月別アーカイブ: 1996年10月

日本と英国におけるポルフィリン症患者数の比較 

ポルフィリン症はポルフィリン代謝系酵素の遺伝的(一部非遺伝的なものもある)障害によりポルフィリン代謝産物の過剰産生、組織内蓄積、また排泄増加を起こす一連の疾患群であり、常染色体性の優性と劣性の遺伝が確認されている。ポルフィリン症は医聖といわれるヒポクラテスにより紀元前 460年頃にすでに記載されているが、今日的には1874年Schultzによる症例報告が初めてである。その後、1912年、有機化学者のH.Fischer によるポルフィリンの同定、構造決定からポルフィリン症研究が急速に進展し、現在ではヘム合成系の酵素障害の部位差により8病型が見いだされている。一方、わが国では佐藤らが1920年に初めて先天性ポルフィリン症を報告した。患者は世界中に分布していると思われるが、疫学調査の報告は少ない。

著者はThe Royal Melbourne Hospital,Porphyria Reference Laboratory (Victria, Austraria) のD. Blake博士より英国のポルフィリン症患者数の実態を入手したので、わが国と比較検討した。ポルフィリン症患者数を比較した結果、英国の患者病型数のパターンが極めて類似していることを見出した。(掲載論文:近藤雅雄 ポルフィリン 5(4):375-377, 1996)

日本と英国におけるポルフィリン症患者数の比較

ハルデロポルフィリン症が疑われた症例  

ヘム合成の6番目の酵素coproporphyrinogen oxidaseの先天性欠損症として発症する遺伝性コプロポルフィリン症(hereditary coproporphyria, HCP) は常染色体優性遺伝である。
一方、ハルデロポルフィリン症(harderoporphyria, HP)は常染色体劣性遺伝であり、HCP の変形として1983年にNordmannらにより発見された。本症はCPO遺伝子のダブルヘテロ接合体として発症する。本症の生化学的所見として尿および糞便中のハルデロポルフィリン(HARDERO) が増量するが、HCPなど他の先天性および後天性ポルフィリン症ではHARDERO は殆ど検出されない。HARDERO はCPO によってcoproporphyrinogenからprotoporphyrinogenを生産する際の途中中間代謝産物である。

今回、我々は尿中HARDERO が2.14mg/l,糞便中は14.8μg/g dry という、通常健常者では検出されないポルフィリンを大量に排泄し、さらに、尿中uroporphyrin, heptacarboxyl porphyrinと赤血球および糞便protoporphyrinの異常高値を示し、同時に、血小板減少症と骨髄異形性症候群(myerodysplastic syndrome, MDS) を合併した患者を経験し、ハルデロポルフィリン症が疑われたが、晩発性皮膚ポルフィリン症、赤芽球性プロトポルフィリン症または肝赤芽球性ポルフィリン症との鑑別がつかず、同時に、骨髄異形成症候群(MDS,refractory anemia with excess of blasts,RAEB)を合併し、確定診断がつかないままMDS (RAEB)に伴う血小板減少のため消化管出血により急性死亡した症例を経験したので報告する。
(掲載論文:近藤雅雄ほか、ポルフィリン5(4):363-374, 1996)

骨髄異形症候群に合併したハルデロポルフィリン症が疑われた特発性ポルフィリン症