月別アーカイブ: 2015年6月

サプリメントとは、利用にあたっての注意事項

サプリメントの名称は米国で1994年にできた栄養補助食品健康教育法(Dietary Supplement Health and Education Act; DSHEA)からきています。これは単にサプリメント法とも呼ばれていますが、この英語名「dietary supplement」を直訳したものに近いものです。それによると、ビタミン、ミネラル、ハーブ類、アミノ酸などの成分を1種類以上含む栄養補給のための製品で、錠剤、カプセル、粉末、ソフトゲル、液状など、通常の食品以外の形状をとるものはすべてサプリメントと呼ばれ、日本では「栄養補助食品」と訳されることが多い。

米国の健康補助食品
1.ビタミン類
2.ミネラル類
3.ハーブ類(漢方も含む)
4.植物性のもの(生薬類なども含む)
4.アミノ酸類
5.食事として摂取されているもの
6.濃縮されたもの
7.代謝産物
7.構成成分
8.抽出されたもの

 これは食事療法、運動療法、薬物療法にとってかわる物ではなく、健康リズムを回復または維持していくための補助的に利用すべき食品であり、摂取するタイミングや取りすぎには注意が必要です。
サプリメント(または健康食品)が国内で利用されている背景・目的として、
①現在の日本においては食の西洋化によって油脂や糖質などの高エネルギー食品が増える一方で野菜、雑穀類、穀物類など、また、食物繊維のような低エネルギー食品成分やミネラル、ビタミンといった微量栄養素を多く含む食品の摂取量の減少による補助として
②農薬や産業廃棄物による食品の質の低下による補助として
③土壌の劣化に伴う植物含有栄養素の減少や輸送手段の発達による品質の低下(未熟な野菜、果物の収穫による栄養素の不足)による 補助として
④養殖魚や養鶏で使われている抗生物質など人為的操作による品質の低下を補助するため
⑤健康志向
⑥合理化思想の浸透
⑦核家族の進展による食生活の貧困
⑧健康食品企業の加熱宣伝の効果
⑨人から勧められたり、人が使用しているとまねたりする
⑩スーパー、コンビニ、飲食店、ファーストフード店などの乱立
⑪疲労回復、精力増強などに即効性がある
⑫病気の予防や体質改善(肥満を含む)のため

などが挙げられます。こられの結果、家できちんと食事を摂らないで、手軽に健康を支える食品として、「いわゆる健康食品」といわれるものが氾濫していると思われます。健康食品と類似の名称として健康補助食品、健康栄養食品、栄養補助食品、ダイエタリ・サプリメント、健康飲料などがあり混乱していますが、健康食品に対する明確な定義はありません。

サプリメント利用にあたっての注意事項!

1.サプレメント利用にあたっては十分な情報を得て、ご自分の判断にて選択してください。
2.ここに記載したサプレメント(アカサタナ・・・順)が健康食品に含まれているとしても、その安全性・有効性が十分であるとは限りません。
3.これらの情報には動物実験結果のものもありますので、有効性については、ヒトを対象とした研究情報が重要です。また、人によって、体調によって、服用する医薬品によって、さらに食べ物によってその効果は異なりますので、健康食品を摂取する場合は十分に注意してください。
4.何らかの病気を持っている方は、健康食品を摂取する際には医師へ相談してください。摂取して、もし体調に異常を感じたときは、直ちに摂取を中止して医療機関を受診してください。
(近藤雅雄:サプリメントとは、2015年6月17日掲載)

日本型食生活と健康

平成17年10月5日、虎の門パストラル(東京)にて第6回健康食品フォーラム「『食育』と健康食品」(主催:財団法人医療経済研究所・社会保険福祉協会、後援:内閣府、厚生労働省、農林水産省、文部科学省)をテーマに基調講演が行われました。その内容を一部修正して、掲載しました。

講演内容は、現代の健康問題を日本人が古来から獲得してきた「日本型食生活」の観点からとらえなおすとともに、日本型食生活が欧米型の食生活と比べてどう優れているのか、さらに高齢者に対する食育啓蒙が食育全体に及ぼす効果に関する介入試験の結果をご紹介し、最後に健康健康フォーラム0510食品の現状と食育に関して、それぞれ科学的根拠を基に解説いたしました。
内容は、以下の順にそって解説いたしました。

1.生活の乱れが生む生体リズムの乱れ
  食育(社福協)1pdf 近藤
2.食育の教育的アプローチと環境的アプローチ
  食育(社福協)2pdf 近藤
3.抗酸化栄養素・魚介類の摂取が日本型食生活の特徴
  食育(社福協)3pdf 近藤
4.高齢者への食育・健康意識の啓蒙が食育の輪を広げる
  食育(社福協)4pdf 近藤
5.健康な身体の第一歩は生活リズムの構築から
  食育(社福協)5pdf 近藤

(近藤雅雄:日本型食生活と健康、2015年6月15日掲載)

こころとからだの健康管理(1)

~正しい栄養素の摂取と言葉~

1.健康とストレス

 半世紀以上も前にWHOが「健康とは身体的にも精神的にも社会的にも完全に健康な状態をいう」と定義し、「社会的健康」の重要性を示しました。この社会的健康とは、最近よく耳にする「人間力」で言えば、「共助」の精神に当たります。8つの知性(言語、音楽、空間、絵画、論理数学、身体運動、感情、社会)では「社会的知性」に当たります。また、自我(自己意識、自己制御)における「自己制御」に当たります。
 しかし、社会的健康、すなわち徳育(道徳心)については、現代の少子・核家族社会・個人情報保護法などによって家族制度や地域社会が急速に変化し、人間の人格形成にかかわる若い時代に学習(躾)されないまま大人になっていくようです。また、家庭や地域社会の中での人間関係が希薄化すると共に、長期間にわたる激しい経済情勢の中で、企業における雇用管理も大きく変化して来ています。これらの結果が、現代人に様々なストレスとなって心身に影響を与えていると思われます。事実、心身の健康について不安を持っている成人が3人に一人いるとも言われています。現代社会では「自己管理」と「社会的知性」がいかに重要であるかがわかります。

2.こころとからだの栄養素

 「自己管理」については、心身の健康管理を怠ると摂食障害などを起こし易くなり、これが病気の原因作り、その病気をさらに増悪させる要因となります。したがって、栄養学的な知識を持つことが重要です。健康寿命の延伸とQOL(生活の質)の向上を目指して、栄養に関する多様な研究が行われていますが、栄養素の過不足が心身の健康に大きく影響を与えることは明白です。
 例えば、チロシンやトリプトファンなどのアミノ酸や葉酸、B12、Cなどのビタミン、銅、鉄などのミネラルの不足は、慢性疲労、頭痛、集中できない、イライラする、学習・精神障害など様々な病気の素因と関係してきますので、このような成分の生理作用およびこれら栄養成分がどのような食品に含まれているのかを知ることが大切です。

~知識の消化吸収は人生最大の栄養素となる!~

 最近、特に若い人の免疫力・体力が低下し、これが心身の病気と関係していると言われます。その原因の多くがストレスに対する適応力の低下(コミュニケーション能力の低下など)と栄養学に対する無関心にあると思われます。生命現象はすなわち栄養現象ですが、生理学的に最も重要なのが免疫力です。免疫力は適正な栄養現象によって獲得されます。
 しかしながら、その免疫力については、スキャモンの発達曲線からも明らかなように、11歳頃をピークとして、免疫中枢である胸腺の萎縮が始まり、その萎縮の原因が多くのストレスやエイジングによって発生する活性酸素によることが最近の研究によって明らかになってきておりますので、如何に体内に多くの活性酸素を発生させないか、また活性酸素を除去させる方法が注目されています。
 その一つの方法としてポリフェノールなどの抗酸化物質や抗酸化ビタミンおよび免疫や抗酸化に関わるミネラル類(亜鉛、セレン、銅、マンガン、鉄など)を日常的に摂取することがあげられます。こころとからだの健康管理の上でも、自分自身が摂取する栄養素をしっかりと意識することによって、体力、健康力に自信を持ち、前向きになれます。
 そして、ストレスを前向きにとらえ、しっかりと自分自身に必要な良質の栄養素を摂取すれば免疫の機能も高まり、心身一如、こころもからだも元気になります。
 次に、社会的健康において最も重要な感謝するこころとからだについて述べます。

3.感謝するこころとからだ

 人間が他の哺乳動物や生物と異なっている決定的な要因は、大脳の前頭葉にあります。前頭葉は人間が400gでチンパンジーが70gです。人の脳の約30%が前頭葉です。猿は12%、犬が6%、ネコが2~3%、ネズミは0%でもわかるように、前頭葉は人間においてのみ大いに発達し、人としての思考、知性、言語、理解、理性など精神活動の中心を司る中枢です。すなわち、「こころの中枢」とも言えます。この前頭葉の働きにおいて、最も脳の活動に影響を与えるのが言葉です。良い言葉を使うと、免疫の機能(生体防御機能)、内分泌機能(成長・発達・代謝機能)、神経機能(自律神経機能、善悪の判断、理性)などの情報連絡系が活性化され、自然治癒力が高まります。言葉そのものが私たちの健康・人生を創っていくといってもよいでしょう。

~言葉は人間の原点であり、こころとからだを健康にする最大の栄養素である!~

 「はじめに言葉ありき、言葉は神と共にあり言葉は神である」と聖書にも出ています。また「言葉は天地(あめつち)を動かす」と古今和歌集に出ています。紀貫之は「力をも入れずして天地を動かし目に見えぬ鬼神をもあわれと思わせ、男と女の仲をも和らげ、猛き武士(もののふ)の心をなぐさむるは歌なり」と言っています。歌とは言葉のことです。言葉には力があります。ドイツ医学はムンドテラピー(ムンテラ)(mund(独):口、言葉の意)を重視しています。すなわち、ムンテラとは「言葉による治療」を意味します。診療や看護には必ず言葉を添えています。日本では適当に症状を説明する位のことしか理解されていませんが、本当は言葉の力による元気づけを意味しているのです。
 言葉を話すのは人間だけであり、人類の発展に大きく貢献し、書物となり永遠と続きます。言葉は、地球の平和と環境保全にも深く関わります。こころは言葉の影響を最も受けやすく、威圧的な言葉、汚い言葉、人の悪口、否定的な言葉を使うのを止め、笑顔で、プラスの言葉を口にしていけば、自分のこころも相手のこころもとても心地よい状態になるはずです。言葉には魂があります。

 一つしかないいのちであれば、人生を感謝と喜びに満ち、明るく、おおらかにプラス思考で生きて行きていくことによって健康寿命は全うできるものと思います。

(近藤雅雄:こころとからだの健康管理(1)、2015年6月5日掲載)

 

 

「ポルフィリン症」が指定難病となる‼

 平成27年3月9日、厚生労働省厚生科学審議会疾病対策部会指定難病検討委員会はポルフィリン症を含め新たに44疾患が指定難病に追加され、総計306疾患が5月中に正式承認・告示がなされ、7月から重症患者に対しての医療費助成が開始されます。
 ポルフィリン症については、難病でありながら長い間難病に指定されず、患者さんおよびその家族並びに医師、研究者など、それぞれが個別に難病指定への活動を行って来ましたが、平成9年、ポルフィリン症患者の会ができてからその活動は一層高まり、平成20年から全国にわたって署名活動が開始され、指定難病を受けるまでに集めた署名数は600,515筆に至りました。ここでは、ポルフィリン症が「指定難病」に承認されるまでの経緯を振り返ります。

 昭和47年10月に施行された「難病対策要綱」では難病の定義として①希少性、②発症原因およびそのメカニズムが未解決である、③診断基準及び治療法が未確立である、④生活面への長期わたる支障があるといった4つの条件を満たすものを難病として認めてから平成26年までの42年という長い年月を経ました。この間に難病認定されたのはたった56疾病のみですが、その経緯・背景は不明のままです。平成21年度からは厚生労働省内で難病指定の見直しが行われ、平成26年8月28日に56疾病から110疾病が「指定難病」として追加・決定しました。さらに、平成27年5月までに合計306の疾患が「指定難病」に承認されました。

 さて、今回「指定難病」として承認されたポルフィリン症は診断法が確立されているにもかかわらず症例数が少ないがゆえ、診断できる医師が少なく、治療法もない。発症すると長期間の入退院を繰り返します。その間、太陽に当たれないとか、仕事がないとか、日常・社会生活に大きな支障をきたします。したがって、生活の制約や医療費の圧迫により患者の心身的負担は膨大となり、QOLが著しく低下します。
 これが難病認定されれば、これまでの56疾患のように、その疾患に対しては医療費の助成のみならず、治療研究の促進のための助成金など様々な行政的・社会的配慮が成されてきたことから、多くの難病指定されてこなかった疾患の患者会および研究者が立ち上がり、指定難病を求めて活動を行ってきました。厚生労働省においても、継続的に公平・公正な難病行政についての検討がなされてきました。

1.ポルフィリン症とは
 ポルフィリン症は生体重要色素ヘム(赤血球中のヘモグロビンや肝細胞内のチトクロームp450、生命エネルギー(ATP)を生産するチトクロームなどの作用基)の合成に関わる8つの酵素のどれかに遺伝的な障害を持つ代謝異常症で、多彩な症状を診る難治性の疾患です。日本では1920年に第1例が報告されてから今日までに日本の医学会では約1000症例しか報告されていません。

1)症状
 遺伝子―酵素の異常によって9つの病型(ポルフィリン代謝障害)が報告されていますが、その症状は大きく急性型と皮膚型に大別されます。急性型は主に妊娠可能な女性に多く、重篤な腹部・神経症状の発作を繰り返します。つまり、患者さんは突然起る腹部の激痛、嘔吐、便秘を自覚し、運動麻痺、手足の知覚麻痺を伴います。また急性型の患者さんであっても病型よっては皮膚に日光が当ると炎症、潰瘍などを起こす光線過敏性皮膚症状も合併します。皮膚型の患者さんは、日光などの光曝露による光線過敏性皮膚症状が主ですが、重度の障害では骨軟骨の欠損脱落、肝硬変、溶血性貧血や脾腫を合併して日常生活が困難となる場合が多く見られます。

2)原因・誘因
 ヘム合成に関与する8個の酵素のうち、たった1つの遺伝子の異常によって、ヘム生産量の減少と途中中間代謝物であるポルフィリンまたはその前駆物質(5-アミノレブリン酸、ポルホビリノーゲン)が過剰生産・蓄積され、多彩な症状を引き起こします。本疾患の殆どは遺伝性の代謝異常ですが、発症には日光、月経・妊娠・分娩、各種医薬品、疲労、各種ストレス、ダイエット、飢餓、アルコール多飲などの後天的要因が必ず必要です。

3)治療
 すべての病型において対症療法しかありません。急性型については、欧米ではヘム補給薬が使われ、日本でも平成25年に保険適用されましたが、1回の投与が8万円、これを1カ月使用すると40万円の負担となります。また、皮膚型においては、光線過敏症状の治療というものはなく、日光や明かりを避けるために外出の制約が強いられます。

4)予防・検査・窓口
 ポルフィリン症は誤診で悪化させるケースが多いので、とにかく発症前に早期診断・予防することが何よりも重要です。しかし、未だに一般検査はなく、専門医も極めて少ないのが現状です。

2.難病指定への道
 私は21歳時からポルフィリンの美麗な生命色素に魅了され、ポルフィリン代謝産物および諸酵素活性の測定法の開発、ポルフィリン代謝調節機序並びにポルフィリン症の診断法や診断基準および治療法について研究してきました。その過程で、28歳時にポルフィリン症の子どもの患者さんと出会い、生涯の研究テーマとして、この病気に関わることとなりました。そして、患者さんの要望によって平成9年には全国ポルフィリン代謝異常患者の会「さくら友の会」を設立し、同時にポルフィリンに係る学術学会「ポルフィリン研究会」を立上げ、様々な方面から患者さんの立場に立った研究・教育活動を普及してきました。しかし、毎年、多くの若い「いのち」を失い、患者さんにとってはいつも時間がありません。また、難病に指定されていなかったことから本格的な治療研究も行われてきませんでした。そこで、ポルフィリン症を含めて多くの難治性の希少疾患についての治療研究の推進、行政の支援が得られるよう行動を開始しました。

3.日本の難病行政に対するアクションと難病指定を受ける意義
 ポルフィリン症は、国が示す難病4条件をすべて満たしていながら、長い間、なぜ難病に認定されないのであろうか?ポルフィリン症を診た事のある医師の殆どが、なぜ難病に指定されないのかといった疑問を持っていました。また、同じような疑問が全国の人々から寄せらました。
 ポルフィリン症患者の多くは日常生活に制限が加えられ、或いは、体力が著しく低下するなど、相応の収入が見込める職につくことが難しいのが現実です。したがって、多くの患者さんが適切で継続的な治療を受けることが出来ずに苦しみ、これからもこの苦しみから抜け出すことが出来ない状況が続くと思いました。この不条理な状況を少しでも変えるためには、国による難病指定を受けることが不可欠であると思いました。
 ポルフィリン症は希少疾患であるため誤診や事故が後を絶ちません。この様に、ポルフィリン症は国の難病事業の対象疾患として、まさに適合する重大な疾患であることから、難病指定を求める運動を平成20年より開始しました。平成21年11月には、全国から410,520筆の署名を長妻昭元厚生労働大臣に提出すると同時に民主党内に「ポルフィリン症を考える議員連盟」を結成し、川上義博元参議院議員が会長(顧問:故西岡武夫参議院議員)となり、日本における難病対策の在り方について提言してきました。平成24年1月には140,028筆の署名を小宮山洋子元厚生労働大臣に提出、平成26年4月には42,837筆の署名を田村憲久元厚生労働大臣に提出、平成26年9月25日には379筆の署名を永岡厚生労働副大臣に提出致しました。また、鳥取からは「池谷兄弟を応援する会」が立ち上がり、鳥取県知事、境港市長への陳情、さらに、さくら友の会と歩行を合わせ、先の大臣陳情を行いました。さらに、島根県済生会江津総合病院堀江裕院長(現在名誉院長)と共に竹下亘衆議院議員(現復興大臣)など国会議員への陳情を行いました。これらの活動を通して、ポルフィリン症の難病指定の実現に向けて長年に亘り粘り強く請願を続けてきました。この間にさらに3893筆の署名が集まり総計60万を超す署名数となったことは、大変重たく受け止めております。
 これら活動の意義として、ポルフィリン症が難病指定されれば、医師、医療機関に広く正しくこの病気を知る良い機会となり、誤診や事故を著しく減らすことにも繋がります。さらに、治療の研究が加速することが期待されます。そして、何よりもこれまで理解されなかった病気が難病として認められたことに大きな意義があると思います。つまり、これまではわけのわからない病気として追いやられていたのが、国が認めた病気ということで、医療機関、行政・社会での対応も一変し、真摯に、前向きに注視されることが期待されます。

4.患者会の活動
 平成20年、患者会の室谷一蔵会長は、治療研究の推進、行政支援、生活への支援が得られるよう、全国署名活動を開始しました。そして、平成21年より、北海道から沖縄まで、日本全国の支援者から頂いた総計600,515人の署名を厚生労働省に持参し、難病指定を求めてきました。その結果、平成21年度に初めて厚生労働省の難治性疾患克服研究事業として「遺伝性ポルフィリン症の全国疫学調査並びに診断・治療法の開発に関する研究」が採択され、近藤(元東京都市大学人間科学部教授・学部長)を研究代表者として、我が国において初めて、患者の立場に立ったポルフィリン症の調査・研究がスタートしました。さらに、急性ポルフィリン症の未承認薬については長い年月がかかりましたが、患者会の地道な活動によって、平成25年には保険治療薬として承認されるに至りました。しかし、この時点において、ポルフィリン症が難病に認定されたわけではありません。患者会理事の大変な活動によって、平成27年3月にようやくポルフィリン症が指定難病として承認されました。
 患者会は、引続き、経済大国、医療の先進国として、日本に住むポルフィリン症の患者さんを含め多くの難病患者さんが安心して生活し、安心して高度先進医療が受けられるよう、医療と福祉の充実を国に強く求めていきます。

5.国の難病指定の在り方
 現在、世界中で難病と言われている疾患が7,000以上あり、公平な難病指定の在り方が問われてきました。平成21年に民主党政権に移行してから漸く「難病対策の現状と課題について」厚生労働省を中心として本格的な議論が始まりました。平成25年に自民党政権に復権してからは、「難病医療法」が5月に成立、平成27年度から施行することが決まり、厚生科学審議会疾病対策部会の「指定難病検討委員会」が中心となり、指定難病の各要件(①治療方法が確立していない、②長期の療養を必要とする、③患者数が人口の0.1%程度に達しない、④客観的な診断基準などが確立している)を満たすかどうかの検討が開始されました。平成26年度までに56疾患が難病として認定されてきましたが、平成27年度に約300疾患に拡大し、対象患者をこれ迄の78万人(この中には希少疾患から外れるパーキンソン病(患者数約10万9千人)や潰瘍性大腸炎(患者数約14万4千人)なども含まれている)から150万人に増やし、患者数は人口の0.15%にあたる18万人未満を目安に決められました。しかし、現在わが国において指定難病を求めている疾患は約600あり、今後も増加する傾向です。

6.健常人と患者とは
 ところで、すべての人間が10個以上の遺伝子の異常を持って生まれてくる。しかし何の自覚症状もなく健康な人が殆どです。ところが、ポルフィリン症のように、その遺伝子の異常が病気となって現れる人もいます。
健康の反対が病気ですが、これまで健康であった人が、何らかの原因によって病気になった時に、人は初めて健康の有難さを考え、誰もが二度と病気になりたくないと思うものです。ところが、病気を持って生まれてきた人は、どうでしょうか。彼らは健康に対する願望といのちを大切にするこころが健康な人以上に強く、また、健康な人以上に感謝の気持ちを持っています。私たち健常者に足りないものを多く持っています。今の人間社会に欠けているのは、いのちを大切にするこころと、相手のこころの痛みを自分の痛みと感じる「思いやり」のこころ、そして信頼できる温かい人間関係の輪を作ることです。

7.患者さんの意見
 患者さんはいつまた再発するかについての不安、いのちの不安、遺伝の不安、社会復帰の不安、生活の不安、学習環境の不安、人間関係の不安等々、深刻であり、これらがストレスとなって再発を繰り返します。以下に患者さんの切なる主な意見を記載しました。

1)皮膚型ポルフィリン症患者の意見
(1)日光を避ける生活がいかに大変か実感。「太陽が怖い」と落ち込んで学校を休んだことも。これからの成長でこころが心配。
(2)男子なので外遊びを禁じるとストレスがたまる。友達もいなくなり、休み時間も一人でいることが多くなり心配。
(3)小学生の頃は、人と違うことが嫌で学校行事に参加。しかし、なかなか行動がコントロールできず、痛みに苦しめられる。もっと病気のことを多くの人にしってもらいたい。
(4)小学校の頃は、長袖長ズボンで学校は送り迎え。娘は一人暮らしをしている。いつ発症するかと思うと心配。肝機能についても心配。初潮を迎えると貧血があった。
(5)3歳で発症してから孤独な気持で過ごす。同じ患者さんと情報交換したい。
(6)入退院や、病気のことで転校した。病気への理解を伝えたい。
(7)健常者に病気のことを話しても理解してもらえず、軽くみられることが多い。早く難病認定になるよう出来ることがあれば協力したい。
(8)病気のこともいろいろ知りたい。2年前に流産。産婦人科の先生は皮膚が弱いことを言い当てたが、皮膚科の先生からは関係ないと言われた。病名が何かわからない。
(9)娘を妊娠中、蕁麻疹がひどく皮膚科で紫外線を当てる治療をした。そのことを後悔している。娘の症状を日光だと感じつつ、診断がつくまで4年、これもまた後悔される。もっと多くの人に知ってもらい。娘の将来に悩みは尽きない。

2)急性ポルフィリン症患者の意見
(1)毎月1回以上入院している。学校は送り迎え、体育見学、腹痛嘔吐がない時でも微熱あり。入院中は絶食その後通常の半量。とても心配。
(2)妊娠の度に体調が悪くなり、2番目の子は未熟児、3番目の子は死産した。その後、子宮筋腫で手術。地方の医師ではなかなか病名を理解してもらえない。
(3)親戚がキャリアかどうか調べてもらうために病院へ行ったが、知らないと言われた。まずは病名を内科医に知ってもらいたい。
(4)近所の開業医では診てもらえない。子どもがほしいが、産後どうなるかと不安。
(5)重い発作の度に孤独感を味わう。医者、周囲の無理解、中途半端な知識を埋めるべくいちいち説明する。
(6)歯医者に行き麻酔をかけるとき塩酸リドカインが禁忌薬と判明。医師と相談したが、冷たく扱われた。相談する人がいない。
(7)娘が2人、検査を受けさせたいが、高額で躊躇する。自分は結婚、出産後、発症したため夫の理解が得られない。
(8)いつも頭がぼーっとし、発作が繰り返し出現。同じ状態が続くのかと思うと不安。

8.参考文献
1)近藤雅雄:ポルフィリン-ヘム代謝異常、先天代謝異常症候群(第2版)・下、別冊日本臨牀・新領域別症候群シリーズ No.20、p.165 (2012).
2)近藤雅雄:ポルフィリン代謝異常、内科学書、改訂第8版、Vol.5、内分泌疾患、代謝・栄養疾患、中山書店、p.424 (2013).
3)遺伝性ポルフィリン症:厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等克服研究事業)総合研究報告書、2009~2014
(近藤雅雄:全国ポルフィリン代謝障害患者会「さくら友の会」事務局代表、2015.6.5掲載)

全国ポルフィリン代謝障害患者の会「さくら友の会」開設運営について

 ポルフィリン症は2017年に国の医療費助成の対象となる「指定難病」に認められました。
 本症はヘム合成経路の酵素異常によるポルフィリン体の異常蓄積によって起こる一群の疾患群を言います。臨床的には、消化器症状(腹痛、嘔吐、便秘など)や神経症状(運動麻痺や四肢知覚障害など)といった症状が前面に出る急性ポルフィリン症と、皮膚症状(紅斑、水疱や色素沈着など)を特徴とする皮膚ポルフィリン症に大きく二分することができます。急性および皮膚ポルフィリン症の多くの病型が赤い着色尿を排泄し、常染色体優性遺伝の形式をとるのが特徴です。日常診療の場で遭遇することがあるのは、大量飲酒者に好発し、近年ではHCV陽性者との関連が注目されている晩発性皮膚ポルフィリン症(PCT)と、腹痛患者で鑑別診断となる急性間歇性ポルフィリン症(AIP)ですが、それ以外にも欠損する酵素によって、全部で9種類のポルフィリン症が知られています。
 1984-1999年間の慈恵医科大学皮膚科の光線過敏外来での診断の内訳では多形日光疹(25%)、光線過敏型薬疹(14%)、光接触性皮膚炎(9%)等に比して、ポルフィリン症が3%も占めていて、決して「極めて稀な」疾患ではないことがわかりました。つまり、一般外来において、かなりの確率でポルフィリン症患者を「見落としている」可能性が否定できません。
 一方、ポルフィリン症は現在までのところ、根本的な治療法がまったくないのが現状であり、遺伝性疾患であるという問題も含めて患者さん並びに家族の負担が非常に大きいのが実情です。全国レベルでみても、ポルフィリン症の診療を専門とする医療機関はほとんどなく、この点でも患者さんが十分なフォローを受けているとは言い難いのが現状です。
我われは、実際にポルフィリン症の患者さんを長年フォローし、また日本全国に散らばる患者さんの紹介を受けて、医療相談を行っていくうちに、患者間と医療サイドのネットワークの必要性を認識するようになり、「ポルフィリン症患者の会」の設立を進めてきました。その結果、ポルフィリン症患者およびその家族、一般健常人、そして医療関係者を会員とする全国ポルフィリン代謝障害友の会「愛称(さくら友の会)」を設立し、平成13年に第1回の総会を開催するに至りました。
 現在、さくら友の会では、主に医療サイドと患者サイドが共同で製作する会報の発行、ホームページ上での患者さんとの意見交換を行っているほか、年に一度の総会における広報活動等を行っています。とくにホームページではそれまでなかなか日常生活における問題を相談できなかった患者さんからの率直な悩みを専門家に相談できる場として機能してきており、筆者もこれまで接することのなかった全国のポルフィリン症患者さんに対して、生活上の注意点、専門医療機関の紹介、あるいは実際に患者さんを訪問しての指導といった活動を行っています。
 しかしながら、これまでに報告されたポルフィリン症の患者数から考えますと、さくら友の会に参加しているポルフィリン症患者さんはまだまだごく一部であり、これから一層の啓発活動、広報活動が必要になってくると考えられます。また、患者さんだけでなく、現場の医療サイドを対象としたポルフィリン症に関する啓発活動も今後ますます必要となってくると思われます。読者の皆様の中で、ポルフィリン症、あるいは本症が疑われる患者さんをフォローしている方があれば、ぜひ本会への御連絡をお願いする次第です。平成30年4月より患者会事務局が変わりましたので、下記のホームページにご連絡ください。(近藤雅雄;2015年6月1日掲載、2018年7月24日更新)
「さくら友の会」のホームページ:http://www.sakuratomonokai.com/

生命の科学から健康の科学へ

 生体色素ポルフィリン(紫質)とヘム(血基質)は地球上の生物が生存するために必須な光合成反応や酸素の運搬などに関与する生命の根源物質です。しかし、その代謝異常症は、ある日突然に体内にポルフィリンの代謝産物が過剰蓄積し、その結果、太陽と活性酸素によって全身の機能が障害され、生命が奪われる。これまでに、筆者はこの病気の遺伝子異常および発症機序の解明、確定診断法の確立、治療法の開発などといった「生命の科学」に関する一連の研究を行ってきました。その一方で、健常者にこの代謝産物の一つを投与すると、造血促進、免疫力増強、抗酸化機能促進、運動機能促進などといった健康の回復・保持・増進が期待できることを見出しました。
 生命科学の研究は表裏一体であり、良い方向に研究が行われれば、人類、ひいては万物に貢献できますが、悪い方向に進めば、万物の破壊へとつながる危険性を含んでいます。

 本内容は、平成17年4月長生学園50周年記念に刊行された「長生学園史」掲載原稿を少し修正して記載しました。さらに読みたい方は下記のpdfからご覧ください。

生命の科学から健康の科学へpdf