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5-アミノレブリン酸(ALA)は免疫機能を増強させる

1.はじめに
 現代のストレス社会ではヘムオキシゲナーゼによってヘムの分解が促進するため、ala%e5%85%8d%e7%96%ab1ヘム量が不足する。ヘムはALAからミトコンドリア生産される生体赤色素であり、呼吸やエネルギー生産、神経、内分泌、免疫の機能保持など、生命維持に不可欠な根源物質である。そこで、免疫機能の中枢である胸腺に対して、ALA・ヘムとの関連を検討した。

2.研究方法
 雌雄高齢マウス(約35~45週齢;BALB/ cAJcl,日本クレア(株))に体重1kgあたり2~10mgのALAを投与するように1日の飲水量に配合し7日間自由摂取させた(各群5匹)。実際の摂取量は飲水量から計算した。飼料はCE-2(日本クレア(株))を自由摂取させた。飼育終了後、胸腺重量、胸腺細胞数、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)活性、グルタチオンペルオキシダーゼ(GpX)活性、ヘム合成関連物質の測定およびジーンチップによる遺伝子発現解析、リンパ球の幼若化能およびサブセットなどを測定した。

3.結果
1)胸腺免疫機能に及ぼす影響
 ALA投与によって胸腺重量および胸腺細胞数が有意に増量し、その影響は高齢マウスで著しく、さらに雌に比べて雄の方が著しいことを見出した。ALAにより細胞の分化・増殖が亢進したものと示唆された。胸腺細胞のリンパ球(CD4, CD8)サブセットが雌雄マウス共に増加傾向を示した。さらに、ALA投与によって活性酸素を消去するSOD活性が有意に増加した。

2)ヘム合成に及ぼす影響
 血液細胞および胸腺細胞共にALAを代謝する酵素が次々と活性化され、ヘム合成量が増加した。この結果は、ALA投与によって胸腺の機能が回復・亢進することを示している。胸腺重量の増加は病理標本を作成・検討した結果、胸腺内リンパ球数の増加を認めた。

3)胸腺遺伝子発現に及ぼす研究
 胸腺細胞からt-RNAを抽出し、遺伝子解析を行った。その結果、ALA投与によって934個の遺伝子の発現量に変化が見られた。さらにトランスクリプトミクス解析からSOD遺伝子の発現などが確認された。

4.おわりに
 胸腺は加齢により萎縮し、それと共に免疫機能が低下することが分かっているが、ALA投与によって萎縮抑制のみならず、若年期の重量にまで回復することを証明した。さらにSOD活性の回復による抗酸化機能の増強が確認されたことは極めて重要な知見である。つまり、ALAは高齢者の免疫力増強と若返りに効能があることを示している。
 これまでに胸腺の萎縮を抑制または回復させる因子は発見されておらず、ALAは免疫機能に影響を与える新しい因子として、今後大いに注目されるであろう。
 一方で、健常者においては性差・年齢にかかわらず一日に約0.5~3mgのALAが尿中に排泄されている。同様な結果はマウスでも認められることから、ALA投与による生体影響についてはさらなる科学的検証が必要である。
 現在、ALAに関する健康食品や医薬品が商品化されているが、ポルフィリン代謝異常症を有する人に用いるのは避けるべきである。このALAに関する研究はポルフィリン代謝異常症の治療法の開発および病態機序研究から得た知識を基盤としている。
 我われが行った本研究の内容については下記のPDFを参照されたい。(近藤雅雄:平成28年11月25日掲載)
PDF1:ALAの免疫増強作用機序
PDF2:ALAと免疫の図

持久力をサポートする「アラプラス スポーツ ハイパフォーマンス」とは?

 健康寿命の延伸とQOL(生活の質)の向上には適切な食生活と運動習慣、休養が大切ですが、5-アミノレブリン酸(ALA)はこれら健康生活をサポートすることが分かってきました。
 そこで、最近、SBIアラプロモ株式会社から販売された「アラプラス スポーツ ハイパフォーマンス」の健康効果について最新の科学的根拠に基づき解説します。

1.ALAとは
 ミトコンドリアで生産されるALAは蛋白質を構成するアミノ酸ではなく、生命維持に不可欠な赤い色素ヘムを生産する生命の根幹物質です(図1)。最近、このアミノ酸が貧血予防、運動・代謝機能の亢進、抗酸化、免疫増強、美容などのヘルスケアー領域、脳腫瘍の診断・治療をはじめ多くのがん、疾病発症の予防および治療などのメディカルケアー領域で研究され、急速に注目され始めました(文献11.ポルフィリンーALA学会編:機能性アミノ酸「5‐アミノレブリン酸の科学と医学応用」-がんの診断・治療を中心にー、現代化学・増刊45、東京化学同人、2015.10)。
ALA
2. ALAから生産されるヘム蛋白の多様な機能
 図1に示した様に、各組織にて生産されたALAは最終的にミトコンドリアにて生体色素ヘムとなり、これがアポ蛋白と結合し、①骨髄では酸素を運搬するヘモグロビン、②骨格筋では有酸素運動に関与する赤筋中の酸素貯蔵物質であるミオグロビン、③全身の組織細胞では生命エネルギー物質(ATP)を生産するチトクローム類、④神経では化学伝達物質であり、血管拡張物質である一酸化窒素(NO)を合成する酵素、⑤肝臓では解毒・薬物代謝を司るチトクロームP-450類、⑥内分泌器官ではホルモンの情報連絡に関与する酵素グアニルシクラーゼ、⑦肝臓や腎臓、赤血球に多く含まれ、活性酸素を分解する酵素カタラーゼ、⑧甲状腺では代謝に関わるサイロキシンを生産する酵素サイロペルオキシダーゼ等々、ALAは生命維持に不可欠な各種ヘム蛋白質の生産を行っています(図1)。

3.中高年齢ではALAの生産が低下すると共にヘムの分解が促進し、生体機能の低下が高まる

 ALAは加齢に伴い生産量が減少すると共に様々なストレスによって発生した活性酸素を消去する強力な抗酸化物質ビリルビンを生産するためにヘムを酸化的に分解するので、ヘム量は加齢と共に急激に減少します。その結果、図1に示したヘム蛋白が減少し、特に中高年齢者に様々な体調不良や疾病など(例えば貧血、筋疲労、倦怠感、易感染性(免疫力低下)、基礎代謝の低下、肥満など)が急速に増えてくる原因となります。

4.ALAの生体機能向上、免疫力強化によるアンチエイジング効果
 高齢動物にALAを投与すると、造血、免疫、抗酸化および運動などの諸機能が亢進することを相次いで見出しました(文献2~52.近藤雅雄ほか:運動機能向上剤、整理番号:P04561609、特願2004-255577.2004.9、動物にALAを投与すると運動機能を高めることを発見しました。
3.近藤雅雄ほか:健康機能向上剤、特開2006-96745, 2006.4.13、動物にALAを投与すると造血機能、免疫機能、運動機能、神経機能が高まることを発見しました。
4.近藤雅雄ほか:健康機能向上剤、PCT/JP2005/15560(国際特許)、2005.8、動物にALAを投与すると健康を保持、増進することを発見しました。
5.近藤雅雄ほか:免疫機能向上剤、特開2006-96746, 2006.4.13。動物にALAを投与すると体液性免疫及び細胞性免疫の機能が高まることを発見しました。
)。とくに、免疫中枢である胸腺重量は加齢に従って萎縮することがわかっていますが、ALA投与によって胸腺重量の縮退抑制、増量を見出しました(文献55.近藤雅雄ほか:免疫機能向上剤、特開2006-96746, 2006.4.13。動物にALAを投与すると体液性免疫及び細胞性免疫の機能が高まることを発見しました。)。この増量については細胞生物学的に詳細な検討を要しますが、免疫細胞の増殖促進・抗酸化力増強を確認しました(近藤:未発表)。現在、胸腺の萎縮が免疫の機能低下および老化促進の原因であることが推測されていることから、ALA投与によって免疫力強化、QOL向上および健康寿命延伸が図られることが期待されます。

5.ALAの疲労回復と運動機能向上
 高齢動物にALAを投与すると、運動機能の亢進および筋蛋白質の増量を見出しました(文献22.近藤雅雄ほか:運動機能向上剤、整理番号:P04561609、特願2004-255577.2004.9、動物にALAを投与すると運動機能が高まることを発見しました。)。さらに、人でも運動により鉄、亜鉛などのミネラル類が有意に減少することを見出し(文献6、76.Kondo M et al:Decrease in blood molybdenum (Mo) concentration as a result of competitive sports activities, Biomedical Research on Trace Elements, 14(4):316-318, 2003、激運動により血液中のモリブデンや亜鉛などのミネラルが減少することを見出しました。
7.近藤雅雄ほか:思春期女子のスポーツ活動における血色素合成異常とその発症機序に関する研究、体力研究、No.72: 93-100、1989. 激運動によるヘム生合成の異常を見出しました。
)、これらミネラルを補給すれば疲労回復速度の促進や運動機能、持久力などが向上します。
 これらの結果から、図2に示した様に、ALAプラス鉄などのミネラルの補給は様々なストレスからの回復と同時に造血促進、代謝促進、運動機能促進など生体機能を高めると共に恒常性を維持するため様々な生体機能障害の改善に有用です。
ALA2
 以上、「アラプラス スポーツ ハイパフォーマンス」にはALAの他に亜鉛含有酵母、クエン酸第一鉄ナトリウム、ナイアシンアミドなどがプラスされ、①エネルギー生産量の向上による代謝促進、②体温上昇による免疫力向上、③運動負荷による疲労回復亢進、持久力の向上などの効果があり、健康管理に適したサプリメントとして推薦します。
 健康食品には①表示、②過剰摂取、③摂取方法等の各問題があり、十分に情報を得てから摂取する必要がありますが、ALAは水溶性であり、必要量利用され、余分なALAは尿中に排泄されるので過剰摂取の問題や摂取方法の問題はありません。
 なお、指定難病ポルフィリン症の患者さんはポルフィリン代謝異常を誘発することがありますので服用しないでください。また、妊婦や授乳中の女性、乳幼児、子どもでの有効性・安全性に対する科学的根拠はありません。病気の方の場合は必ず医師にご相談ください。

6.文 献
1.ポルフィリンーALA学会編:機能性アミノ酸「5‐アミノレブリン酸の科学と医学応用」-がんの診断・治療を中心にー、現代化学・増刊45、東京化学同人、2015.10
2.近藤雅雄ほか:運動機能向上剤、整理番号:P04561609、特願2004-255577.2004.9、動物にALAを投与すると運動機能が高まることを発見しました。
3.近藤雅雄ほか:健康機能向上剤、特開2006-96745, 2006.4.13、動物にALAを投与すると造血機能、免疫機能、運動機能、神経機能が高まることを発見しました。
4.近藤雅雄ほか:健康機能向上剤、PCT/JP2005/15560(国際特許)、2005.8、動物にALAを投与すると健康を保持、増進することを発見しました。
5.近藤雅雄ほか:免疫機能向上剤、特開2006-96746, 2006.4.13。動物にALAを投与すると体液性免疫及び細胞性免疫の機能が高まることを発見しました。
6.Kondo M et al:Decrease in blood molybdenum (Mo) concentration as a result of competitive sports activities, Biomedical Research on Trace Elements, 14(4):316-318, 2003、激運動により血液中のモリブデンや亜鉛などのミネラルが減少することを見出しました。
7.近藤雅雄ほか:思春期女子のスポーツ活動における血色素合成異常とその発症機序に関する研究、体力研究、No.72: 93-100、1989. 激運動によりヘム生合成の異常を見出しました。
(近藤雅雄著、平成28年5月18日掲載)

以下のPDFも参照ください。
ALApdf2

ポルフィリンーALA学会より「功績賞」受賞

功績賞4-1
 4月22日、31年間通った港区白金台の旧国立公衆衛生院を久し振りに拝観しました。その後、本院の隣に位置する東京大学・医科学研究所にて開催された第6回ポルフィリンーALA学会年会において、会長の大倉一郎先生から本学会「功績賞」を拝受致しました。「功績賞」の盾には『ポルフィリンーALA研究領域において 長年にわたり多大な功績をあげられました よってここに功績賞を贈呈いたします』と刻まれていました。2003年の「学会賞」に続き2度目の受賞となり、私にとっては大変名誉なことで、学会の役員・会員、1000人近くの共同研究者・研究協力者、そして恩師浦田郡平先生に深謝いたします。また帰途、敷地内で衛生院時代の同僚である磯野威さんと偶然に出会ったことは驚きでした。
功績賞5-1
本学会設立の経緯
 私は旧国立公衆衛生院にて、31年間、厚生行政に関わる研究・教育活動を行いました。その間、今から30年前の1986年にALAの代謝を行うALA-D酵素が亜鉛酵素であることが分かり、臨床医学、公衆衛生学・衛生学・産業衛生学、生化学、植物学、栄養学など多分野から注目され、そこで、職場の仲間と共にALAD研究会を創設しました。4年後の1990年には、研究領域を拡大・全国組織として、ポルフィリン研究会と名称変更・規約を作成し、国立公衆衛生院にて第1回の総会を開催すると同時に査読付論文掲載雑誌「PORPHYRINS」を定期的刊行物(季刊)として出版を始めました。当時は年に2回研究発表会、4年に1回国際学会を行っておりました。
 その後、時代は変わり、2011年にALA研究会を主宰する先生方とポルフィリン研究会を主宰する先生方のご努力によって、両研究会が統合され、「ポルフィリン‐ALA学会」が誕生し発展・充実致しました。
公衆衛生院1
(写真の建物は旧国立公衆衛生院:2002年(平成14)4月に、旧厚生省の付属試験研究機関再編成によって64年の歴史を閉じました。建物は現在もそのままの状態で残っています。この建物は米国ロックフェラー財団の寄付によって建てられ、竣工当時は国会議事堂の次に高い建物で大変眺望が良かったそうです。日本建築学会が編集した日本建築物総覧(1980年)には特筆に値する建築物14000件および特に重要な2000件の中に本院建物は含まれ、同会長名による「近代日本の進歩と地域景観に寄与した」として、永く保存されたき旨の依願状を受けています。本院で31年間、教育・研究活動に身を投じて行ってきた一人として、重要文化財に近いものとして永く保存されることを願っています。本院は日本の公衆衛生学発祥の地です。)(近藤雅雄:平成28年4月25日掲載)

ALAを合成する酵素の新しい測定とその酵素のミトコンドリア内での様態

 ALAを生産する酵素、5-Aminolevulinate synthase (ALAS)活性の測定はsuccinyl-CoAとglycineを基質として測定されるのが世界的に広く知られています。このALASはヘム合成(ポルフィリン代謝)の律速酵素として最も重要な酵素です。肝性ポルフィリン症などのヘム合成系の酵素障害があるとALAS活性が増量してALAの生産を高めることが指摘され、ポルフィリン代謝異常で最も中心的役割を果たす酵素です。しかしながら、実際に肝臓のポルフィリン代謝障害を起こす晩発性皮膚ポルフィリン症の肝ALAS活性は増加しないことが広く知られ、この矛盾を説明することがこれまでにできませんでした。
 そこで、肝性ポルフィリン症患者の生検肝微量組織からα-ketoglutarateとglycineを基質としてALAS活性を測定した結果、succinyl-CoAとglycineを基質とした値よりもポルフィリン代謝をより反映していることが今回の実験によってわかりました。すなわち、肝ALAS活性の測定にはこれまでの方法と異なって、α-ketoglutarateとglycineを基質として測定した値の方がより肝性ポルフィリン症の病態を反映していることが示唆されると同時に肝ALAS酵素の作用機序がほぼ分かりかけてきました。
その内容は2015年9月の学術雑誌ALA-Porphyrin Scienceに掲載されました。以下のpdfで参照ください。(近藤雅雄:平成27年11月10日掲載)
肝ALAS porphyrin science,2015

新刊「5‐アミノレブリン酸の科学と医学応用」紹介

機能性アミノ酸「5‐アミノレブリン酸の科学と医学応用」-がんの診断・治療を中心にー
現代化学・増刊45、ポルフィリンーALA学会編、東京化学同人、2015.10.8発行、ISBN978-4-8079-1345-9 が発刊されました。
 本書は5‐アミノレブリン酸(ALA)の多様な研究に関して、最先端科学研究者48名によってまとめられた成書です。研究領域は医学、工学、理学、栄養学、農学、微生物学、環境学と幅広く、その内容はすべて人間を中心とした、がんの診断と治療および人類のQOLの向上と健康寿命の延伸並びに環境・農業・畜産業への貢献を目的としてまとめられたALA研究の最新成果が収められています。科学に興味を持つ一般学生はじめ多領域の研究者、臨床医など医療関係者にはぜひお薦めの成書です。
以下に本書の目次を示しました。
5-アミノレブリン酸の科学と医学応用表紙

第1部 生命科学と健康
1.5‐アミノレブリン酸・ポルフィリンの生命科学2.5‐アミノレブリン酸の合成および誘導体
3.5‐アミノレブリン酸・ポルフィリンの分析化学
4.ポルフィリン代謝異常症

第2部 がんの診断と治療
5.5‐アミノレブリン酸を利用したがんの診断・治療
6.脳腫瘍の診断と治療
7.皮膚がんの診断と治療
8.膀胱がんの診断と治療
9.前立腺がんの診断と治療
10.子宮頸ガンの治療
11.外科的手法による大腸がんの診断
12.内視鏡手法による大腸がんの診断
13.胃がんの診断
14.腹腔内悪性病変の診断
15.肝臓がんの診断と術中胆汁漏検索法
16.食道がんの診断
17.副甲状腺の同定診断
18.光線力学診断用機器の開発
19.脳腫瘍に対する光線力学診断用機器の開発
20.胸腔内悪性病変に対する光線力学診断用機器の開発
21.放射線療法の増感
22.超音波力学療法、温熱療法

第3章 代謝影響とヘルス・メディカルケア
23.5‐アミノレブリン酸およびヘムの代謝影響
24.ミトコンドリア病の治療と予防
25.脂質異常症の治療と予防:エネルギーおよび脂質代謝を中心として
26.赤血球造血細胞への影響
27.鉄芽球性貧血症の治療と予防
28.皮膚に対する影響
29.抗マラリヤ薬としての5-アミノレブリン酸
30.虚血再灌流系での効果
31.パーキンソン病への臨床効果

第4章 環境・農業・畜産業などへの応用
32.植物・農業分野での利用
33.畜産・水産分野での利用

 

5-アミノレブリン酸(ALA)のヘルス・メディカルケアー

 最近、5-アミノレブリン酸(ALA)が新規機能性アミノ酸として健康食品や美容、がんの診断・治療をはじめ多くの疾患の予防・治療など、ヘルス・メディカルケアー領域に注目されています。ALAは蛋白質を構成するアミノ酸ではなく、生命維持に不可欠なヘムやクロロフィルおよびビタミンB12等を生体内で合成する経路の最初の共通物質として、動植物を問わず広く生物界に存在する生命の根源物質です。

1. ALAの生合成

 ALAは動物のミトコンドリアや酵母、非硫黄紅色光合成菌を含む一部の細菌類ではALA合成酵素(ALAS)によりTCA回路のメンバーであるスクシニルCoAから合成されます。しかし、植物の葉緑体、藻類、シアノバクテリアなどの酸素発生型光合成を行う生物や他の多くの細菌類ではグルタミン酸からグルタミル酸t-RNA を利用して合成されます。

2.ヘム蛋白の機能 

 ALA自体には生理作用がありませんが、ALAによって最終的に生産されたヘムは各組織にて生産されたアポ蛋白と結合し、①酸素の運搬体であるヘモグロビン、②酸素の貯蔵物質である赤筋中のミオグロビン、③エネルギー物質であるATPの生産に関与するチトクローム類、④解毒・薬物代謝に関与するチトクロームP-450類、ヘムタンパク質⑤神経の化学伝達物質であり、血管拡張物質である一酸化窒素や一酸化炭素の生産、⑥代謝調節に関わる甲状腺ホルモンの合成、⑦ホルモンの情報連絡に関与するグアニルシクラーゼ、⑧活性酸素を分解するカタラーゼやペルオキシダーゼ、⑨脳の機能調節に関与するセロトニンや睡眠ホルモンであるメラトニンの合成に関わるトリプトファンピロラーゼなど、生体が健康を保持する上で不可欠な各種ヘム蛋白質の作用基として機能しています。したがって、生体機能の三大情報システムである神経性調節、内分泌調節、免疫調節など多方面にて重要な働きを行っています(図参照)。

3.ALAの機能性

 ALAはヘム生合成の出発物質として生命科学の重要な位置にあるため、ヘムの減少は様々な疾患や体調不良など(例えば貧血、エネルギー不足による筋疲労、免疫力低下、基礎代謝の低下など)を引き起こすことから、各種ヘルスケアーおよびメディカルケアーに対する有用物質として注目されています。その代表的なものが悪性腫瘍の研究です。外性的にALAを過剰投与すると腫瘍細胞内にポルフィリン誘導体が過剰生産・蓄積されることを利用した皮膚がん治療(光線力学的治療, photodynamic therapy; PDT)が実用化されています。今後、ALAを高濃度で投与した場合に腫瘍組織内に一時的に増加・蓄積するポルフィリン誘導体(特にプロトポルフィリンⅨ(PPⅨ))の光増感性を利用したがんのPDTや診断に広く利用されるようになるでしょう。
 一方、低濃度のALAと鉄やマグネシウムなどのミネラルを組合せることによって、植物や動物などの生物機能に大きな影響をもたらすことが分かってきました。

4.ALAの利用

1)植物への利用

 コスモ石油(株)のALA研究開発グループは、これまで困難であったALAの大量生産の方法を可能にし、植物に対するALAの効果に関する研究を進めてきた結果、①低濃度の添加により光合成能が増強され植物生長促進が得られること、②暗呼吸の抑制、③気孔開度の拡大、④耐塩性・耐寒性向上、⑤収量向上、⑦砂漠緑化、⑧健苗育成、⑨労働時間短縮などの効果を次々と見出しています。ALAを添加すればクロロフィルが増加するのは当然のように思えますが、添加したALA量よりもクロロフィル量は遥かに多いことから、ALAは植物の中で情報伝達物質的な役割を果たしていると考えられています。ALAは微量金属(マグネシウム、鉄、コバルトなど)との組合せが植物生長促進に有効であり、光合成能増強だけでなく、硝酸還元酵素の増強により窒素肥料の取組みを促進する効果もあることがわかっています。

2)健康増進に対する影響

 ALAの生産量が加齢に伴い減少すること、また様々なストレスによってヘムの分解が亢進することなどがら、ALAの健康に関わる研究が本格的に行われるようになりました。我われは、ALAを高齢マウスに適正量投与すると、造血、免疫、抗酸化および運動などの諸機能が亢進することを相次いで見出しました。とくに、免疫の中枢である胸腺重量は加齢に従って萎縮していくことがわかっていますが、ALA投与によって胸腺重量の縮退抑制、増量を見出しました。この増量については、細胞生物学的に詳細な検討をALA恒常性
要しますが、胸腺の萎縮が免疫の機能低下および老化促進の原因であることが推測されていることから、ALAの投与によって免疫能の強化、QOLの向上および健康寿命の延伸が図られることが大いに期待されます。ALAの投与によってヘムの生産が亢進するだけでなく、様々な良い遺伝子の発現が見られ、逆に悪い遺伝子の発現抑制によって生体恒常性機能が高まる。すなわち、ALAは生体のホメオスタシス機能を高め、様々な機能障害の改善に有用であると考えます(図参照)。

3)皮膚への影響

 坪内(皮膚科医)は皮膚とALAとの関係を検討し、ALAと鉄が入った溶液を週2回、計4回エレクトロポレーションにより皮膚内に導入すると、肌水分量が増加し、キメが改善されることを臨床的に明らかにしました。さらに、ALA、鉄投与によってヘムの生産が促進されため、細胞内にて多くの水とエネルギー(ATP)が生産され、水分と活力に満ちた細胞が生まれ変わること、ヒトの線維芽細胞にALAと鉄を加えるとコラーゲンやヒアルロン酸の生産量が増加することなどを報告し、肌のエイジングケアや保湿効果などが期待されています。

4)育毛効果

 伊藤(皮膚科医)はALAを用いた尋常性座そう(ニキビ)の光線力学療法(PDT)を開発し、重傷ニキビ患者へPDTを施したところ、ニキビの治癒と同時に「抜け毛が減った」、「産毛が生えた」という声があり、発毛促進剤としての可能性に着目しました。そこで、伊藤はALAと鉄の組合せによって男女を問わず発毛促進効果の発現の増強および高濃度投与時における光障害の回避を見出しました。ALAは5%ミノキシジル(リアップの主成分)よりも高い発毛促進効果があります。

5)がんの診断と治療

 ALAを用いたPDTの特徴は、治療後に傷跡が残らないことであり、皮膚がんの多い欧米では特に注目されています。また、ALAは腫瘍細胞内に特異的に取り込まれ、ミトコンドリアにてPPⅨに生合成され、PPⅨが紫外線照射によって赤色の蛍光を発光することから、がんの新しい診断法として注目されるようになりました。このALAを用いた診断治療の利点として、①ALAは水溶性であり、生体物質である。②過剰のALAは投与後1~2日以内に体内から尿中に排出され、副作用(光線過敏症)の心配がない。③ALAは腫瘍選択性が極めて高い。④従来PDT治療に用いられてきたフォトフリンなどのポルフィリン化合物に比べて血管内皮細胞への取り込みが少ない。⑤ALAは経口投与が可能である。⑥ALA投与による合併症がない。といった多くの利点が挙げられます。
 現在、最も注目されているのは脳腫瘍の術中診断です。我われは、これまでに数多くの脳腫瘍患者に対してALAを用いた術中脳腫瘍蛍光診断および腫瘍組織を摘出する方法を開発し、従来困難であった悪性脳腫瘍の術後の延命を可能にし、その機序も解明しました。
 一方、ALAはがん細胞に特異的に取り込まれ、ポルフィリンへと変換されるため、ALAの経口摂取によるがんの早期診断および術後の予防への応用も期待されます。

おわりに

 ALAから生産されるヘムには、それと結合する蛋白質(ヘム蛋白)によって多様な生理作用を持ち、生命維持に不可欠な様々な生化学的反応の根幹に関わる作用物質です。したがって、今後、新しい肥料、飼料、ヘルスケアなどの商品開発や次世代の新医療への応用など、ますます多領域での発展が期待されます。
 なお、ALAの効能についてはSBIファーマ(株)のホームページhttp://www.sbipharma.co.jp/に最新情報が掲載されています。(近藤雅雄:日本長生医学会「長生」, 4月号、pp.11-14, 2015.4を修正して掲載)

ALAの植物利用

シーズ・メイル対談

コスモ石油(株)は生命体のエネルギーとなる ALAを用いた事業を推進することで 社会の期待に応えています。ALAは 生命の根源に関わる物質として注目が高まっています。 ALAの働きと可能性、そしてコスモ石油(株)のALA事業について木村社長と意見交換をいたしました。
現在はコスモALA株式会社にてペンタガーデン等の植物利用に関わる研究及び製造が行われています。
2011年4月、コスモ石油株式会社の代表取締役社長 木村 彌一氏との対談の内容がシーズ・メイルで紹介され、その内容を下記のpdfで示しました。

コスモ石油社長と対談

可能性広がる5-ALAの活用

生体細胞内でのヘム/ポルフィリン合成経路の最初の生成物である5-アミノレブリン酸(ALA)が多方面から注目を集めています。医療分野では光増感剤として各種がんの光線力学療法や、レーザー照射と組み合わせて脳腫瘍の術中診断に用いられている。また、農業分野では液体肥料として、さらに美容や健康分野など、様々な領域で注目を浴びている。(2010年8月9日薬事日報で掲載・紹介された記事が以下のpdfで参照できます)

薬事日報08092010

 

 

天然色素ポルフィリンの科学~生命科学を中心に~

“ポルフィリン”についての名前は余り親しまれていないが、最近、ポルフィリンに関する研究領域が急速に広がり、注目され出している。
まず第1に、分子生物学の進歩により、ヒト、植物、細菌など地球上の生物が生命維持に不可欠な物質として共有しているポルフィリンの代謝調節の機序が次々に明らかにされていること。
第2に、新医療として、ポルフィリンの物理化学的特性を利用したがんの診断と治療法の開発、および人工血液の開発が軌道に乗り出したこと。
第3に、先端技術としての分子認識素子や光機能材料などの高分子工学、情報工学分野に利用され、まったく新しい分野の研究として注目され始めたこと。
最後に、植物におけるポルフィリン合成経路が解明され、それにともないこの代謝系を標的とした、人体に無毒の除草剤開発が進んでいることなどが上げられる。
このように、ポルフィリンに関連する研究が生物、医学領域ばかりでなく、その生物機能を模倣、利用し、分子機能材料などの開発へ発展、その成果が次々に報告され、ポルフィリン研究の重要性が広く認識されはじめた。この注目を浴びている研究の詳細に関しては、現代化学増刊28として市販されているので併せて参照されたい。ここでは、その一部を紹介すると共に、ポルフィリンについての知られざる世界について、以下のpdfにて紹介する。(掲載論文:近藤雅雄、現代化学49-55, 1995.6)

天然色素ポルフィリンの科学