10例、F=15例)、Rotor症候群2例(M=2例)、鉄芽球性貧血症59例(M=36例、F=23例)、鉛中毒症5例(M=3例、F=2例)、ヒ素中毒症6例(M=2例、F=2例)、カネミ油症3例(M=1例、F=2例)、ピロール中毒症22例、βタラセミア2例(M)、骨髄異形成症候群6例(M=3例、F=3例)、赤白血病1例(M)、再生不良性貧血症1例(F)、色素性乾皮症 2例(M)、ヘモクロマトーシス1例(M)、急性肝炎15例(M=10例、F=5例)、肝がん8例(M=6例、F=2例)、肝硬変症8例(M=6例、F=2例)、伝染性軟属腫1例(M)、伝染性膿痂疹1例(M)、先天性赤血球異形性貧血(CDA)2例、Refractory anemia with an excess of blasts (RAEB) 2例、Primary acquired refractory anemia (PARA) 4例、Primary acquired sideroblastic anemia (PASA) 13例、遺伝性球状赤血球症、遺伝性楕円赤血球症、腎不全患者、てんかん、精神性疾患等々』の多種類の疾患患者からポルフィリンの測定を行いました。測定に際しては、ポルフィリンだけでなくクレアチニンやヘモグロビンなども測る同時に、これら疾患の病態、症状、発症機序、診断、治療をも同時に勉強しなければなりません。
 測定の結果は、勿論、遺伝性ポルフィリン症ではありませんでしたが、何らかのポルフィリンの代謝異常があることを見出しました。これら疾患の中でも肝障害と造血障害では殆どの疾患でポルフィリンの代謝異常が存在することがわかりました。今や、これら疾患の病態生化学機序解明に重要な知見となっています。
 さて、私が研究機関を退職した2007年以降、現在までに、ポルフィリン症の研究者も急激に少なくなり、確定診断に必須なポルフィリン測定を行う研究・検査機関も殆ど無くなってしまったのが現状です。今後、国の「指定難病」承認を機会に、研究者及び検査機関が増えることを切に願っています。(近藤雅雄:ポルフィリン症診断法の開発に対する熱い思い、2015年7月7日掲載)

「ポルフィリン症」が指定難病となる‼

 平成27年3月9日、厚生労働省厚生科学審議会疾病対策部会指定難病検討委員会はポルフィリン症を含め新たに44疾患が指定難病に追加され、総計306疾患が5月中に正式承認・告示がなされ、7月から重症患者に対しての医療費助成が開始されます。
 ポルフィリン症については、難病でありながら長い間難病に指定されず、患者さんおよびその家族並びに医師、研究者など、それぞれが個別に難病指定への活動を行って来ましたが、平成9年、ポルフィリン症患者の会ができてからその活動は一層高まり、平成20年から全国にわたって署名活動が開始され、指定難病を受けるまでに集めた署名数は600,515筆に至りました。ここでは、ポルフィリン症が「指定難病」に承認されるまでの経緯を振り返ります。

 昭和47年10月に施行された「難病対策要綱」では難病の定義として①希少性、②発症原因およびそのメカニズムが未解決である、③診断基準及び治療法が未確立である、④生活面への長期わたる支障があるといった4つの条件を満たすものを難病として認めてから平成26年までの42年という長い年月を経ました。この間に難病認定されたのはたった56疾病のみですが、その経緯・背景は不明のままです。平成21年度からは厚生労働省内で難病指定の見直しが行われ、平成26年8月28日に56疾病から110疾病が「指定難病」として追加・決定しました。さらに、平成27年5月までに合計306の疾患が「指定難病」に承認されました。

 さて、今回「指定難病」として承認されたポルフィリン症は診断法が確立されているにもかかわらず症例数が少ないがゆえ、診断できる医師が少なく、治療法もない。発症すると長期間の入退院を繰り返します。その間、太陽に当たれないとか、仕事がないとか、日常・社会生活に大きな支障をきたします。したがって、生活の制約や医療費の圧迫により患者の心身的負担は膨大となり、QOLが著しく低下します。
 これが難病認定されれば、これまでの56疾患のように、その疾患に対しては医療費の助成のみならず、治療研究の促進のための助成金など様々な行政的・社会的配慮が成されてきたことから、多くの難病指定されてこなかった疾患の患者会および研究者が立ち上がり、指定難病を求めて活動を行ってきました。厚生労働省においても、継続的に公平・公正な難病行政についての検討がなされてきました。

1.ポルフィリン症とは
 ポルフィリン症は生体重要色素ヘム(赤血球中のヘモグロビンや肝細胞内のチトクロームp450、生命エネルギー(ATP)を生産するチトクロームなどの作用基)の合成に関わる8つの酵素のどれかに遺伝的な障害を持つ代謝異常症で、多彩な症状を診る難治性の疾患です。日本では1920年に第1例が報告されてから今日までに日本の医学会では約1000症例しか報告されていません。

1)症状
 遺伝子―酵素の異常によって9つの病型(ポルフィリン代謝障害)が報告されていますが、その症状は大きく急性型と皮膚型に大別されます。急性型は主に妊娠可能な女性に多く、重篤な腹部・神経症状の発作を繰り返します。つまり、患者さんは突然起る腹部の激痛、嘔吐、便秘を自覚し、運動麻痺、手足の知覚麻痺を伴います。また急性型の患者さんであっても病型よっては皮膚に日光が当ると炎症、潰瘍などを起こす光線過敏性皮膚症状も合併します。皮膚型の患者さんは、日光などの光曝露による光線過敏性皮膚症状が主ですが、重度の障害では骨軟骨の欠損脱落、肝硬変、溶血性貧血や脾腫を合併して日常生活が困難となる場合が多く見られます。

2)原因・誘因
 ヘム合成に関与する8個の酵素のうち、たった1つの遺伝子の異常によって、ヘム生産量の減少と途中中間代謝物であるポルフィリンまたはその前駆物質(5-アミノレブリン酸、ポルホビリノーゲン)が過剰生産・蓄積され、多彩な症状を引き起こします。本疾患の殆どは遺伝性の代謝異常ですが、発症には日光、月経・妊娠・分娩、各種医薬品、疲労、各種ストレス、ダイエット、飢餓、アルコール多飲などの後天的要因が必ず必要です。

3)治療
 すべての病型において対症療法しかありません。急性型については、欧米ではヘム補給薬が使われ、日本でも平成25年に保険適用されましたが、1回の投与が8万円、これを1カ月使用すると40万円の負担となります。また、皮膚型においては、光線過敏症状の治療というものはなく、日光や明かりを避けるために外出の制約が強いられます。

4)予防・検査・窓口
 ポルフィリン症は誤診で悪化させるケースが多いので、とにかく発症前に早期診断・予防することが何よりも重要です。しかし、未だに一般検査はなく、専門医も極めて少ないのが現状です。

2.難病指定への道
 私は21歳時からポルフィリンの美麗な生命色素に魅了され、ポルフィリン代謝産物および諸酵素活性の測定法の開発、ポルフィリン代謝調節機序並びにポルフィリン症の診断法や診断基準および治療法について研究してきました。その過程で、28歳時にポルフィリン症の子どもの患者さんと出会い、生涯の研究テーマとして、この病気に関わることとなりました。そして、患者さんの要望によって平成9年には全国ポルフィリン代謝異常患者の会「さくら友の会」を設立し、同時にポルフィリンに係る学術学会「ポルフィリン研究会」を立上げ、様々な方面から患者さんの立場に立った研究・教育活動を普及してきました。しかし、毎年、多くの若い「いのち」を失い、患者さんにとってはいつも時間がありません。また、難病に指定されていなかったことから本格的な治療研究も行われてきませんでした。そこで、ポルフィリン症を含めて多くの難治性の希少疾患についての治療研究の推進、行政の支援が得られるよう行動を開始しました。

3.日本の難病行政に対するアクションと難病指定を受ける意義
 ポルフィリン症は、国が示す難病4条件をすべて満たしていながら、長い間、なぜ難病に認定されないのであろうか?ポルフィリン症を診た事のある医師の殆どが、なぜ難病に指定されないのかといった疑問を持っていました。また、同じような疑問が全国の人々から寄せらました。
 ポルフィリン症患者の多くは日常生活に制限が加えられ、或いは、体力が著しく低下するなど、相応の収入が見込める職につくことが難しいのが現実です。したがって、多くの患者さんが適切で継続的な治療を受けることが出来ずに苦しみ、これからもこの苦しみから抜け出すことが出来ない状況が続くと思いました。この不条理な状況を少しでも変えるためには、国による難病指定を受けることが不可欠であると思いました。
 ポルフィリン症は希少疾患であるため誤診や事故が後を絶ちません。この様に、ポルフィリン症は国の難病事業の対象疾患として、まさに適合する重大な疾患であることから、難病指定を求める運動を平成20年より開始しました。平成21年11月には、全国から410,520筆の署名を長妻昭元厚生労働大臣に提出すると同時に民主党内に「ポルフィリン症を考える議員連盟」を結成し、川上義博元参議院議員が会長(顧問:故西岡武夫参議院議員)となり、日本における難病対策の在り方について提言してきました。平成24年1月には140,028筆の署名を小宮山洋子元厚生労働大臣に提出、平成26年4月には42,837筆の署名を田村憲久元厚生労働大臣に提出、平成26年9月25日には379筆の署名を永岡厚生労働副大臣に提出致しました。また、鳥取からは「池谷兄弟を応援する会」が立ち上がり、鳥取県知事、境港市長への陳情、さらに、さくら友の会と歩行を合わせ、先の大臣陳情を行いました。さらに、島根県済生会江津総合病院堀江裕院長(現在名誉院長)と共に竹下亘衆議院議員(現復興大臣)など国会議員への陳情を行いました。これらの活動を通して、ポルフィリン症の難病指定の実現に向けて長年に亘り粘り強く請願を続けてきました。この間にさらに3893筆の署名が集まり総計60万を超す署名数となったことは、大変重たく受け止めております。
 これら活動の意義として、ポルフィリン症が難病指定されれば、医師、医療機関に広く正しくこの病気を知る良い機会となり、誤診や事故を著しく減らすことにも繋がります。さらに、治療の研究が加速することが期待されます。そして、何よりもこれまで理解されなかった病気が難病として認められたことに大きな意義があると思います。つまり、これまではわけのわからない病気として追いやられていたのが、国が認めた病気ということで、医療機関、行政・社会での対応も一変し、真摯に、前向きに注視されることが期待されます。

4.患者会の活動
 平成20年、患者会の室谷一蔵会長は、治療研究の推進、行政支援、生活への支援が得られるよう、全国署名活動を開始しました。そして、平成21年より、北海道から沖縄まで、日本全国の支援者から頂いた総計600,515人の署名を厚生労働省に持参し、難病指定を求めてきました。その結果、平成21年度に初めて厚生労働省の難治性疾患克服研究事業として「遺伝性ポルフィリン症の全国疫学調査並びに診断・治療法の開発に関する研究」が採択され、近藤(元東京都市大学人間科学部教授・学部長)を研究代表者として、我が国において初めて、患者の立場に立ったポルフィリン症の調査・研究がスタートしました。さらに、急性ポルフィリン症の未承認薬については長い年月がかかりましたが、患者会の地道な活動によって、平成25年には保険治療薬として承認されるに至りました。しかし、この時点において、ポルフィリン症が難病に認定されたわけではありません。患者会理事の大変な活動によって、平成27年3月にようやくポルフィリン症が指定難病として承認されました。
 患者会は、引続き、経済大国、医療の先進国として、日本に住むポルフィリン症の患者さんを含め多くの難病患者さんが安心して生活し、安心して高度先進医療が受けられるよう、医療と福祉の充実を国に強く求めていきます。

5.国の難病指定の在り方
 現在、世界中で難病と言われている疾患が7,000以上あり、公平な難病指定の在り方が問われてきました。平成21年に民主党政権に移行してから漸く「難病対策の現状と課題について」厚生労働省を中心として本格的な議論が始まりました。平成25年に自民党政権に復権してからは、「難病医療法」が5月に成立、平成27年度から施行することが決まり、厚生科学審議会疾病対策部会の「指定難病検討委員会」が中心となり、指定難病の各要件(①治療方法が確立していない、②長期の療養を必要とする、③患者数が人口の0.1%程度に達しない、④客観的な診断基準などが確立している)を満たすかどうかの検討が開始されました。平成26年度までに56疾患が難病として認定されてきましたが、平成27年度に約300疾患に拡大し、対象患者をこれ迄の78万人(この中には希少疾患から外れるパーキンソン病(患者数約10万9千人)や潰瘍性大腸炎(患者数約14万4千人)なども含まれている)から150万人に増やし、患者数は人口の0.15%にあたる18万人未満を目安に決められました。しかし、現在わが国において指定難病を求めている疾患は約600あり、今後も増加する傾向です。

6.健常人と患者とは
 ところで、すべての人間が10個以上の遺伝子の異常を持って生まれてくる。しかし何の自覚症状もなく健康な人が殆どです。ところが、ポルフィリン症のように、その遺伝子の異常が病気となって現れる人もいます。
健康の反対が病気ですが、これまで健康であった人が、何らかの原因によって病気になった時に、人は初めて健康の有難さを考え、誰もが二度と病気になりたくないと思うものです。ところが、病気を持って生まれてきた人は、どうでしょうか。彼らは健康に対する願望といのちを大切にするこころが健康な人以上に強く、また、健康な人以上に感謝の気持ちを持っています。私たち健常者に足りないものを多く持っています。今の人間社会に欠けているのは、いのちを大切にするこころと、相手のこころの痛みを自分の痛みと感じる「思いやり」のこころ、そして信頼できる温かい人間関係の輪を作ることです。

7.患者さんの意見
 患者さんはいつまた再発するかについての不安、いのちの不安、遺伝の不安、社会復帰の不安、生活の不安、学習環境の不安、人間関係の不安等々、深刻であり、これらがストレスとなって再発を繰り返します。以下に患者さんの切なる主な意見を記載しました。

1)皮膚型ポルフィリン症患者の意見
(1)日光を避ける生活がいかに大変か実感。「太陽が怖い」と落ち込んで学校を休んだことも。これからの成長でこころが心配。
(2)男子なので外遊びを禁じるとストレスがたまる。友達もいなくなり、休み時間も一人でいることが多くなり心配。
(3)小学生の頃は、人と違うことが嫌で学校行事に参加。しかし、なかなか行動がコントロールできず、痛みに苦しめられる。もっと病気のことを多くの人にしってもらいたい。
(4)小学校の頃は、長袖長ズボンで学校は送り迎え。娘は一人暮らしをしている。いつ発症するかと思うと心配。肝機能についても心配。初潮を迎えると貧血があった。
(5)3歳で発症してから孤独な気持で過ごす。同じ患者さんと情報交換したい。
(6)入退院や、病気のことで転校した。病気への理解を伝えたい。
(7)健常者に病気のことを話しても理解してもらえず、軽くみられることが多い。早く難病認定になるよう出来ることがあれば協力したい。
(8)病気のこともいろいろ知りたい。2年前に流産。産婦人科の先生は皮膚が弱いことを言い当てたが、皮膚科の先生からは関係ないと言われた。病名が何かわからない。
(9)娘を妊娠中、蕁麻疹がひどく皮膚科で紫外線を当てる治療をした。そのことを後悔している。娘の症状を日光だと感じつつ、診断がつくまで4年、これもまた後悔される。もっと多くの人に知ってもらい。娘の将来に悩みは尽きない。

2)急性ポルフィリン症患者の意見
(1)毎月1回以上入院している。学校は送り迎え、体育見学、腹痛嘔吐がない時でも微熱あり。入院中は絶食その後通常の半量。とても心配。
(2)妊娠の度に体調が悪くなり、2番目の子は未熟児、3番目の子は死産した。その後、子宮筋腫で手術。地方の医師ではなかなか病名を理解してもらえない。
(3)親戚がキャリアかどうか調べてもらうために病院へ行ったが、知らないと言われた。まずは病名を内科医に知ってもらいたい。
(4)近所の開業医では診てもらえない。子どもがほしいが、産後どうなるかと不安。
(5)重い発作の度に孤独感を味わう。医者、周囲の無理解、中途半端な知識を埋めるべくいちいち説明する。
(6)歯医者に行き麻酔をかけるとき塩酸リドカインが禁忌薬と判明。医師と相談したが、冷たく扱われた。相談する人がいない。
(7)娘が2人、検査を受けさせたいが、高額で躊躇する。自分は結婚、出産後、発症したため夫の理解が得られない。
(8)いつも頭がぼーっとし、発作が繰り返し出現。同じ状態が続くのかと思うと不安。

8.参考文献
1)近藤雅雄:ポルフィリン-ヘム代謝異常、先天代謝異常症候群(第2版)・下、別冊日本臨牀・新領域別症候群シリーズ No.20、p.165 (2012).
2)近藤雅雄:ポルフィリン代謝異常、内科学書、改訂第8版、Vol.5、内分泌疾患、代謝・栄養疾患、中山書店、p.424 (2013).
3)遺伝性ポルフィリン症:厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等克服研究事業)総合研究報告書、2009~2014
(近藤雅雄:全国ポルフィリン代謝障害患者会「さくら友の会」事務局代表、2015.6.5掲載)

全国ポルフィリン代謝障害患者の会「さくら友の会」開設運営について

 ポルフィリン症は2017年に国の医療費助成の対象となる「指定難病」に認められました。
 本症はヘム合成経路の酵素異常によるポルフィリン体の異常蓄積によって起こる一群の疾患群を言います。臨床的には、消化器症状(腹痛、嘔吐、便秘など)や神経症状(運動麻痺や四肢知覚障害など)といった症状が前面に出る急性ポルフィリン症と、皮膚症状(紅斑、水疱や色素沈着など)を特徴とする皮膚ポルフィリン症に大きく二分することができます。急性および皮膚ポルフィリン症の多くの病型が赤い着色尿を排泄し、常染色体優性遺伝の形式をとるのが特徴です。日常診療の場で遭遇することがあるのは、大量飲酒者に好発し、近年ではHCV陽性者との関連が注目されている晩発性皮膚ポルフィリン症(PCT)と、腹痛患者で鑑別診断となる急性間歇性ポルフィリン症(AIP)ですが、それ以外にも欠損する酵素によって、全部で9種類のポルフィリン症が知られています。
 1984-1999年間の慈恵医科大学皮膚科の光線過敏外来での診断の内訳では多形日光疹(25%)、光線過敏型薬疹(14%)、光接触性皮膚炎(9%)等に比して、ポルフィリン症が3%も占めていて、決して「極めて稀な」疾患ではないことがわかりました。つまり、一般外来において、かなりの確率でポルフィリン症患者を「見落としている」可能性が否定できません。
 一方、ポルフィリン症は現在までのところ、根本的な治療法がまったくないのが現状であり、遺伝性疾患であるという問題も含めて患者さん並びに家族の負担が非常に大きいのが実情です。全国レベルでみても、ポルフィリン症の診療を専門とする医療機関はほとんどなく、この点でも患者さんが十分なフォローを受けているとは言い難いのが現状です。
我われは、実際にポルフィリン症の患者さんを長年フォローし、また日本全国に散らばる患者さんの紹介を受けて、医療相談を行っていくうちに、患者間と医療サイドのネットワークの必要性を認識するようになり、「ポルフィリン症患者の会」の設立を進めてきました。その結果、ポルフィリン症患者およびその家族、一般健常人、そして医療関係者を会員とする全国ポルフィリン代謝障害友の会「愛称(さくら友の会)」を設立し、平成13年に第1回の総会を開催するに至りました。
 現在、さくら友の会では、主に医療サイドと患者サイドが共同で製作する会報の発行、ホームページ上での患者さんとの意見交換を行っているほか、年に一度の総会における広報活動等を行っています。とくにホームページではそれまでなかなか日常生活における問題を相談できなかった患者さんからの率直な悩みを専門家に相談できる場として機能してきており、筆者もこれまで接することのなかった全国のポルフィリン症患者さんに対して、生活上の注意点、専門医療機関の紹介、あるいは実際に患者さんを訪問しての指導といった活動を行っています。
 しかしながら、これまでに報告されたポルフィリン症の患者数から考えますと、さくら友の会に参加しているポルフィリン症患者さんはまだまだごく一部であり、これから一層の啓発活動、広報活動が必要になってくると考えられます。また、患者さんだけでなく、現場の医療サイドを対象としたポルフィリン症に関する啓発活動も今後ますます必要となってくると思われます。読者の皆様の中で、ポルフィリン症、あるいは本症が疑われる患者さんをフォローしている方があれば、ぜひ本会への御連絡をお願いする次第です。平成30年4月より患者会事務局が変わりましたので、下記のホームページにご連絡ください。(近藤雅雄;2015年6月1日掲載、2018年7月24日更新)
「さくら友の会」のホームページ:http://www.sakuratomonokai.com/

日本の遺伝性ポルフィリン症~~1920 年(第 1 例報告)から 91 年間(2010 年)の集計~

1920年に国内で初めて遺伝性ポルフィリン症が報告されてから2010年12月末までの91年間に926症例のポルフィリン症患者報告例を見出しました。この926症例について、病型別に年齢・性・地理的分布、発症要因、臨床症状、初期診断、治療および予後などについて統計学的に集計を行った結果、日本の遺伝性ポルフィリン症患者の年度別発症動向や臨床症状、誘発要因などの実態、難病としてのポルフィリン症の全体などが展望され、ポルフィリン症研究において貴重なデータを得ることができました。しかし、本研究によって見出された症例は発症者の報告であり、遺伝的素質を持ちながら未発症者または医師が報告していない症例、および誤診症例などは含まれていません。
この研究では確定診断された926例について、原著論文や症例報告に記載してある内容について詳細にまとめました。ポルフィリン症の患者さんは世界中に存在し、その希少性および深刻な症状から注目されてきましたが、国外でのポルフィリン症に関する統計報告は殆ど見当たらず、その実態については殆ど不明でした。以上のことから、今回の調査結果は国際的にも非常に貴重な報告であり、ポルフィリン症の実態解明が急速に進むことが期待されます。(近藤雅雄ほか:ALA-Porphyrin Science, 2012,2,73-82掲載論文)・・・内容は下記pdfを参照してください。

ポルフィリン症の臨床統計

遺伝性ポルフィリン症の生化学診断法および診断基準案の作成

ポルフィリン症には酵素障害ならびに病態機序の違いによって8病型が報告されています。しかし、鑑別・確定診断のための検査法および診断基準はいまだに統一および一般化されていません。現在、本症の診断には臨床症状からポルフィリン症を疑い、特殊検査としてポルフィリン関連物質の測定を行った後、判定するのが一般的であり、診断には1週間以上を要します。
本研究では、ポルフィリン症における典型的な臨床症状と患者から得られた血液、尿、糞便中の各種ポルフィリン関連物質の測定値をまとめ、本症の早期診断を目的に、高速液体クロマトグラフィーを用いた生化学診断法による鑑別・確定診断法の確立と診断基準案の作成を検討しました。その結果、現状において十分に診断可能なシステム並びに診断基準案を作成ました。
(近藤雅雄ほか:ALA-Porphyrin Science,2012,1,33-43掲載論文)
内容は下記pdfからご覧ください。
ポルフィリン症診断基準

 

日本のポルフィリン症~過去、現在、将来

Porphyrias are a group of disorders caused by inherited deficiencies in the activities of the enzymes of the heme biosynthetic pathway. Afflicted patients suffer either from neurological disturbances, cutaneous photosensitivity, or both. The first recorded case of porphyria in Japan was a patient with congenital erythropoietic porphyria (CEP), and was reported by Sato and Takahashi in 1920. Since then, 884 cases of porphyria have been diagnosed based on characteristic clinical and/or laboratory findings (502 males, and 375 females and 7 of unknown gender). The most recent data available is dated December 31, 2007. We analyzed these 884 cases on the basis of chronological occurance, age distribution, gender difference, geographical distribution, risk factors, initial diagnosis of acute porphyric patients, and prognosis. In this study, we discuss our findings and will also explain the difficulties in gathering reliable data for accurate epidemiological research.

続きは下記のpdfをご覧ください。

Porphyria in Japan-The past, present, and future

先天性代謝異常「ポルフィリン症」を救えないか〔Food Research記事〕

「ポルフィリン症」という常染色体の遺伝病がある。この病気は1923年にA.Garrodによって先天性代謝異常症の中で最も代表的な病気として報告さ れ、わが国においても 1920年に最初の報告が東北帝国大学(現 東北大学)よりなされ、現在までに国内では1000人弱の患者報告がある。しかし発症するのは遺伝子の異常を有するヒトの約2割で その他はキャリヤーとして、未病の状態で存在する。

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中・高齢者の特発性ポルフィリン代謝異常症について~栄養学的アプローチ

中・高齢者に稀に発症する特発性 (散発性晩発性皮膚) ポルフィリン代謝異常症 (s-PCT) 患者の血液中の微量元素濃度が健常者と異なる事を見出しました。すなわち、患者10名(平均年齢51.4歳 (38~66歳)の血液中の各種元素(Al, As, Ba, Ca, Cd, Cr, Cu, Fe, Ga, K, Li, Mg, Mn, Mo, Ni, Pb, Rb, Se, Sn, Sr, Ti, V, Znの23元素)の濃度を誘導結合プラズマ発光分光分析計(ICP-AES)または誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を用いて測定しました。その結果、健常者に比してs-PCT患者の末梢血液中のMg, Ni, Se(<0.05)およびRb(<0.01)濃度は有意に低値でした。これに反してMoは有意に高値を示しました(<0.01)。さらに、As, Ca, Fe, K, Znは低下傾向を示し、Cdが高値の傾向を示しました。また、各元素間においても、各々健常者群では見られない有意な相関関係が認められました。しかし、これら各種元素濃度と尿中ポルフィリン量との間には有意な相互関係は見られませんでした。これらの元素変動を調べたのは世界でも初めてのことであり、今後の研究に有用と思われます。
以上の結果は、これまでにs-PCTの発症には鉄が強く関与することが推測されていることから、これらの元素変動はPCT発症の一因となり得る可能性が示唆されました。(掲載論文:近藤雅雄ほか、薬理と治療、vol.33:S37-S44, 2005)。続きは下記のpdfを参照してください。

中高齢者の特発性ポルフィリン代謝異常症について

本邦で報告された先天性赤芽球性ポルフィリン症の全症例解析

先天性赤芽球性(骨髄性)ポルフィリン症 (congenital erythropoietic porphyria, CEP) は常染色体劣性遺伝であり、皮膚型ポルフィリン症の中では最も激烈な皮膚光線過敏症を呈する希少疾患です。本邦では1920年にはじめて報告されて以来、今日までに35例が見出されています。CEPはウロポルフィリノゲンⅢ合成酵素遺伝子の異常によって、本酵素の活性が正常の2~20%に減少しているため、生体内では利用されないⅠ型ポルフィリンの過剰生産・蓄積・排泄が起こり、その結果、皮膚症状をはじめとする各種症状が出現します。我われは、国内で報告された全CEP 症例について、発症年齢、性、発症要因、臨床症状、治療および予後などについて検討しました。また、強膜病変を発症している4例のCEP患者の涙液中に著明なポルフィリン増量を見出しました。
本稿ではこれらの結果ならびに最近のCEPの知見について総説しました。
(近藤雅雄ほか:学術雑誌「Porphyrins」 2005:14(2), 69-84に掲載された論文)。続きは下記pdfをご覧ください。

先天性骨髄性ポルフィリン症pdf

晩発性皮膚ポルフィリン症の臨床及び生化学的解析

晩発性皮膚ポルフィリン症 (Porphyria cutanea tarda, PCT) はポルフィリン代謝系の5番目の酵素であるウロポルフィリノゲン脱炭酸酵素 (uroporphyrinogen decarboxylase, UROD) の活性低下に基づく代謝性疾患であり、遺伝性と獲得性が知られ、光線過敏症と肝障害を合併します。遺伝性 (家族性、f-PCT) ではUROD遺伝子異常が認められますが、獲得性 (s-PCT)のポルフィリン代謝および肝障害の発症機序については未だに不明です。また、近年PCTに高率でC型肝炎ウイルス感染が合併していることが明らかとなり、さらにPCT患者においては鉄の吸収促進による鉄沈着も指摘され、この鉄沈着についてはヘモクロマトーシス因子 (HFE)との関係が注目されています。
本稿では、わが国において報告されたPCTの全症例を臨床統計し、日本の現状と世界の現状およびs-PCTのC型肝炎合併症例の特徴について概説しました。
(近藤雅雄ほか:Porphyrins 2004:13( 3,4)93-104, 掲載論文)続きは下記pdfを見てください。

晩発性皮膚ポルフィリン症の臨床および生化学的診断

ヘム合成酵素とポルフィリン代謝異常症の診断

本邦で発見されたポルフィリン症患者総数は2002年までに約 827例ですが、不顕性遺伝子保有者(キャリア)はこの数十倍存在するものと思われます。キャリアの早期発見はポルフィリン症の発症予防において極めて重要ですが、その実態についてはまったく不明です。したがって、ポルフィリン症およびそのキャリアの確定診断上、当該病型の責任酵素の活性測定が重要となります。
責任酵素の活性測定には主に血液細胞、肝細胞、各種培養細胞など極微量の臨床材料が用いられていますが、測定法および活性値は統一されておらず、異常値を判定するには必ず対照値が必要となります。ここでは、臨床上比較的頻度の高いポルフィリン代謝異常症の確定診断において重要な8つのヘム合成系酵素活性の測定法と臨床的意義について述べました。
( 近藤雅雄:Porphyrins 2004:13(3,4)105-122掲載論文)詳細内容は下記pdfを参照してください。

ヘム合成酵素とポルフィリン代謝異常症の診断

ヘム生合成関連物質及びその測定意義

ヘム生合成関連物質の測定は先天性ポルフィリン症の確定診断や鉛作業者の職業病検診に不可欠です。そこで、医療現場からの要望のとくに高い物質について、民間諸検査機関が行っているポルフィリン代謝関連物質の測定項目を中心に、その概要、基準値、異常値を呈する疾患、臨床的意義、検査のすすめ方などについて、さらにポルフィリン関連物質測定に関する諸情報をまとめました。(近藤雅雄:Porphyrins 2003:12(2),73-88掲載論文)続きは下記pdf・・・・

ヘム生合成関連物質およびその測定意義

ポルフィリン症と薬剤

先天性ポルフィリン症の発症には生体内外の環境因子が深く関与することが多い。特に、多くの薬剤が本症の発症・増悪に関与していることから、これら薬剤の正確な把握が重要です。そこで、本研究ではポルフィリン症の誘発薬剤および治療・予防としての薬剤について、現状までの諸情報をまとめました。さらに、直接ポルフィリン代謝異常を引き起こす薬物についてもまとめました。(近藤雅雄ほか:ポルフィリン 8巻2号:87-96ページ、1999年)詳細内容は下記pdf・・・・

薬剤論文

我が国における肝赤芽球性ポルフィリン症の最初の報告

肝赤芽球性ポルフィリン症(Hepatoerythropoietic porphyria,HEP)は1967年にGuntherによって肝性と骨髄性の双方の生化学的性質をもつ珍しいポルフィリン症として初めて報告された。Elder らはHEP 患者のウロポルフィリノ-ゲンデカルボキシラ-ゼ(UROD) 活性が正常の7 ~8 %であることを認め、家族性晩発性皮膚ポルフィリン症(familial porphyria cutanea tarda,fPCT) のホモ接合体として考えられている。本症は2000年までに世界で約30例しか報告がない極めて稀な疾患である。HEPはfPCTと同じUROD遺伝子の異常であるが、前者は常染色体劣性遺伝であり生後~幼児期に発症するのに対し、後者は常染色体優性遺伝し、主に成人後発症する。URODは骨髄赤芽球よりも肝での発現量が低いため、HEP、fPCTは共に肝性ポルフィリン症として分類される。しかし、HEP ではUROD活性が著明に減少しているために肝と骨髄の双方でポルフィリンの代謝異常が生じる。

今回、我々は赤血球遊離protoporphyrin(FP)および尿中uroporphyrin (UP), heptacarboxyl porphyrin (7P) , coproporphyrin (CP) が異常高値を示し、HEP が強く疑われた患者を経験した。 症例は15歳の男性で、強い光線過敏症、著明な肝腫大、黄疸を認めたが、貧血、腹痛、嘔吐、便秘はない。また、尿および血液の著明なポルフィリン代謝異常を見出し、患者の臨床症状および尿・血液中のポルフィリン分析により、わが国で初めての肝赤芽球性ポルフィリン症が強く疑われた。
(掲載論文:近藤雅雄 ポルフィリン8(2):81-86, 1999年)

肝赤芽球性ポルフィリン症が疑われた一症例

ポルフィリン症の生化学的診断

ポルフィリン代謝に関与する各種酵素の活性およびその代謝産物の測定はポルフィリン代謝異常症の診断、病態解析に、また、鉛作業者の職業病検診などに不可欠である。さらに、これら臨床方面だけでなく、本書に記載されている多方面のポルフィリン研究分野で、ポルフィリンの分析および関連する酵素活性の測定は重要である。しかし、これまで報告されてきた溶媒抽出法を主体としたポルフィリン測定法は診断上重要な異性体の分離が困難であり、試料の前処理および抽出したポルフィリンのエステル化など、操作が煩雑で、回収率、再現性が悪い。しかも測定に長時間を要するという様々な障害があったが、近年の急速に進展した高速液体クロマトグラフィ-(HPLC)の出現によって、ポルフィリン代謝異常症の研究が飛躍的に発展した。すなわち、微量生検材料中のポルフィリン分析、さらに酵素活性の測定が短時間で、正確に測定できるようになり、ポルフィリン症の確定診断、病態解析などポルフィリンの臨床化学分野でHPLCは必要不可欠となった。

ここでは、臨床材料からのポルフィリン代謝産物および関連酵素活性の各種測定法を紹介すると共に、その意義について述べる。(掲載論文:近藤雅雄、日本皮膚科学会)

ポルフィリン症の生化学的診断

ポルフィリン症の生化学的診断 2

 

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